犬と猫と人と冬の気配

紙の妖精さん

Of Dogs, Cats, and People in the Breath of Winter.

窓際で丸くなって眠るのは、ふわふわのゴールデンレトリバー、ツァルト。

少し離れた座布団の上には、銀色の毛並みがきれいなノルウェージャンフォレストキャットのルーナが、ゆっくりと伸びをしている。


小さなキッチンからコーヒーの香りが漂うと、ツァルトは伸びをして立ち上がり、ルーナのそばに寄る。

ルーナはちょっと迷惑そうに目を細めるけれど、ツァルトの大きな鼻先をそっと受け入れる。

庭の風に揺れる木の葉の音と、遠くで小鳥がさえずる声だけが、家の中に静かに広がっている。


ブリジット・デ・ブノワはキッチンからパンを一口ほおばり、テーブルに座る。

ツァルトはブリジット・デ・ブノワの膝の上に頭をのせ、ルーナは足元でくるりと丸くなる。


ツァルトが眠そうにあくびをしていると、ルーナのしっぽが突然パタパタと揺れた。

ツァルトはのそのそと床を歩きながら鼻をクンクンさせる。

ルナは「ふん!」と小さく鼻を鳴らす。


その光景を見て、ブリジット・

デ・ブノワは、目を細める。

ツァルトはそんなルーナをじっと見つめた後、くるっと振り返り、ブリジット・デ・ブノワの膝の上に頭をのせて甘える。


午前中は穏やかに流れ、気がつくと庭の草の匂いと、木漏れ日が部屋いっぱいに広がっていた。

ブリジット・デ・ブノワはゆっくりと窓を開け、深呼吸する。

ツァルトは鼻をひくひくさせ、ルーナは窓辺で日向ぼっこ。


お昼過ぎ、ブリジット・デ・ブノワは庭の花に水をやろうと、ジョウロを手に取った。

ツァルトはすでに庭に出る気満々で、尻尾を振りながら足元をくるくる回る。

ルーナは少し慎重で、最初は玄関先で様子をうかがっていたが、ブリジット・デ・ブノワが「大丈夫だよ」と声をかけると、そろりそろりと庭に出てきた。


庭には小さな蜂が飛び回り、ツァルトはそれを追いかけて走る。

ルーナは木の影に隠れつつ、ツァルトの動きを観察する。

ブリジット・デ・ブノワは笑いながら水をまき、ふたりを見守る。


ふと、ツァルトが庭の片隅で何かを見つけた。

小さな葉っぱに隠れたテントウムシだ。

ツァルトは鼻を近づけてくんくん匂いをかぎ、ぴょんと跳ねる。

ルーナも興味を示し、そっと近づいて小さな足でチョンと触る。

テントウムシは驚いて飛び立つが、ツァルトとルーナは追いかけず、しばらく葉っぱを見つめるだけだった。


ブリジット・デ・ブノワはふたりの頭をなでる。

ツァルトは目を細め、ルーナは小さく喉を鳴らす。

庭の風は柔らか。


午後の終わり、ブリジット・デ

・ブノワは縁側に座って、ツァルトとルーナを膝にのせて本を読む。

ふたりはくっついて丸くなり、静かな呼吸と柔らかな毛の感触。


夕暮れが近づき、庭の光がオレンジ色に染まるころ、ブリジット・

デ・ブノワは家の中に戻った。

ツァルトとルーナもすぐについてきて、キッチンでごはんの用意をするブリジット・デ・ブノワ

の足元で待つ。


「はい、お待たせ」と、ブリジット・デ・ブノワはふたりの小さな食器にドライフードを入れる。

ツァルトはすぐにぱくぱく食べ始め、ルーナは少しずつ丁寧に食べる。

その差を見て、ブリジット・

デ・ブノワは思わず笑う。

「ツァルト、ゆっくりね。ルーナ、お上品だね」


食事の後、ブリジット・

デ・ブノワはリビングに座ってソファに毛布を広げる。

ツァルトとルーナは順番に毛布に飛び乗り、丸くなって眠そうな目を細める。

ブリジット・デ・ブノワはそっと肩を抱き寄せ、柔らかい毛に顔をうずめる。


外の風は少し冷たくなったが、部屋の中は温かく、ほのかな電球の光がふたりを包む。

ツァルトが小さなあくびをし、ルーナはかすかに喉を鳴らしている。

「今日もいい一日」とブリジット・デ・ブノワがつぶやくと、ツァルトとルーナが顔をあげて見つめ返す。

まるで「そうだね」と言っているかのようだ。


やがて、夜が深くなると、ブリジット・デ・ブノワは布団に入り、ツァルトとルーナを足元に寝かせる。

ツァルトは丸くなり、ルーナはぴったりくっついて眠る。

静かな寝息が部屋に響いた。





(終)

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