第46話 永遠の愛
その日三界に強大な古の三人の神が復活した。
天界神ラーシャラー、魔界神ザイオン、そして人界神レオン。
三人の神は魔界のエミリオン神殿の跡地の近くに集合した。
「虚無溜まりの虚無は今までとは桁違いの大きさだ。私の力のかなりの量を食うだろう」
レオンは少しずつ広がる虚無を見て言う。
「ならば三界を虚無と切り離す必要があるな。それは俺とラーシャラーがやろう」
ザイオンの言葉にラーシャラーは頷く。
「異議はない。では始めようか。ザイオン」
「ああ」
ラーシャラーとザイオンは三界に結界を張り虚無との空間から三界を切り離した。
それはとてつもない力だ。
「では私は虚無に力を注ぎ込む」
レオンは三界とは別の空間になった虚無のいる空間に転移して虚無に力を注ぎ込む。
空間を切り離してもなおレオンの強大な力に三界は悲鳴を上げる。
ラーシャラーとザイオンはそんな三界が崩壊しないように支える。
虚無はレオンの力を吸い込み膨張し始める。
だがなかなか消滅はしない。
レオンの力が絶えるかそれとも虚無が破裂して無くなるか。
やって見なければ分からない。
レオンが倒れれば虚無に対抗する術はなく三界は虚無に食われて終わりだ。
レオンはさらに力を注ぎ込む。
どのくらいの時間が流れたか分からないが虚無が不意に震え始めた。
そして虚無はレオンの力を飲み込めずに破裂した。
その瞬間、凄まじいエネルギーが放出された。
ラーシャラーとザイオンはその爆発から三界を守る。
「やったか?」
「ああ。そのようだ」
ラーシャラーとザイオンは息をつく。
レオンはこちらの空間に転移すると二人に告げる。
「力が回復するまで眠る。桜華のことよろしく頼む」
そう言うとレオンの姿が消えた。
おそらく眠りについたのだ。
ラーシャラーとザイオンも仮の姿へと戻る。
「それにしても政陽は桜華のことしか頭にないのだな」
九曜は頭を掻きながら魔王城の私室に戻った。
そこには桜華がいた。
「魔王様。セイは、セイはどうなりましたか?」
「眠りについたよ。しばらくは戻って来ないだろう。それでもお前はセイを待つか?」
「はい。たとえ何年かかろうと私はセイを待ち続けます」
「そうか」
九曜は桜華の真剣な瞳に政陽への愛情を感じた。
(政陽。桜華はお前を待つそうだ。早く目覚めろよ)
九曜は心の中で呟いた。
「桜華様。今年も魔界桜が咲きましたよ」
日向の言葉に桜華は顔を綻ばせる。
政陽が眠ってから10年の月日が経っていた。
「魔界桜を見て来るわ」
桜華はそう言って庭に出る。
政陽が買ってくれた魔界桜は今年も咲いた。
桜華は花をつけた魔界桜を見上げる。
(セイ。今年も魔界桜が咲いたわよ)
桜華は魔界桜の幹に手をつける。
「桜華」
その声に桜華はビクリとした。
何度もその声を聞きたいと願った声。
桜華は振り返る。
そこには政陽がいた。
「セイ!」
桜華は政陽に抱きつく。
「桜華。ただいま」
「セイ! お帰りなさい!」
桜華の目から涙が零れる。
「桜華。待っていてくれたんだね。君にもう一度逢えたら言おうと決心していたことがあるんだ」
「なに?」
「桜華。どうか私と結婚して欲しい」
「セイ」
桜華はさらにギュッと政陽に抱きついた。
「返事は?」
「はい。喜んで」
桜華は笑顔で答える。
政陽は桜華の唇にキスをした。
「これからは二人で生きていこう」
「ええ。セイ、愛してるわ」
「私も桜華を愛している」
二人の上から魔界桜の花びらが風に飛ばされて舞い散った。
天魔人 リラックス夢土 @wakitatomohiro
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