君のとなり
遠山ラムネ
君のとなり
下駄箱脇の傘立てには、疎に傘が残っていた。私のオレンジの隣は長めの紺色。その持ち主が誰か、なんて細かいことまで把握している自分は、なんだか可哀想な人間だな、なんて思った。
男子高校生なんて、まともな傘なんて持たないんじゃない?なんて世間の予想を軽く裏切ってくるところがむしろらしかった。
ビニ傘でもない、シンプルで、機能的な。
頭もいいし、なぁ……
大学だって、きっと、すごくいいところに行く。
まかり間違っても同じところになんて行けないし、そもそも存在を認識すらされてない、かも、だけど 。
今朝、じとじと降っていた雨は3時過ぎにはやんだ。
あの人は忘れ物なんかしなそうだから、きっとまだ、校舎のどこかにいるのだろう。
間違えて、手に取ってくれたりなんかしないかな
しないか
紺色の隣は、浮かれたオレンジ。
ひと目見てわかる。住む世界が違いすぎる。それでも。
君はいいですね、隣で
なんてアホっぽいことを考えながら持ち手をつつく。
私はもう、はやくバイトに行かなくちゃ
ローファーの爪先を鳴らして、ちょっとだけ伸びをする。
雨上がり。
外は湿った淡い夕焼け。
Fin
君のとなり 遠山ラムネ @ramune_toyama
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