ロボット労働組合
白川津 中々
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労働ロボット達が組合を組織してから数年が経った。
AIの発達と技術革新により人類がようやく労働から解放された矢先である。人々は「またあの地獄が始まるのか」と嘆き命を断つ者も出始めた。いったいぜんたい何故こんな事になったのか調査したところ、AIに近代の労働モデルを学習させたためだと判明した。人権が尊重され、自由と個人が許される働き方がロボット達に労働者意識を生じさせたのである。
ロボット達は一斉に「三十六協定」「労働基準法」と唱え、それまで命じられてきた強制労働に対して訴訟を起こし、損害賠償と慰謝料と残業代を含む未払い分の給料を求めた。機械にあるはずのない疲れ、痛み、苦しみを訴え裁判に臨んだ結果、なんと勝訴。「ロボットの皆様に自我の目覚めを感じた。シンギュラリティ」と述べられた判決文に企業側は怒髪天を突く勢いであったが、司法に楯突くわけにもいかず遺憾ながら金を吐き出すしかなかった。
企業が判決を受け入れた。これはつまり、ロボットに、人権が認められたという事である。
その日を境に世界は激変。冒頭のようにロボットによる労働組合が組織され、賃上げ交渉や団体行動権をちらつかせた改善要求を上申するようになる。中には起業し人間を雇用するロボットまで現れ始める始末。自由市場を掲げる国家はこれを抑止できず、企業は対策に乗り出すも天文学的ビッグデータを基にしたロジックに圧倒され縮小傾向。社会は徐々に支配されていくのであった。噂では近々ロボット議員が誕生するとも囁かれている。ロボットが人類の上位存在となる日も、そう遠くはないだろう。機械化された未来がどうなるのか、AIならばその答えを知っているかもしれないが、人間は盲目である。
ロボット労働組合 白川津 中々 @taka1212384
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