こんな【おむすびころりん】はイヤだ。
レッドハーブ
こんな【おむすびころりん】はイヤだ。
むかしむかしのおはなしです。
あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。おじいさんは山へ芝刈りに行きました。
「よっこいしょ!どっこいしょ!……ふぅ」
たくさん木を切ったのでお腹がすきました。
「さて、おむすびを食べようかのう」
切り株に座り、つつみを広げると、おむすびが1つ転がり落ちてしまいました。おむすびはころころと山を転がり落ちていきます。
「ばあさんのおむすびが……待ってくれ~」
ころころおむすびは、大きな木のそばの穴へ入ってしまいました。穴は真っ暗でよく見えません。しかし……穴の中からは楽しそうな声が聞こえてきました。
「おむすびころりん うれしいな♪」
「おむすびころりん うれしいな♪」
驚いたおじいさんは、残りのおむすびをまた穴の中に入れてみました。
「おむすびころりん うれしいな♪」
「おむすびころりん うれしいな♪」
穴の中からはさらに楽しそうな声が聞こえてきます。声の主が気になったおじいさんは、中に入ってみることにしました。
「えいっ!……………なな、なんと!?」
穴の底にはたくさんのネズミが住んでいました。おじいさんが落としたおむすびをおいしそうに食べていました。
「おじいさんころりん うれしいな♪」
「まてまてまて、食べんでくれ!!」
「あのおむすびはおじいさんのでチュか?」
「そうじゃが…食べちまったのかい?」
「申し訳ないっチュ。あんまり美味しかったものだからつい……」
ネズミたちが集まってきました。
「いやいや、おいしく食べてくれて嬉しいよ」
「「「おいしいおむすびをありがチュう!」」」
「また持ってきてあげるよ」
それからおじいさんは毎日おむすびを穴に落としてあげました。
「おむすびころりん うれしいな♪」
「おむすびころりん うれしいな♪」
おじいさんは、毎日ネズミの楽しそうな声を聞いていました。ある日、ネズミたちが穴から出てきて、おじいさんに言いました。
「おじいさん、いつもおむすびをありがとう。お礼にこのつづらをあげるっチュ!」
「ネズミさん、ありがとう」
おじいさんはつづらを持って帰りました。
家であけてみると、中にはたくさんの大判小判が入っていました。
「ありがたや、ありがたや、ですねおじいさん」
ところが……
この一部始終を見ていたとなりの欲張りでイジワルなおじいさんは、自分も宝をもらおうと山へ出かけました。
「どれどれ、この穴か……よし!」
意図的におむすびを穴に落とし、ネズミの御殿に招かれます。
「このおむすびはおじいさんの?」
「そうじゃ!」
「このおむすびは食べられないでチュー!」
「……え?」
「おむすびというのは…ただ握ればいいというわけでもないんでチュ!お米の炊き具合……そして適度な塩加減と力加減が必要なんでチュー!」
「な…なんじゃと!?」
「あとこれ新米じゃないっチュ!おそらく
(バ、バレてる……!!)
「この間のおにぎりが120点だとしたら!これは15点くらいでチュ!仏像つくって魂込めず、という言葉が似合うおむすびっチュ!」
「ぐぬぬ……!」
「いい加減なつくりのおむすびっチュ!このおむすび1つで……どんな人生かを歩んできたか大体想像つくっチュ!」
「うっさいわい!!」
人生も性格も否定されたイジワルなおじいさんは、ついに噴火しました。
「つべこべ言ってないで、宝をよこさんかい!」
イジワルじいさんは大きなつづらを指さし、ネズミたちを
「あるんじゃろ?大判小判の宝が!?」
「やっぱりそれが目的だったっチュ!」
「そうだ!はよださんとネコを呼ぶぞ!!」
「……ネコだって!?」
「……ニャ〜ニャ〜」
意地悪なじいさんは猫の鳴き声をしました。
「ネ、ネコ!?」
「ネコが来たぞ〜!!」
「出会え出会え〜〜!」
「皆のもの!武器をもて!迎え撃つぞ!!」
ネズミたちは大混乱です!
その
ところが……
「ぬ!?う、動けん……!!」
つづらを抱えたおじいさんは穴の途中で身動きがとれなくなってしまいました。
「……なんだ、ネコなどいないではないか!!」
「……ん?これは」
ネズミたちのまえには、おじいさんのお尻……。
一匹のネズミが声を出しました。
「
武器をもったネズミたちはみんなでお尻を攻撃しました。
「あたたたた!こらやめんか!!」
「「「
「……とどめっチュ!」
ネズミはおじいさんの
助走をつけて
「……っ!?ぎゃあぁぁぁ!いってぇぇぇ!」
おじいさんは飛び上がり、その勢いで穴から飛びでて、家に帰りつきました。
「あたたた……さんざんな目にあったわい」
それからイジワルなおじいさんは、心を入れ替えて
こんな【おむすびころりん】はイヤだ。 レッドハーブ @Red-herb
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