エピローグ

 魔界ダークサンに戻ったコルテーゼは、魔王城にある自室のベットで仰向けに寝転がっていた。

 尖塔のひとつに設けられたこの部屋は住人であるコルテーゼの要望に合わせて壁にも天井にも木材が使われている。

 言ってみれば石造りの内装の中に、一回り小さな木製の内装を備えつけたようなものだが、職人は実に良い仕事をしてくれた。

 部屋の広さはさほどでもないが人間だった頃に住んでいたマンションの一室を思えばじゅうぶんに快適だ。

 それでも、時折あの部屋が無性に恋しくなるのはなぜだろうか。

 深く考えることなく意識を切り替えると、コルテーゼは片腕を額に載せるようにしながら今回の事件について考えてみた。

 事の起こりは汎魔界連盟カオスレーテと呼ばれる魔界の組織から、力のある魔族をスカウトするよう頼まれたという話だった。

 そこでメアリーが目を付けたのがグレーヴァであり、セリオスの手助けをしたのは、ただの成り行きのはずだった。

 ところが、メアリーの本当の目的は仲間になったばかりの下っ端魔族の要望に応えて、その友人であるセリオスを助けることにあったのだ。

 それならそれで最初に言ってくれればいいものを、あえて黙ったまま周囲を引っかき回して楽しんでいたのだ。

 はた迷惑な話である。

 それでもその目的が仲間のための人助けだというのは悪い話ではない。

 ときどき信じていいのかどうか不安になることもあるが、やはりメアリーは善良な魔王ケイオティック・グッドのようだ。

 彼女のお陰でセリオスはロイドとアーシェルナのふたりを無事取り戻して、琳も満足して元の世界に戻ることができた。

 残念ながらグレーヴァによって魔族に変えられてしまったロイドを人間に戻すことはできなかったが、たとえ彼が魔族でもセリオスの友情は揺らがないだろう。


(サキはどうだろう……?)


 コルテーゼの脳裏に親友の凜とした顔が浮かぶ。かつてはいつも隣で笑っていてくれた愛しい少女。

 誰よりもやさしく、そして正しかった彼女はコルテーゼにとって友だち以上の存在であり、生きていく上での指標でもあった。

 もし彼女に存在を否定されれば、それだけでもう生きてはいられなくなる。


(サキは……魔族になったわたしを赦してくれるかな……?)


 もう二度と会わないと誓ったはずなのに、繰り返し再会した時のことを思い浮かべてしまう。


(ダメだな、わたしは……)


 自分の弱さを自覚してコルテーゼは悲しげに笑った。

 ふと頬を熱い雫が伝い落ちたが、微笑を浮かべたまま拭おうともしなかった。まるでそんなものは幻だと自分すら騙そうとするかのように……。

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ケイオティックグッド ~コルテーゼと選ばれし勇者~ 五五五 五(ごごもり いつつ) @hikariba

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