関西ハンバーガー保護委員会

外清内ダク

関西ハンバーガー保護委員会



 我が国日本の伝統的料理は、地球上で最もヘルシーかつ美味なるエスニック・フードとして全世界で圧倒的な支持を集めている。その代表例といえば、テンプラ、ラーメン、カツカレー、そしてもちろんハンバーガーである。

 ハンバーガーの人気は他の追随を許さない。西暦二二二二年現在、世界七百十三ヶ国中の六百九十九ヶ国でハンバーガー店が営業しており、その消費パティ量は一日あたり五十六億七千万枚、和牛換算で八千万頭分にも達するという。一部には「ハンバーガーはアメリカ料理である」などという無知蒙昧なたわごとを主張する輩も存在するようだが、いやいや、とんでもない。ハンバーガーは疑う余地もなく日本食である。人種差別大国アメリカの国民はそのほとんどが知能に小さからぬ問題を抱えており、いかなる創造的活動とも無縁であることは周知の事実である。そこへいくと、我々日本人は優れた頭脳と高度な教育水準を兼ね備え、全員が例外なく尊敬すべきクリエイターであるばかりか、一切の差別や偏見を社会から根絶することに成功した。以上のことから、ハンバーガーを創造したのがアメリカ人などではなく日本人であるのは証明するまでもなく自明と言えよう。

 ところが、そのすばらしいハンバーガーが今、絶滅の危機に瀕している。野生のハンバーガーはここ二十年ほどで減少の一途をたどり、ハンバーガー年間捕獲量は昨年ついに十万トンを下回った。これは二一五〇年のわずか五十分の一にも満たない量なのである。二二一九年には環境省レッドリスト絶滅危惧IB類(まじヤバいっすEndangered)にも指定され、その危機的状況が広く知られるようになってきた。

 個体数激減の原因はいくつかあるが、中でも最大と目されるのは地球寒冷化による気候変動の影響である。地球の平均気温はここ数十年で七度以上も低下しており、昨年は日本において観測史上はじめての積雪が記録された。正確には初めての雪ではないかもしれない。国会地下図書館に現存する地球スーパー大革命以前の書物はわずか十七冊のみであるが、その記述の中には、地球スーパー大革命(地ス革)以前の日本において降雪を歓迎する表現が見られるという。すなわち、我が国の気候は地ス革以前の水準に戻り始めていると推測されるのである。

 これは考えるまでもなく由々しき問題だ。地球スーパー大革命によって、我々人類はそれまで抱えていたありとあらゆる社会問題を解決し、まったくすばらしい新世界を作り上げたばかりか、完全に理想的かつ知的で差別心をぜんぜん持たない種へと成長した。人類史における長い長い試行錯誤の末ようやく手に入れたこの理想郷を過去の汚れた時代へ引き戻そうとするなど言語道断である。

 ここまで言えば、懸命な読者諸氏にはもうお分かりであろう。そう、我々は、地球寒冷化によって世界を地ス革以前に巻き戻そうと陰謀を巡らせる邪悪な人種、アメリカ人の存在を、決して許してはならない。

 それゆえに、我々は関西ハンバーガー保護委員会の設立を宣言する。関西ハンバーガー保護委員会(関ハ委)の基本的な活動方針は以下のとおりである。


一、野生のハンバーガーの絶滅を阻止し、伝統的ハンバーガー食文化を守るため、あらゆる選択肢を排除せず行動する。


二、この世界から一切の差別と偏見をなくすため、差別主義者であるアメリカ人の根絶を目指す。


三、地球寒冷化の侵攻を食い止め、年平均気温を六十八度まで引き上げたうえで、地球上の全生物にとって住みよく持続可能な社会の形成を志す。


 日本人は十分に知的であるから、当団体の趣旨にもちろん賛同していただけるものと思う。仮に賛同しない人間がいたとしたら、それは日本人ではなくアメリカ人であると推測されるため、我が団体による根絶の対象となる。ぜひ全国民の加入と協力をお願いしたい。

 日本人諸君! さあ、いまこそハンバーガーのために立ち上がろう! 年会費は年収のわずか十三パーセント。それから、加入者には団体機関紙の購読が義務付けられる。とりわけ、三パーセントの割引がかかる年間定期購読がお得でオススメである。



THE END.

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