穴
まなつ
穴
皆が不思議そうに見つめている。
社内の壁に現れた、穴。
不審そうに遠巻きにするもの、好奇心でのぞいてみるもの、庶務課へ連絡して修理を依頼するもの。
だが誰も理由を知らない。
綺麗にくり抜かれた、十円玉ほどの小さな穴。
長年壁に貼りっぱなしだった掲示物に隠れていたせいで、今日まで気付かれなかった。掲示物は古すぎて、誰も、その始まりを覚えていない。
いつからあったのか。掲示物を貼る前の壁はどうだったのか。
壁の穴をのぞいたものだけが理由を知った。しかし彼らは、見えたものを語らずにいた。
「社長の盗み聞き、ばれちゃいましたね」
真実を告げる秘書の声に、社長は気まずそうに視線を逸らした。
穴 まなつ @ma72
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます