ファン1号

リラックス夢土

第1話



 彼女は夢を語る。



「私、アイドルになるの」



 僕は笑って答える。



「君がアイドルになったら僕が君のファン1号だ」



 君がアイドルになるためのスタイル維持の訓練に僕も付き合う。

 彼女の「夢」は僕の「夢」だった。

 僕は彼女と永遠に同じ「夢」を見ていたはずだった。



「あのね。私アイドルデビューが決まったの」



 僕は自分のことのように喜びを感じた。



「でもアイドルになると恋愛禁止だからあなたとは一緒にいられないの」



 僕は目の前が真っ暗になる。

 でも彼女のためを思って言葉を紡ぐ。



「分かった。でも僕は君のファン1号だからね」



 彼女は笑顔で答える。



「ありがとう」



 彼女がスポットライトを浴びる。

 歓声が会場を包む。


 僕は彼女のファン1号。

 今日のコンサートも彼女に声援を送る。


 握手会の会場で彼女に会う。

 数少ない彼女と話せる機会。


 僕は彼女に近付く。

 僕の前の男が彼女にカードを見せながら言う。



「俺、君のファンクラブのナンバー1号なんです」



 響き渡る悲鳴。

 僕は近くにあった鉄の棒でその男の頭を殴っていた。

 男は倒れて動かない。


 彼女は僕を見た。

 恐怖を浮かべた彼女の瞳を見て僕は鉄の棒を彼女に振り下ろす。



 僕は彼女の「ファン1号」

 彼女は僕だけのアイドルだ。

 




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ファン1号 リラックス夢土 @wakitatomohiro

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