『とろける贅沢プリン・田中スペシャル第1号試作品 作成計画』

森の ゆう

第1話 プリン作戦開始

午前十時三十二分。

 田中かおり(38歳・主婦)は、キッチンの真ん中で仁王立ちになっていた。エプロンには「今日の晩ごはん:たぶん何とかなる」と書いてある。胸には、静かだが熱い決意が灯っている。

 ――今日は、プリンを作る。

 プリン。それは黄色くて甘くて、カラメルがちょっとほろ苦い、あの国民的な幸福のかたまり。スプーンを入れると、ぷるん、って揺れるやつ。あれを家で完璧に作る。それが今日の任務、いやもう「計画」と呼んでもいい。

 きっかけは、昨夜の家族会議(正確には夕飯中の雑談)での、娘の一言だった。

「ママのプリン、最近食べてない」

 と、娘・みな(小4・現実主義者)。

 それに続くように、夫・まこと(41歳・在宅勤務歴が無駄に長い男)が言った。

「コンビニの“ご褒美プリン”ってやつ、あれさ、ひとつ二百八十円もするんだよ。家計に優しくないよねぇ。手作りなら安いんじゃない?」

 かおりは、その瞬間悟った。この男は、今たいへん失礼なことを言ったのではないか、と。

 1)手作り=安い、という思想。

 2)そのくせ、自分は何ひとつ作らない。

 3)さらに「ねぇ」の最後だけやわらかく言って許された気でいる。

 だが、同時にもうひとつの感情もあった。

 ――挑戦状、受け取った。

 こうして「プリン計画」が動き出したのである。

     ◇

 まずは作戦会議(ひとりで)。

 ノートを開き、ページの頭に大きく書く。

 【とろける贅沢プリン・田中スペシャル第1号試作品 作成 計画】

 目的:家族をうならせる「伝説のプリン」を完成させる。

 目標1:みなが「市販よりおいしい」と素直に認める。

 目標2:まことを黙らせる。

 目標3:ついでに自分も幸せになる。

 構想は完璧だ。問題は実行である。

 レシピサイトを3つ、動画を2本、ブログを5本チェックした結果、彼女は混乱していた。

 A案「卵と牛乳と砂糖だけの、昔ながらの家庭プリン」

 B案「生クリームをドバドバ入れる、超濃厚カスタード系プリン」

 C案「材料3つ!レンジで5分!失敗なし!」(※逆に一番信用できない)

 「3つのうちどれにするか……」

 冷蔵庫を開ける。牛乳はある。卵もある。生クリーム……半分だけ残ってる。開封後3日目。ギリギリまだいけると信じたい。なんかもったいないし捨てたくないので、B案が急に現実的になってくる。

 「よし、B案にしよう。名付けて“とろける贅沢プリン・田中スペシャル”」

 名前をつけた瞬間、ちょっとプロになった気がしてくるのが人間の弱さである。

 ボウルを出し、泡立て器を出し、砂糖を量る。

 までは良かったのだが、その次でさっそく問題が起きた。

 「砂糖大さじ3って書いてる人と、50グラムって書いてる人、同じなん?どっち?なんで単位がバラバラなの?国際会議しよう?」

 いやいや落ち着け、田中。計量スプーンとキッチンスケール、両方あるんだから両方使えばいいじゃない。と、理屈ではわかっているのだが、なぜか心がすでにめげそうである。

 しかし彼女は、ふと横を見る。冷蔵庫に貼られた家庭用ホワイトボード、そこには昨日の買い物メモのあとに、娘のみなが落書きしていたメッセージがある。

 《ママのプリン ひさしぶりにたべたい》

 字がちょっと丸くて、でも「たべたい」だけは力強い。

 ――うん。やる。

 かおりは深呼吸をして、砂糖50グラムをきっちり量った。

     ◇

 プリン作りというのは、思ったより科学である。

 牛乳と生クリームを鍋であたためる。ふつふつ直前で止める。温めすぎると卵が固まってボソボソになるらしい。

 別のボウルで卵と砂糖を混ぜる。泡立てない。空気を入れすぎない。「プリンはぷるんであってふわしゅわじゃない」と動画のお姉さんが言ってた。なるほど。

 そして、温めた牛乳を少しずつ卵へ入れる。

 「一気に入れると卵がスクランブルになるから注意」とある。

 かおりは、真剣だった。

 お玉1杯ずつ、そっと。そっと。まるで「すみません、失礼しますね……」と声をかけながら移動する秘書のように。

 自然と表情も秘書っぽくなるのが人間の面白いところである。

 混ざったら、こし器で濾す。ここでぐっとプロ感が出る。

 ボウルの中には、なめらかに光る淡いクリーム色の液体。

 「……きれい」

 ちょっと感動する。自分が何かを“作り出した”という手応え。

 ああ、なんだ。こういうの、ずっと欲しかったんだな、とふと思う。

 最近、家事って「作業」って感じの方が強かった。洗濯、ゴミ出し、スーパー、子どもの宿題チェック、夫の“お昼なにかある?”攻撃への対応。全部“タスク”だった。

 でも今これは、“作品”だ。

 「ふふん」

 口角が上がる。彼女は今わりとごきげんだった。

     ◇

 問題の第二段階、カラメルである。

 プリンにかけるカラメル。あの琥珀色の甘苦いやつ。

 世の主婦たちを何度も泣かせ、世のコンロたちを何度もベタベタにしてきた、あの危険な液体である。

 砂糖と水を小鍋に入れて、火にかける。絶対に混ぜるな、とブログには書いてある。混ぜてはいけないと書かれると混ぜたくなるのが人間だが、今はぐっと我慢だ。

 ……ふつふつ。

 ……ふつふつふつ。

 ……ちょっと薄いきつね色。あ、これ、きてる?これきてる?

 この「きつね」と「こげ茶」の境目が、プリンを左右するという。ほんの数秒が勝負だという。各レシピが口をそろえて「ここは目を離さないで!!」と書いてある。

 そのタイミングで、インターホンが鳴った。

 ピンポーン。

 「最悪のタイミング選手権・優勝おめでとうございます?」

 一瞬だけ迷う。宅配かもしれない。宅配なら受け取りたい。最近メルカリで買った娘の上靴(うわぐつ)サイズ違い問題でバタバタしてるし、それかも。いやでも、ここで火から目を離したらカラメルは一瞬で黒コゲの地獄液体になるらしい――

 ピンポーン(長押し気味)。

 「うわ、しつこい!?なに!?」

 結局かおりは、火を止めて鍋をコンロの上に置いたまま、玄関まで走った。

 ドアを開けると、そこには向かいの奥さん・森田さん(61歳・自治会の全てを知る女帝)が、にこやかに立っていた。手には回覧板。

 「あらかおりちゃん、いるならよかったわぁ~。これ、町内会費の件なんだけどね、うちの班からひとり副班長出さないといけなくてさぁ、去年までは……」

 「すみません森田さん、プリンが燃えるので四十秒以内でお願いします!!」

 森田さんは一瞬だけ固まった。

 たぶん、彼女の六十余年の人生で「プリンが燃える」という理由で話を急かされたのは初めてだったのだろう。

 「……じゃあ紙、ポスト入れとくから読んでおいて~」

 「ありがとうございます!!!」

 ダッシュでキッチンに戻る。

 鍋を見る。

 ……暗い。すこし、暗い。

 「ギリ、セーフ? これギリ? それともビター? いや、“大人のほろにがカラメル”ってことにすればいいか。そういう売り方してるプリンあるよね。高級プリンっぽいよね」

 かおりは、自分にそう言い聞かせながら、熱いカラメルをプリン型(という名の、100均の耐熱ガラスカップ)に流しこんだ。

 じゅうう……という、ちょっと危険な音。

 「おおおおおおおお」とちょっとテンションが上がる。

     ◇

 プリン液をその上にそっと注ぐ。

 アルミホイルでふたをする。

 お湯をはったフライパンに並べて蒸し焼きにする。

 ここでもまた、いろんなレシピがバラバラのことを言う。

 「弱火で15分+蒸らし10分」

 「超弱火で30分、火は消さない」

「むしろオーブン使え」

 誰か統一ルール作って。

 かおりは、慎重に一番無難そうな「弱火で15分+蒸らし10分」でいくことにした。タイマーをセットし、コンロに小さく火をつける。青い炎がちょろちょろしている。ふつふつ、フライパンの縁に小さな気泡が立っていく。

 「いいぞいいぞ……」

 彼女はそこにイスを持ってきて、じっと見張る体制に入った。

 ――この15分で何か別のことをしようとすると、人は必ず失敗する。これは主婦8年目の経験則である。

 だから彼女は、座ったままスマホをいじる。脳内はすでに「提供:田中家」とスーパーの特売コーナーみたいなナレーションで満たされている。

 検索履歴には、「プリン 固まらない」「プリン 中心だけ生」「プリン なめらかにするには」「手作りプリン 失敗 家族 反応 泣く」といった不安ワードが並ぶ。

 そんな中、LINEがひとつ入った。送り主は、ママ友グループ「四年一組・役員こわい」。

 《今日プリン作ってる?》

 「え、なんでバレてるの?隠しカメラ?」と一瞬びびるが、次のメッセージで合点がいく。

 《うちも昨日つくった。なんか子どもたちの間で“手作りプリンいいな”みたいな話題になってるっぽいよ。給食でプリン出たからじゃない?》

 なるほど。小学校の影響力、おそるべし。給食、文化の発火点。

 《うちのは固まらなくて プリンドリンクになったけどね》

 《ストローさしたら笑って許されたから ストローは用意しときな》

 「ストローでプリン飲ませる未来のビジョン」が一瞬頭をよぎったが、かおりは首を振った。あきらめない。絶対にスプーンで食べさせてやる。

     ◇

 15分経過。火を止め、フライパンにふたをして蒸らす。キッチンじゅうがあまい匂いで満たされていく。

 その匂いって、やさしい。

 シャンプーとか柔軟剤の甘さとは違う。もっと、「大丈夫だよ」って背中をなでられてる感じ。子どもが熱を出した夜、解熱剤が効きはじめて汗をかき、ほっと息をついたときみたいな、あの感じに近い。

 かおりは、ふっと肩の力が抜けるのを感じた。

 ここ最近、いろいろあった。

 みなが宿題を忘れた忘れないで先生に呼び出されたり。

 まことのリモート会議の音声がリビングに流れっぱなしで「それ僕のタスクじゃないと思うんですけど?」みたいなイラッとするビジネス用語を毎日聞かされたり。

 義母から「そろそろピアノとかさせた方がいいんじゃない?」と電話が来たり。いや義母さん、あなたの息子はピアノどころかリコーダーも満足に吹けませんでしたけど。

 たぶん、しんどいとか疲れたとか、本当はもっと言っていいのかもしれない。

 でも家の中って、誰かが「大丈夫」って顔をしないと、不安が伝染する場所でもある。

 だから彼女は、いつもわりと平気な顔をしてきた。

 でも今、この甘い匂いがする空間に立っていると、思ってしまうのだ。

 ――こういうのが、家の平和ってやつじゃないの?

 手の届くところにある、ちいさくてやわらかい幸せ。高級レストランじゃない。テーマパークでもない。駅前のガチャガチャでもない。うちのキッチンで、今日いまここで、ぷるぷる固まりつつあるやつ。

 「……よし。これは成功させる」

 蒸らしが終わった。

 フライパンのふたを、ゆっくり開ける。

 湯気がふわっと上がる。メガネが一瞬くもる。メガネを指で持ち上げ、かおりは中をのぞきこむ。

 「……おおおおおおおおお」

 そこには、ちゃんとプリンらしい形状になった何かがあった。

 真ん中がドロドロでもない。表面に気泡だらけでもない。

 きいろい。かわいい。すべすべ。

 「なにこれ赤ちゃん?」

 思わず写真を撮る。

 「#初プリン成功なるか」と書いて、ママ友グループに投下するか2秒だけ迷って、やめた。まだ油断は禁物だ。冷やす前に調子に乗るとロクなことがない、これも主婦8年目の経験則である。

 粗熱をとって、冷蔵庫へ。

 「冷蔵庫で最低2時間冷やすこと」とレシピにある。

 2時間。

 「2時間って、どうやって生き延びればいいの?」

     ◇

 午後三時十五分。

 みな帰宅。

 「ただいまー……って、なにこのいいにおい。え、なに?プリン?プリン!?プリンだよね今プリンって言ったよねプリンって言葉聞こえたよねプリンって――」

 「落ち着け落ち着け落ち着け。ランドセルを床に捨てない。まず手を洗う。宿題のプリント出す。あと今日は体育で縄跳びだから汗くさいので着替える。プリンは逃げない」

 「逃げないってことはあるんだよね!?存在するんだよね!?見せて!!」

 冷蔵庫オープン。

 4つ並んだガラスカップを見て、みな、無言で口を押さえる。目がまんまるになる。ほぼUFO発見時の表情である。

 「……ママ、すごい……。ほんとに作ったの……?」

 「あたりまえでしょ。誰だと思ってんの。田中家・補給部隊のエースだよ?」

 「えらい……!すごい……!ママすごい……!」

 この瞬間、かおりの全疲労がマイナスになった。マイナス、つまり元気になる方向に転じた。たぶんビタミンCとかより効く。

 そこへ、在宅勤務(建前)を終えた夫・まことが、リビングに顔を出す。

 「プリン?プリンって聞こえたけどプリンあるの?」

 お前らの耳、どんだけプリン感知能力高いの。

 「ちょっと待ちなさい。みんなそろってから食べよう。いいわね?これは家族プリンだから」

 「家族プリン」という、なんか道徳の教科書に出てきそうなワードを口にした瞬間、3人はダイニングテーブルについた。スプーンが配られる。かおりは、冷蔵庫からプリンを4つ、慎重に運び、並べる。

 「それでは、“プリン計画”の発表会を始めます」

 「ぷりんけいかく?」

 娘のみなが首をかしげる。

 夫のまことは、なぜか腕を組んでうなずいている。「うん、いいネーミングだと思う」とか言ってる。お前はプロデューサーか。

 「これはね、あなたたちに“市販よりおいしい”と言わせることを目的に、母が研究・開発・製造したプロジェクトです。正式名称『とろける贅沢プリン・田中スペシャル第1号試作品』です」

 「長い」

 「いいの。長いほうが高そうに聞こえるの。この世はだいたいそういうものなの」

 ちいさく笑いが起きる。

 スプーンを持つ3人。

 カウントダウン。

 「3、2、1――いっせーの、で!」

 スプーンが入る。ぷるん、と揺れる。

 すくって、口へ。

 沈黙。

 みなは、目を見開いたまま固まった。

 まことは、一度天井を見た。

 かおりは、心臓がドキドキしている。どう?どう?どうなの?ねぇ!!

 最初に口を開いたのは、娘だった。

 「……ママ、これさ」

 「うん」

 「たぶんなんだけどさ」

 「うん」

 「コンビニのより、ちょっとだけおいしい」

 かおりはガッツポーズした。

 机の下で、拳を握ったまま上下させた。サイレント優勝。心の中で金メダル授与式。

 続いて夫。

 「これ売れるよ?ブランド化できるよ?“田中牧場プリン”とかにして高級路線でいこう。サイト作ろうか?ネットショップってさ、今は――」

 「お前は一口食べただけで、なんで急に社長になるんだよ」

 「いやほんとにおいしいんだって。すごいよこれ。なにこれ。ちゃんとプリンじゃん」

 「“ちゃんとプリン”って何。ほめてるんだよねそれ」

 「ほめてるほめてる。あのね、ほら、お店のプリンってさ、こう……なんか、『これは手作り感あるでしょ?だから優しい味でしょ?』って押しつけてくるのあるじゃん。でもこれはちゃんとプロっぽい。プロ寄り。わかる?」

 「わかるけど、あなたの説明は毎回ケンカを売ってるように聞こえるのよ」

 3人とも笑った。

 そして、もう一口。さらにもう一口。カラメルのほろ苦さがちょっと大人っぽくて、でも卵の甘さがやさしくて。

 そのとき、みながふと、ぽそっと言った。

 「なんかさ、こういうの、いいね」

 「こういうの?」

 「家でさ、みんなで“いただきまーす”ってして、同じの食べて、“おいしい!”って言って、なんか、ママが“計画成功しました!”とか言ってさ。なんか、映画みたいっていうか、うち、ちゃんとしてるって感じがする」

 かおりは、胸のどこかが、きゅっとなった。

 ちゃんとしてる。

 誰かにそう言ってほしかった言葉が、今、娘の口から出てきた。

 「そうねぇ……うちは、ちゃんとしてるわよ」

 「うん」

 「ちゃんとしてる家はね、プリンがあるの」

 「そうなんだ!?」

 みなは素直に信じた。夫も「そうだそうだ」とうなずいた。適当なことを真面目な顔で言っても、家族って案外そういうのを共有してくれるのだ。

     ◇

 4つのプリンは、あっという間になくなった。

 カップの底に、少しだけ残ったカラメルをスプーンでこそげとりながら、みなが言う。

 「ママ、またつくってね」

 「もちろん」

 かおりは即答した。

 それから、ちょっとだけ声を落として、付け足す。

 「今度は、カラメル、ちょっとだけ焦がしすぎないやつに挑戦するわ」

 「今のもおいしかったよ?」

 「ありがとう。でも、次はもっとすごいのを作るの。なぜならこれは“第1号試作品”だから。次は“第2号改良型”をお届けする予定となっております」

 「やったー!」

 みなが両手を挙げる。

 夫がすかさず言う。

 「次は“田中プレミアムリッチプリン2025”とかの名前でいこう。パッケージは金色で――」

 「うるさいから皿洗いして」

 「はい」

 夫はすっと立ち上がって、素直にシンクに向かった。かおりは内心ちょっとびっくりした。プリン、夫の行動にも効くのか。プリン、もしかして育児だけじゃなくて夫育成にも使える?万能?

 リビングでは、みなが宿題のプリントを広げ、わからない問題を「ママ~」と呼びかけてくる。

 台所では、流しの音と食器があたる小さな音。

 窓の外はゆっくり夕方になっていって、部屋の中が少しオレンジ色に染まる。

 かおりは、胸の中でそっとメモをとる。

 【 とろける贅沢プリン・田中スペシャル第1号試作品 作成計画 結果】

 ・みな:「市販よりちょっとおいしい」→目標達成

 ・まこと:変な会社を立ち上げようとするほど興奮→まあ合格

 ・わたし:すごく救われた気がする

 最後にもうひとつ書き足す。

 ・この家はちゃんとしてる。プリンがあるから。

 彼女は、思わず小さく笑ってしまった。

 キッチンに立ちながら、かおりはエプロンのポケットに手を入れ、スマホを取り出す。そして「プリン 型 かわいい 通販」と検索窓に打ち込んだ。

 次の土曜日、「第2号改良型」のテストが予定されている。すでにそのつもりでいる人間の顔になっていた。

 プリン計画は、まだはじまったばかりだ。

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