秋に囚われた日。
- ★★★ Excellent!!!
晩秋の山路をバスは行く。
乾いた薄の穂が風に揺れては、視界の端に
一点の異界を映し出す。
小さなバス停に、バスは停まらない。
ずっとずっと待っている乗客がいるのに。
バスは更に走り去る。
その刹那
視界の端から浮き出て見えるのは、風雨に
晒された襤褸ぼろの色褪せたセーラー服。
浮き出るどころか、そのままの鎖骨が
視線を泳がせる。
バス停を通り過ぎても、誰も何も
言わない。騒ぎにもならなかった。それは
秋の日の不思議な体験と、まさに
取り憑かれた様な執念とが。
バスに揺られ、秋の日の白昼夢を
運ぶ。