第45話 解かれた封印



 政陽は桜華が捕まっているとされるエミリオン神殿までやって来た。

 すると政陽の前に雷牙が現れる。



「おや、大公様。ここに来たということは私の言葉を無視したということですか?」


「お前に従う義理はない」


「ではあの娘がどうなってもいいのですね」


「お前のことはここで殺す。問題ない」


「なるほど。ではやってもらいましょうか」



 雷牙の魔力が膨れ上がる。

 そして雷牙は政陽に剣を抜き向かってきた。


 政陽も剣を抜き雷牙に立ち向かう。

 二人の魔力がぶつかり合うとエミリオン神殿が揺れた。



「いいのですか、大公様。ここには虚無が封印されているのですよ」


「お前、知っているのか? 虚無のことを」


「ええ。私も魔王様のことを倒せないかずっと魔王様のことを調べていました。そして私は知ってしまった。貴方たちが古の神だということを」



 雷牙は剣を振り降ろす。

 政陽はその剣を受け止めた。



「その時の絶望が貴方に分かりますか? 私は決して魔王になれないという事実がどれほどショックだったか」


「分かっているなら桜華を解放して一魔王子として生きるがいい」


「そんなことは許さない!」



 雷牙は政陽から離れてエミリオン神殿に逃げ込む。



「待て。雷牙!」



 政陽も慌てて後を追う。

 雷牙の部下が切りかかってくるが政陽は次々とそいつらを倒す。


 雷牙は地下までやって来た。

 政陽も地下に来る。

 そこには縄で縛られた桜華がいた。



「桜華!」


「政陽様!」


「見ているがいい! 私ができる唯一の復讐だ!」



 雷牙は虚無溜まりの封印である扉に向かって自分の命を吹き込んだ魔力玉をぶつけた。

 凄まじい爆発が起こる。

 政陽はとっさに桜華と自分に守護結界を張る。



「桜華、無事か?」


「はい」



 雷牙の命をかけた攻撃は封印の扉を破壊した。

 ドロリとした虚無が這い出してくる。



「くそ、雷牙の奴。やりやがったな」



 政陽は桜華を連れて魔王城に転移した。



「九曜! 雷牙にやられた。虚無溜まりの封印が解かれた」


「なんだと? まったくなんてことをしてくれる」


「飛翔に連絡を取れ。私は自分の体に戻るために人間界に行く」


「分かった。我々も今回は本当の体に戻る。そうしないと対処しきれないだろう」


「桜華。君は魔王城で待っていろ」


「セイ。また虚無に立ち向かうの?」


「ああ。これは私にしかできないことなんだ。三界は私が守る」


「分かった。セイを信じて待ってるわ」



 政陽は桜華を残して人間界に転移する。



(桜華。必ず虚無を退治して君を迎えに行く)



 政陽はそう心に誓い人界神レオンの体に戻るべく自分の体が眠る森の神殿へと急いだ。



 一方その頃、九曜は飛翔に事の顛末を話していた。



「そうか。ならば我々も本体に戻らないとな。分かった、準備ができしだい魔界へと行く」


「私も今から本来の体に戻る。では後でな」



 九曜は飛翔との通信を終えると魔王城の地下にある魔王しか入れない場所に行く。

 ここには魔界神ザイオンの体がある。



(まさかまた魔界神ザイオンに戻る日が来ようとは)



 苦々しい想いで九曜は封印を解いた。



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