改定後 私という存在の遺書

 道化師のようなあの人に恋してた。

 優しくて、ずっと寄り添ってくれているような顔をしていて。

 目を見て、私を見て、愛してくれた、フリをしていた。

「私」を見ている、フリをしていた。


 私は本当に。愛してた。依存してた。頼ってた。信頼してた。なにもかも。


 あれは愛じゃなかった。今でもそう思える。

 あの日、一緒にいたあの日、あの日も、あの日も、あの言葉も、全部嘘だった。


 きっと「愛」じゃなかった。「都合のいい奴」だった。

 だから私も、あの子も苦しめた。

 何度言ったってもう伝わらない、今更遅い「ごめんなさい」

 結局自分から謝らなかったね。いつもすぐ謝るのは私だった。

 お互いごめんなさいで終わろう。傷つけてごめんだよ。君の吐いた言葉。

 私が謝るべき理由がわからないの、ごめん(笑)


 私は視野が狭いから、多くのことができないから、全部あなたに騙された。


 優しさも、包容感も、歌も、遊戯ゆうぎも、クセも、方言さえも。

 知らない土地で、知らない趣味で。

 出会えなければ多くのことに盲目もうもくだったままなのだろう、と思う。

 あなたの嘘にも気が付いていたのに、戻ってきてくれるだろう、少しの過ちなんだろうと黙認していた。

 本当に、盲目だった。


 たくさん世界を広げてくれた、気がした。

 たくさん選択肢を増やしてくれた、気がした。


 でも私は。お前のせいで。

 一生の傷と後悔を植え付けられた。


 お前のせいで苦しむことになる。

 きっと悪いとも思ってないんだろうね。


 私じゃない誰かをあなたは選び続けて、嘲笑っていたのだから。

 全部証拠はそろってるよ。 


 お前の幻影で苦しめられることが許せなくて。

 でも、許す気はない。ずっと永遠に私の影を背負って生きていってほしい。


 あなたが一緒に幸せになるべき人と、幸せになって。

 そんな人、いないでしょうけど。


 きっとあなたは前科持ちにだってなれる。私次第でね。


 十一月十八日

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蟹文藝の怪文 蟹文藝(プラナリア) @planawrites

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ