狼似のふわふわと。

青街ミノリ

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川村真央は28歳、東京都内の小さなデザイン会社で働く会社員である。


朝の通勤ラッシュの中を抜け、オフィスの自動ドアをくぐると、いつものデスクが待っている。


パソコンに向かい、デザインの細かい調整をしながら、ふと窓の外に目をやる。


桜の木が、春の日差しを浴びて揺れているのが見えた。「もうすぐ春か…」と小さく呟く。


私の心を置いて目まぐるしく季節は変化していく。


まだ冬がいい!


そんなことを1日中考えながら、夜を迎える。


唯一の癒しに会いに帰路に着く。


自宅で待つのは、愛犬のシベリアンハスキー、ルナ。


大型犬のはずなのに、家の中ではぬいぐるみのように丸くなって眠ることもある。


朝、玄関のドアを開けると、ルナは尻尾をぶんぶん振りながら跳びつき、真央の顔に鼻をくっつけて甘える。


仕事で疲れた体も、この瞬間で一気に癒されるのだ。


休日の朝、真央はルナと一緒に近くの公園へ散歩に出かけに行く。


公園の桜の花びらが風に舞い、ルナはその中を駆け回る。


周囲の人々も、犬の無邪気さに笑顔になるほっこりとする時間だ。



真央はふと思った。


「いつか、ルナと一緒に日本中を旅したらきっと超楽しいはず…」


その夢は、決して大げさなものではない。


週末ごとに近場の観光地を訪れる程度の小さな希望だ。しかし、レオと共に車で遠くの町を巡り、各地の名所やカフェを楽しむ――


そんな日々を想像するだけで、心がわくわくする。



家に帰ると、真央は旅の計画ノートを開く。


そこには、行きたい都道府県や立ち寄りたい場所がびっしりと書かれている。


北海道のラベンダー畑、京都の桜、沖縄の青い海…。


想像しただけですごい楽しそう。


「ルナ、これからいっぱい冒険しようね」小さな声で話しかけると、ルナは尻尾を振り、まるで答えるかのように顔を近づけた。




こうして、真央とルナの小さな旅の夢は、静かに、いやしかし確かに心の中で芽生え始めていた。

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狼似のふわふわと。 青街ミノリ @minori1209_

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