何故か幼馴染とお互い相手を自分に惚れさせたら勝ちという勝負をすることに!?

間咲正樹

何故か幼馴染とお互い相手を自分に惚れさせたら勝ちという勝負をすることに!?

「はぁ~、彼氏欲しいなぁ~」

「いや普通にムリだろ」

「はああ!? なんでだよッ!!?」


 今日も隣の家に住んでいる幼馴染で腐れ縁の弓子ゆみこと二人で下校しているのだが、突然彼氏が欲しいとか、寝言は寝てから言ってほしいものだ。

 弓子は顔とスタイルは悪くないのだが、如何せん性格がガサツすぎるので、高校生になった今でも一度も彼氏が出来たことがない。

 ……まあ、俺も彼女がいたことはないので、人のことは言えないのだが。


「まずお前はその女らしくない性格を直さない限り未来永劫彼氏は出来ねーよ」

「言うじゃねえか健司けんじテメェこの野郎ッ!!! 明日の朝刊載ったゾテメーーー!!!!」

「そういうとこだよ」


 どこの世界に朝刊に載せようとする女と付き合う男がいるんだよ。


「ハッ! 見てろよ健司!! ゼッテェお前より先にステディ作ってみせっかんな!!」

「ステディって……」


 恋人のことをステディって言うようなやつにステディが出来るとは到底思えんのだが。


「アタシが本気出せば、すーぐ男なんかポックリいっちまうかんな!」

「それ死んでるじゃないか」


 どんどんステディから遠ざかってるぞ?


「むしろ健司もホントは年々大人の女っぽくなってくアタシに思春期のリビドーをぶつけたくて堪んないんだろ!? ホレ、ホレッ!」


 弓子が柄にもなく身体をくねらせてしなを作っている。


「……お前と比べたらまだその辺の電柱のほうが色気があるわ」

「アタシは無機物以下かよッ!!? ……あったまキタ!! じゃあ今から勝負しよーぜ!!」

「ん? 勝負?」


 何の?


「『お互いに相手を自分に惚れさせたら勝ち』って勝負だよ! 負けたほうが勝ったほうの言うことを何でも一つ聞くんだかんな!」

「オイ待て。何だその地獄みたいな勝負は」


 そもそも俺がお前に惚れることなんて太陽系に新しい惑星が二つ同時に見つかる確率より低いし、お前が俺に惚れることも有り得ないだろ?

 一生決着つかない千日手じゃないかそれ。


「いーからいーから! じゃ、今から勝負開始な」

「聞けよ人の話をッ!」


 脳味噌の代わりにスポンジ詰まってんのか!?


「うっふ~ん、健司~」

「――!!」


 途端、弓子が俺の腕に絡みつき、その豊満なおっぷぁいを押し当ててきた。

 ぬぬぬぬッ!!!?


「ホレホレ健司~、これでも我慢できんのか~?」

「ぐっ、こ、この……」


 な、何だこの弾力は……。

 この感覚はそう……、ビーズクッション!

 人をダメにするビーズクッションの感覚だこれは……!!

 そうか、ビーズクッションはおっぷぁいを参考に作られたものだったのか(開眼)。


「なあなあ、惚れたろ? アタシに惚れちゃっただろ健司?」

「ほ、惚れるわけないだろうが!! 誰がお前なんかにッ!!」


 そうだ、どんなに立派なビーズクッションを保持していようと、相手は弓子なんだ。

 俺が惚れることなど、絶対に有り得んッ!


「むう~、じゃあこれならどうだッ!」

「ぬッ!?」


 すると今度は、弓子は俺の背中側に回り、後ろから思い切り俺に抱きついてきたのだった。

 ふおおおおおおおおお!?!?!?

 こ、これはヤヴァい……!!

 俺の背中に、ビーズクッションが二つも同時に突貫してきている。

 名ゴールキーパーと謳われたオリバー・カーンでさえ、二つ同時にボールが飛んで来たら捌ききれないのではないだろうか!?(錯乱)


「健司~、もう素直になれって~。好きだろ? アタシのこと好きになっちゃったろ?」

「な、なってねえッ!!」


 クッソー!

 ――こうなったら。


「――今度は俺の番だかんな」

「え……、キャッ!?」


 俺は弓子の手を振り解くと、180度回れ右をして右手を弓子の顔のすぐ横で壁についた。

 ――そう、伝家の宝刀『壁ドン』だ!


「なっ、ななななな何すんだよ急に……」


 ふふふ、いつもはギャンギャンうるさい弓子が、借りてきた猫みたいにしおらしくなってやがる。

 流石伝家の宝刀、こうかはばつぐんだ!

 ――よし、ここは一気に畳み掛けるぞ。


「――弓子」

「――!!?」


 俺はそのままの体勢で、弓子の顎を左手でクイッと持ち上げた。

 ――そう、『顎クイ』ってやつさ!

 単品でも十分効果が高い壁ドンだが、顎クイと併用すると尚破壊力は増す。

 その相性たるや、さながら白米と明太子の如し!(ドヤッ)


「ちょっ!? け、健司!? あわわわわわわわ」


 ハハッ、これでもかってくらい目を泳がせて、耳まで真っ赤になってやがる。

 何だ、意外と弓子も可愛いところあんじゃねーか。

 ――じゃあ、これでとどめだ。


「――なあ、弓子」

「ふえっ?」


 俺は弓子の耳元に口を近付けて、ボソッと囁いた。


「――可愛いぞ」

「~~~~~~~!!!!」


 ふふ、勝ったッ!!

 弓子は完全に雌の顔になって蕩けきってやがる。

 この勝負――俺の勝ちだ!


「……しょ、勝負は」


 ん?


「勝負は、アタシの負けでいい……」

「え?」


 あ、そうなの?

 随分アッサリ負けを認めるんだな。

 ……ん? 待てよ。

 て、ことは……。


「そ、その代わり」

「?」


 その代わり?


「……責任は、取れよな」

「…………は?」


 せ、責任???


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何故か幼馴染とお互い相手を自分に惚れさせたら勝ちという勝負をすることに!? 間咲正樹 @masaki69masaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画