僕は家猫。
琴梨
僕は。
体が重い。寒い。お腹が空いた。寂しい。怖い。
こんな思いを押し殺して必死に生きてきた。
上からお水がたくさん落ちてくる日は、たくさんお水を飲めるし、地面からウネウネした獲物が出てくるから好きだ。けど、体が濡れて重くなるし、寒くなるから辛い。
逆に暑すぎる日も地獄だ。黒い地面は焼けるほど暑くなるから、茶色の地面を探さなければいけない。
白くてふわふわしたものが落ちてくる日は地獄だ。死んでしまうと思うくらい寒いし、獲物も出てこない。
歩いているうちに、僕はそろそろ眠くなってきた。
あたりを見回すと、したに空洞がある大きな箱を見つけた。いつも道をものすごい速さで滑っていく奴だ。今は動いていないから、大丈夫。あの下なら、黒い空飛ぶ奴に襲われることもないだろう。
いつのまにか、お腹が空いたとか、寒いとか、感じなくなっていた。
久しぶりに気持ちよく眠れそうだ。
そう、目を閉じた。
「あれ、猫!パパっ、猫がいる!」
いきなり大きな声が耳に入ってきた。
「本当だ。野良猫かな?うわっ、ガリガリじゃん。
に、ニンゲンだ。いつも高いところから僕を見下ろしてくる、嫌な奴。汚いだとか、気持ち悪いとか、ひどいことを言うんだ。
クシャアッ!シャーッ!(離れろ!どっか行け!)
ニンゲンはどんどん集まってくる。1、2…4!
「
アイカと呼ばれる小さなニンゲンが言った。
「はぁ?別にいいじゃん。私も猫好きだし」
ユウリと呼ばれるニンゲンが言う。アイカより少し大きい。
「どうしよう、何かあげる?鰹節とか、水とか。ドックフードってあげてもいいのかな」
アイカにパパと呼ばれていたニンゲンがぶつぶつと何かを言っている。4人の中で一番大きい。
「ちょっと待ちなさい。かわいそうだけど、野良猫にご飯をあげるのはダメなの!一度覚えてしまったら、何度も来ちゃう。ここは車もよく通るし、くる途中で轢かれたらかわいそうでしょ。パパもよく考えて!」
こいつは二番目に大きい。多分、ママとやらだろう。やけに慌てているな。
「じゃあうちの子にすればいいじゃん」
「確かに!悠里天才!」
小さなニンゲン二人がぴょんぴょんと跳ねる。
くっ、とりあえず今は逃げなければ。
僕は前足に力を入れる。
けど、
あれ、動かない。
目の前の景色がぼやけていく。瞼が重くなって、ついに体から力が抜けていった。
気がつくと、僕は何やらもふもふとしたものに包まれていた。
目の前にはユウリと呼ばれたニンゲンが体を小さくしている。
「あっ、起きた。良かったぁ。君はうちで暮らすことになったよ。よろしくね」
僕は家猫。 琴梨 @haiena0306
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