KOE-KUU: 記憶の壮大さ

@ZEROALINFINITO

第1話

「記憶とは、心の奥深くに生きる小さな絵のようなものです。」


カメラは、風のささやきに覆われた古い聖域を映し出す。 中央には巨大なターコイズブルーの像がそびえ立ち、何世紀もの雨と空気に錆びながらも、なお威厳を保っている。 その周りを、八体の小さな像が、足元に供えられた新鮮な花と共に、静かに囲んでいる。


「音…それは、空気が私たちに捧げる歌です。」


何千もの花びらが風に舞い、雲の隙間から差し込む光の筋の中を漂っている。


「そして、記憶…それは、人生で最も甘い味わいです。」


中央にある池には魚がいっぱいで、色鮮やかな魚たちが黄金のきらめきの中を泳ぎ、空の輝きを映している。


「それらは私たちを惹きつける香りであり、私たちが何者であったかと繋がる手触りです。」


数百羽の鳥が飛び立ち、空気を生命で満たしている。


「けれども何よりも…記憶は、すべてが消え去った後も、私たちの心の中でまだ燃えている火花なのです。」


マクトレル(Macktrels)の森の巨大な木々の間を、一人の人影が静かに滑るように進んでいる。 白いドレスの少女が、山のように大きな根の間を歩き、薄暗がりが彼女を包んでいる。 木々は高さ十キロメートルにも達し、侵入不可能な天井を形作っている。 空気はつぶやきと、こだまで振動している。


彼女の足取りは穏やかだ。 彼女の声は、森の静けさを貫くつぶやき。 心は覚えていても、頭が忘れてしまった何かを思い出すかのように、ノスタルジーと優しさに満ちた、穏やかなメロディを口ずさむ。


「暗闇を恐れないで、 なぜなら暗闇も光を渇望しているから。」


彼女は左手で道端の花を優しく撫でる。触れるたびに、花々は長い眠りから目覚めるように、ゆっくりと開く。


「沈黙を恐れないで、 それはかつてあなたが愛した声を護っているから。」


獣の目やシルエットが薄暗がりの中で動いている。観察しているが、あえて近づこうとはしない森の生き物たち。


「道が消えても恐れないで、 あなたの魂にまだ輝きがある限りは。」


詩の一節ごとに、彼女の足元の石がかすかな黄金の輝きを放ち、まるで彼女の声に応えているかのようだ。 空気が振動する。森が聞き入っているように見える。


「なぜなら、すべての影に記憶が宿り、 すべての記憶には…愛の欠片があるから。」


突然、森が明るさに溶け出す。 少女は木々の間から出て、太陽の輝きに目をくらませる。 彼女は手で目を覆う。 まるで長い旅の終わりを見つけたかのように、彼女の微笑みは穏やかだ。


彼女の前には、光の戦士の聖域がそびえ立っている。 主となる像は、片方の手に空を指す剣を持ち、もう一方の腕で小さな生き物を抱いている。 十本の突起を持つ金の輪が、まるで天上の冠のように彼女の頭の後ろに浮かんでいる。


「たとえあなたが私を恐れても、 私はいつもあなたを称賛し、最後まで守り続けるでしょう。」


聖域は威風堂々としている。像は巨大な剣を空に向けて持っている。顔はなく、鎧をまとい、足元まで垂れ下がるベールをつけている。もう一方の腕には小さな生き物を抱え、頭の後ろには十本の金の突起を持つ冠が浮かんでいる。


「『長い旅があなたを待っている、 数々の記憶が目覚めるでしょう、 そして、その一つ一つがあなたをより強くする痛みとなるでしょう。』」


彼女は小さなバケツを取り、水を満たし、中央の像の足元へと歩いていく。 少女は像の前でひざまずく。 水をそっと触れ、花々に振りかける。


彼女は顔を上げ、中央の像を取り囲む八体の像を見つめる。 それぞれが敬意を表すように頭を下げている。 彼女はバケツを取り、水を満たし、ゆっくりと歩き、石のプレートを一つずつ清めていく。


それぞれのプレートには、時の流れでほとんど消えかけた名前が刻まれている。 タール(Thal)、エリーラ(Elyra)、コヴァン(Kovan)、ミリエル(Miriel)、ダーアン(Darn)、リウス(Lius)、サイラ(Saira)、エネン(Enen)。 かつて女神と共に戦った八人の戦士たち。彼女は一人ずつ近づき、像に水を振りかけ、足元に咲いた花にも水をやる。


彼女の歌は続くが、今度はその声に悲しみの色が含まれ、震えている。


「記憶があなたから涙を奪うとき、 味覚、視覚、声を奪うとき… 聴覚、嗅覚、触覚が消え去るとき、 それでも心には炎が残るでしょう。 それが、無の中の闇であなたを導くでしょう。」


彼女は歌を終え、ため息をつく。 バケツを脇に置き、像の隣に座って目を閉じる。


「私の言葉だけを覚えていて。 私はいつもあなたの心を守るためにいるから…」


沈黙が彼女を包み込む。 そして、眠りが、穏やかに深く訪れる。



暗闇が彼女を迎える。 そこには床も空もなく、ただ彼女だけが浮いている… 彼女の体は、星のようにかすかに輝いている。 彼女は立ち上がり、遠くのかすかな赤い光に導かれて進む。声が影の間でつぶやかれ、形のない影が周囲で身をよじっている。


一歩踏み出す。 もう一歩。 何も意味をなさない。何も現実ではないようだ。


赤い光がより強く輝く。 彼女はそれに向かって歩く。 影が彼女の周りを動き、意味のない言葉、しかし痛みに満ちた言葉をささやいている。


たどり着くと、赤いシンボルで覆われた暗い扉が見える。 同じ色の液体が、まるで血を流しているかのようにその下を流れている。 地面が振動する。 声が叫び声に変わる。


彼女はためらう。しかし、後退はしない。 手を伸ばす。 そして触れた瞬間、すべての赤が金色に変わり、扉は消える。


その向こう側では、世界が燃えている。


空は赤。 大地は灰。 血の雨がゆっくりと降る。


彼女の目の前で、ひび割れた鎧の女神が、剣に寄りかかって立っている。 彼女の周りには、八人の戦士が命なく横たわっている。


少女は動かず、言葉を失っている。 女神は顔を上げ、つぶやく。


「『暗闇は破壊的だ… あなたも暗闇、 あなたの内にあるすべてがそうだ。


だが、それでも、あなたはここにいる。


覚えていなさい… その火花があなたの心に生きている限り、 暗闇があなたを完全に飲み込むことはない。』」


女神は困難そうに剣を上げ、少女の心臓に向けて突きつける。


「『覚えていなさい… その火花があなたの心に生きている限り、 暗闇があなたを完全に飲み込むことはない。』」


少女の心臓に向けて剣を突きつける。 黄金の閃光が彼女を包む。


突然、すべてが崩壊する。 空が割れ、巨大な影が彼女の後ろに現れる。 形はなく、ただの煙と、虚空に浮かぶ二つの赤い目だけ。


遠く、上空から声が響く。


「起きなさい… 目覚めなさい… 上へ…」


影が近づく。その腕が彼女の心臓目掛けてまっすぐに伸びる。


彼女は叫ぶ。


そして、目覚める。


目覚め


太陽が彼女をくらませる。 彼女の呼吸は荒い。


「叫んでいたわよ…」聞き覚えのある声が言う。「大丈夫?」


彼女は目を開ける。 長い黒髪と温かい目をした友人が、心配そうに彼女を見つめている。


「ええ…ただの悪夢だったわ」彼女は震える声で答える。


「驚いたわ。どこにも見当たらないから。何かあったのかと思った。」 友人は彼女に手を差し伸べ、起き上がるのを助ける。


「ありがとう」彼女はドレスを払いながらつぶやく。


「もう遅いわ。また罰せられる前に、アカデミーに戻らないと」友人は微笑んで言う。


二人は歩き始める。 風が彼女たちの髪で戯れ、森が再び歌い出す。


去る前に、少女は立ち止まり、空を見上げる。


「ねえ…記憶には世界を変えるほどの大きさがあると思う?」


友人は笑い、歩きながら答える。 「何て質問なのよ?この森があなたに考えさせすぎているわ。」


彼女は微笑み、遠くの像を見つめる。 「そうかも…でも、私はそう信じている。」


彼女は友人に追いつくために走り出す。


カメラが遠ざかる。 風が強く吹く。 中央の像の石の顔から、一筋の涙が流れ落ちる。


そして、古く、穏やかで深い声が、森のこだまの中でささやく。


「物語は、たった今始まったばかり… すぐに、私たちは出会うでしょう。」

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