タダの政治家には興味ありませんッ!~水野松太朗の驚愕~

水野松太朗@しょむ系政治勢力研究会

第1話

目次


◎緑の党(三橋派)に大金を貢いだ話

◎松下政経塾入塾説明会

◎虹と緑の飲み会

◎日本公進党全国大会

◎ネットワーク「地球村」

◎てんつくマンと「豪快な号外」

◎ラディカルフェミニストに吊し上げられた!

◎大阪社会運動探訪

◎マルクス主義同志会

◎ローターアクトクラブ

◎日本青年奉仕協会(JYVA)

◎外山恒一&思想運動

◎民主主義的社会主義運動(MDS)

◎参政党県大会

◎新党くにもり街頭演説

◎れいわ・八幡愛おしゃべり会

◎れいわ・大島九州男おしゃべり会

◎参政党支持者の「謎の飲み会」

◎フェア党・大西恒樹おしゃべり会

◎市民がつくる政治の会・内海聡

◎桃色ゲリラ・増山麗奈

◎民主社会主義的表現の自由戦士・西形公一

◎藤原ひろのぶとNPO「グッドアース」

◎自称「全人類・全宇宙最高最上、全ての神仏を超えた存在」・己様(アーサマ)!

◎日本熊森協会

◎米子市長選でマンツーマン演説会!

◎史上最低最悪の政教一致カルト集団・冨士大石寺顕正会!


◎緑の党三橋派に大金を貢いだ話


 1995年頃、薬害エイズ訴訟の支援運動が大きな盛り上がりを見せていた。政治家では枝野幸男(新党さきがけ)等が国会で追及し、メディア関係では桜井よしこ(ジャーナリスト、ニュースキャスター)や小林よしのり(漫画家)等が大々的に取り上げ、草の根・市民運動レヴェルでは日本民主青年同盟(民青同盟)等が支援に大きく動く等、左派・右派、保守・革新の垣根を超えて支援の動きが現れる、大きな社会運動となっていた。筆者も知人の誘いで、支援運動に参加していた。支援運動には若者が多く関わっており、街頭活動も旧来型のデモではなく、ラップを歌いながら仮装パレードをするという、当時の日本の市民運動としては斬新な物だった。


 此の日は若者による訴訟支援パレードと、厚生省前での集会が行われる予定だった。筆者もパレードに行くべく、会場最寄りの渋谷駅に降り立った。すると、駅前でみすぼらしい姿の中年の女性が2人、何か署名活動をしていた。


「阪神大震災の被災者支援を求める署名でぇ~す!宜しく御願いしまぁ~す!」


 1995年1月7日、阪神淡路大震災が起きた。6434人もの人が亡くなり、当時としては戦後最大規模の震災であった。筆者もヴォランティアとして、東灘区で被災者支援に関わった経験がある。いても立ってもいられなくなり、女性に近付き、直ぐ様署名した。署名活動をしていた女性は、


「私達はぁ、日本ボランティア会でぇ~す!」


と名乗った。聞き覚えの無い団体だが、其の時は特に気にしなかった。署名をし終えると、


「募金も御願いしまぁ~す!」


と言われたので、千円を差し出した。然し、


「募金は2千円からでぇ~す!」


 何!?2千円から!?当時、貧乏生活を送ってた自分にとっては、2千円は大金。然し、ヴォランティアで惨状を見てきた身としては、身を切ってでも被災者を助けたいと思うのも事実。懐は辛い処だが、2千円払う決心をする。其処で財布から2千円を出すと、会員は手から金をパシッ!ともぎ取り、御礼の一言も無く署名活動を再開した。何だぁ!?こういう時って、「有難う」の一言位あっても良いんじゃないかなぁ!?良い事をしたつもりだったが、何か心にモヤモヤが残る出来事だった。


 署名をした時、「救援ニュース」という見出しの新聞を渡された。署名活動や募金活動の様子が書かれ、兵庫県に署名が届けられた事等が載っていた。然し、よく見ると、新聞の上の方には「日本新聞」と書かれてる。あれ?日本新聞って、何処かで聞いた事がある様な…。しかも、障害者や外国人向けの新聞でもないのに、漢字には全て振り仮名が振ってある。何か怪しい…。


 集会の翌日、図書館に行き、日本新聞の発行元を調べてみた。こういう時に役立つのが、「雑誌新聞総かたろぐ」(メディア・リサーチ・センター)である。「に」の項目を辿っていくと…、あった!緑の党という政党の機関紙らしい。緑の党?何か昔、参院選の政見放送で見た事あるぞ…。緑の党…、思い出した!何か、おかっぱ頭で眼鏡を掛けた小母さんが、子供番組の様な口調で「皆さぁ~ん、こ~んに~ちは~!」「緑の党は、女性の党でぇ~す!エロ・グロ・ナンセンスに、反対しまぁ~す!」とか言ってた政党だ!あの政見放送は強烈だったなぁ…。緑の党といっても、どうもドイツを始めとするヨーロッパにある「中道左派の環境保護政党」という感じがしない。どうも此の垢抜けてない感じは…。若しやと思い、「前衛増刊・政治経済総覧」(日本共産党機関紙誌局)を捲る。此の本は、右翼団体や新左翼団体のリストと分析も載っており、怪しい団体について調べるには最適である。頁を捲ると…、あった!解説には、「毛沢東主義集団の1つで、資金の出処も怪しい謀略集団」とあった。ひえ~っ!何か怪しい団体に金を払っちまったって事か!「資金の出処も怪しい」って、若しや募金が活動資金に使われてるのでは…。orz


 緑の党は1981年、矢張り毛沢東主義政党である日本労働党の青森県委員会から分裂して結党された。結党メンバーは、三橋辰雄、対馬テツ子等。党首は対馬だが、三橋が実質的指導者とされ、泡沫候補マニアの間では「緑の党三橋派」等と呼ばれる。


 国政選挙は、89年参院選、90年衆院選、96年衆院選に出馬しているが、どの選挙も全員落選している。地方選挙は東京都知事選や大田区議選、台東区議選、板橋区議選等に出馬。大田区議選は99年に野呂恵子が当選。2021年に死去する迄、区議を6期務めた。野呂の後継として、安田雄一郎が23年大田区議選に出馬し、山田正彦(元みどりの風代議士、元農水相、弁護士)等の支援を受けたが落選している。尚、当選者を出した事のあった選挙は、大田区議選のみである。


 系列の劇団として荒野座があり、荒野座は党が経営してる音楽喫茶「銀河JOY」を中心に活動している。彼等の公演の独特な様子は、ネット上でも散見され、更に本職のライターによる潜入ルポも発売されている。


 募金活動はキャッチセールス並みに執拗で、全国各地でトラブルになっていたという。実際、其のトラブルの様子をネットにアップしてる人もいる。又、集めた募金の額と寄付した額が合ってないという指摘もあり、募金詐欺なのではないかと指摘されている。然し、筆者が2千円を取られてから8年後の2003年、日本テレビ「報道特捜プロジェクト」で彼等の問題が取り上げられた事により、徐々に影を潜めていった。但し、荒野座は「銀河JOY」等で現在も活動中である。


 因みに、薬害エイズ訴訟の原告として活躍した川田龍平は、松本大学講師等を経て、2007年参院選に東京都選挙区から無所属で出馬し当選。其の後、みんなの党、結いの党、維新の党を経て、現在は立憲民主党に所属している(東京都選挙区から比例区に転出)。龍平の母、川田悦子も2000年衆院東京21区補選に無所属で出馬し当選。代議士を1期務めている。


◎松下政経塾入塾説明会


 松下政経塾。松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助が、地盤・看板・カバン(人脈・知名度・資金)を持たない若者を政界に送り込むべく設立した私塾である。塾生は全員寮で生活し、学費は無料で生活費が支給されるという、破格の待遇で研修に打ち込む事が出来る。研修の内容は、政治学や経済学の講義のみならず、茶道や神社参拝、毎朝3kmのランニング、年に1度の100km行軍、自衛隊体験入隊、パナソニックの工場での労務体験、パナソニック商品の営業販売体験等、多岐に渡る。


 卒塾生には逢沢一郎(自民党代議士)や野田佳彦(元首相)、神蔵孝之(イマジニア創業者)、嶋聡(ミクシィ取締役)、本間正人(NHKビジネス英会話講師)、小田全宏(リンカーンフォーラム創始者、選挙候補者討論会仕掛人)、河井克行(元法相)、高島望(ザイン大公爵)、斉藤弥生(行政学者)、横江公美(国際政治学者)、山中光茂(医師、元松坂市長)、松下玲子(立憲民主党代議士、元武蔵野市長、元都議)、丸山穂高(NHK党元代議士)、深作ヘスス(国民民主党代議士、右翼活動家・深作清次郎の孫)等錚々たるメンバーであり、退塾生にも「泡沫候補の星」と言われる中川暢三(元加西市長)等がいる。高島が幹部を務める「ザイン」は、「古代帝国軍」「富士皇朝」「ザイクス」等の別名でも知られる、軍国主義とセックスを掲げるカルト集団として有名。横江等は塾生時代、討論番組「朝まで生テレビ!」に出演し、田村智子(当時日本民主青年同盟中央常任委員・民主青年新聞編集長、現共産党委員長、代議士)や槙泰智(当時一水会政治局員候補)等と激論を交わした。


 塾は毎年夏に本部で入塾説明会を行なっており、筆者も覗いてみる事にした。塾は神奈川県茅ケ崎市の海沿いにあり、最寄り駅は藤沢市の辻堂駅である。駅に降り立ったら、スッゴいリゾート地で驚いた。塾の方角へ向かうと、同じ方角へ向かうスーツ姿の若者を何人か見かける。


「若しかして、政経塾の説明会に行かれるんですか?」


と話しかけると、


「はい、そうです!」


と、勢いのある返事が。希望に燃える若者、という感じか。筆者も説明会参加者と伝え、同行する。


「将来はやっぱ政治家を目指すんですか?」


「はい、勿論!」

「所属政党とかは考えてるんですか?」


「勿論、自民党です!貴方は?」


「ああ、自分は今の処政治家を目指してる訳じゃなくて、学問的に政治を勉強してみたいという目的での入塾希望者で…」


等と会話する。


 塾に着く。デカい敷地の中に並木が立派に整備され、建物も立派と、松下の財力の大きさに改めて度肝を抜かれる。


 説明会は、最初は大講堂で始まった。塾長の講話では、「塾主・松下幸之助は、無税国家の実現を説いていた。正に此の無税国家実現を推進する政治家を育成するのが政経塾設立の目的だ」と強調されていた。う~む、税を廃止してしまうと、インフラ整備や社会保障等はどうなるのだろう…。全て定額の社会保険で賄うという事か?そうなると、逆進性が強くなり、不公平が生じる事になるが…。いや、其とも完全に自己責任で、個人で賄えという事か?そうなると著しい社会的弱者切り捨てになりはしないか?何か釈然とせんなぁ…。


 続いて2人の塾生による、塾での生活や塾の部屋等について説明があり、質疑応答があった。塾の中には、茶道をする為の和室もあった。寮は個室で食堂も付いており、快適に過ごせそうな空間だった。「他の政治塾との違いは?」という質問に対しては、「此処以外では一新塾(平成維新の会・大前研一氏が主宰の政治塾)等が有名だが、経済的な心配をせず、寮生活をし乍ら数年に渡って勉強に打ち込める塾は此処だけ」と、誇る様に答えていた。筆者は「歴代塾生のプロフィールを見ると、高学歴の人が多い。無学な自分は出願しても、最初から弾かれてしまうのではないかという心配がある」と質問したが、回答した塾生は「自分も学生時代は必ずしも勉強熱心ではなかった。寧ろ塾生である現在の方が遥かに勉強している。熱意をアピールすれば、誰にでもチャンスはある」と答えてくれた。


 説明会が終わり、帰宅する為に辻堂駅に向かっていると、ラフな服装の男性から、


「折角出会えたんだし、有志で飲み乍ら話をしませんか?」


と誘われた。自分も志願者の事を色々知りたかったので快諾した。参加メンバーは筆者含めて10人程。大半は学生だったが、プログラマーや会社員等、社会人も2~3人いた。参加者のうち、女性は1人だった。筆者を除いて全員政治家志望で、みんなギラギラした気迫を感じた。


 駅に近い居酒屋で飲み会を開催。飲み会では主に、安全保障政策や憲法改定の是非について盛り上がった。大半の参加者は現実主義を掲げる軍拡・改憲派だったが、1人だけ此の塾の志望者らしからぬ理想主義者・護憲派の男子学生が孤軍奮闘し、熱弁を奮っていた。筆者はウーロン茶を飲み乍ら静観し、議論を見守っていた。


 2時間程で飲み会は御開き。中々楽しい時間を過ごせた。飲み会参加者の中で塾生になった人がいるかどうかは分からないが、塾生になれたとしても、なれなかったとしても、政治を志した時の熱い思いを持ち続けていればと願う。


◎虹と緑の飲み会


 筆者の住んでる地域で、市議会議員補欠選挙が行なわれた。定数は2に対し、8人が出馬する激戦だった。候補者の所属党派は、民主党が1人、共産党が1人、「虹と緑の500人リスト」という地方議員グループに所属する市民派無所属が1人、しょむ系候補(インディーズ候補、無頼系独立候補、泡沫候補)の無所属が1人、残りは全員自民党系無所属だった。当選したのは民主党元職と、自民党系無所属元職だった。


 其の中で筆者は、市民派無所属候補の選挙スタッフが主催していた憲法勉強会に参加経験があった。其の縁で、市民派候補の落選慰労会に誘われ、出席する事となった。


 会場は小さな居酒屋。落選はしたものの、全力で選挙戦を戦った事もあってか、又、今回は次回の本選の為の顔見せという位置付けだった事もあってか、参加者全員の雰囲気は「次があるさ!」という感じで明るかった。


 暫く飲み食いしてると、選挙を取り仕切っていた年配の男性が口を開く。


「今回もそうだが、補欠選挙だと創価学会員は全員棄権してるね。公明党は補欠選挙には候補者を立てないし、公認・推薦候補が出てない選挙では絶対投票に行かないから。票を見たら分かるが、普段の選挙の総得票から補欠選挙の得票を引くと、公明党の候補全員の合計得票数とピタリ一致するから」


え!?学会員はてっきり自民系元職に入れてたのかと思ったら、棄権してたのか!此って、自党の候補が出てない時は投票に行くなと命令してるって事かな?矢張り学会ってカルトだなぁ…。


 其して、其の男性は筆者にも話しかけてきた。


「処で君…。今回護憲の候補は我々の候補と共産党の候補だけだったが、共産党が候補を立ててなかったら、我々に票が入って勝ててた。然し共産党は落選して当たり前なのに泡沫候補を立てて我々を妨害した。どうだね、共産党というのはつくづく我儘で身勝手だとは思わんかね?」


え~っ???何、此の露骨な反共主義構文は…。「共産党候補のせいで自分の票が減って落選した」は共産党批判としては非常にベタな物だが、今回は市民派候補は共産党より得票がしたなんだから、此の批判は当て当て嵌まるまい…。すかさずツッコミを入れる。


「でも、今回は共産党より我々の方が遥かに得票が下ですよね。○○さんの論理だと、邪魔で我儘で身勝手なのは共産党候補の当選を妨害した我々という事になるのでは…」


そう言うと、男性はムスッとした表情で黙り込んでしまった。まあ、言い掛かりは良くないよ…。

 又、自分が参加してる護憲団体の代表が口を開く。


「いや~、でも△△さんが当選したのは良かったなぁ~。ちゃんと社民党を離党してくれたし…」


なぬ!?!?あ、そういえば元職の△△氏、今回は民主党で出てるのか。然し、社民党県連のホームページには、彼の名前は未だ残っており、「県連副代表」としっかり書いてあった。


「え?△△さん、社民辞めてるんですか?でも、社民党県連のサイトでは彼は県連副代表って未だ書いてありますよ」


「何!?社民党辞めてないの!?!?げぇっ…」


いやいや、何故に其んなに社民党を嫌う?市民派なら民主党より寧ろ社民党の方が路線が近かろうて…。


 更に代表は続ける。


「僕の出身大学は共産党の組織が強くてねぇ。僕の大学生活は、共産党を潰す為に全てを捧げた4年間だったよ~」


 ヲイヲイヲイ!今度は内ゲバ自慢か!!護憲だの平和だのと掲げてる政策とは裏腹に、反共主義てんこ盛りだな!筆者は若干呆れながらも、すかさずツッコミを入れる。


「自民党とは戦わなかったんですか?」


すると、代表は般若の様な形相で此方をギロリと睨み付けてきた!!怖っ!!!


 其の後は飲み会が終わる迄、他の参加者を刺激しない様に黙ってチビチビ飲み食いする筆者なのであった…。


 此の市民派候補界隈が反共主義に拘るのには、理由がある。「虹と緑の500人リスト」に深く関わっていたのは、「自治・連隊・エコロジーをめざす政治グループ・蒼生」という団体だった。此の団体の旧称は「共産主義労働者党」(共労党)であり、構造改革派(構改派)と呼ばれる、アントニオ・グラムシ(イタリア共産党幹部)等の影響を受けた共産主義理論の右派的潮流の団体だった。「蒼生」は白川真澄(社会運動家)等、日本共産党を離脱した者も関わっていた事から、共産党に対しては凄まじい敵愾心を剥き出しにしていた。


 「蒼生」は共労党時代から選挙にも積極的に関わっており、今野敏(作家)等が所属した「原発いらない人びと」や、田英夫(ジャーナリスト、参院議員)率いる「平和:市民」、中村敦夫(俳優、参院議員)率いる「みどりの会議」等に関わっていた。其して、「みどりの会議」は「みどりのテーブル」「みどりの未来」を経て、「虹と緑」と合併する形で「緑の党グリーンズジャパン」と改称して現在に至っている。「蒼生」は「みどりの未来」結成から暫くした2012年8月に解散している。


 其の後、市民派候補は後の市議選で当選。以降、落選する事無く議員を続けている。因みに、難癖を付けられた共産党候補も、其の市民派候補と同期当選を果たし、現在も議員を続けている。又、しょむ系の無所属候補も、当選には至らなかったものの後の市議選に数回出馬している。


◎日本公進党全国大会


 2004年、「ベンチャー政党」を謳う新たな政党のホームページを発見した。其の名は日本公進党。公進党は「こうしんとう」と読むらしい。新たな右派政党か?と思ってサイトをチェックしてみたら、何と筆者の居住地の県で全国大会をやるとの事。此は是非行かねば!


 大会の会場は、市立男女共同参画センターの会議室。室内には日章旗が貼られ、車座で会議をする準備が整えられていた。筆者以外の参加者は、県内在住の党首、大阪府在住の幹事長、山口県在住の幹事、其して、来賓として地元の定時制高校生徒会副会長がいた。其々自己紹介をする。筆者は「個人的に政治や憲法について勉強している。是非貴党の見解も伺いたい」と党首に言うと、快く迎えてくれた。然し、突然胸元を掴んで青いリボンを付けようとしてきたので、


「な、何ですか突然!?」


と狼狽えると、


「北朝鮮に反対の意思を示すブルーリボンです!全員付けて、北朝鮮を倒す強い意志を見せましょう!」


と叫んできた。耳元で五月蠅ぇーっ!煩わしく思い乍らも、渋々リボンを付けた。


 大会開始の時間になると、


「全員起立!国旗に向かって敬礼!」


と宣言。全員で正面に掲げてある日章旗に敬礼し、続いて、


「国歌、斉唱!」


と、「君が代」が流され、全員で歌った。自分は日章旗にも「君が代」にも特に思い入れは無いので、適当にやり過ごした。


 着席し、大会が始まる。先ずは、党の歴史が語られた。公進党は2001年、当時高校生だった小笠原賢二等が、被差別部落解放運動に反対する目的で結成した。其して、天皇の元首化、国軍創設、緊急事態条項設立、国民の権利制限等を規定した憲法改正案を作ったという。う~む、ベンチャーという割には単なるゴリゴリの右翼団体っぽくて、主張に全然目新しさが感じられんなぁ…。党史の説明が一段落した処で質問する。


「あの~、ちょっくら質問なんですが…。貴党のサイトでは『ベンチャー政党』として新しさが強調されてたと思うんですけど、憲法改正案を見るに、自民党や保守系論客の方々が主張してる事と明確な違いが見られない様な…。皆さんの新しい点って何処なんですか?」


党首の小笠原が、自信満々の表情で回答する。


「他の政党や論客との明確な違いはですねぇ、僕等はベンチャー政党だという事ですよ!何がベンチャーかと言うと、僕等は全員25歳以下だという事です!此んな若い党員が役員を務める政党なんて、他に無いでしょう!其処が他の政党との決定的な違いです!」


何ぃ~~っ!?!?他党との違いは、党員の年齢だけってか!?!?!?政策について質問してるのに、「年齢が違います!」だけが答えかよ!


 釈然としない儘、今度は規約改定作業に進む。筆者は傍聴者にも拘らず、此方の議論にも参加する事になった。其の中で、「60歳以上の党員の選挙出馬は認めない。出馬したとしても党の公認は出さない」という案が出てきた。党員達は、


「我々はベンチャー政党なんだから、老人は認めなくて当然でしょ!」


等と燥いでいた。筆者はあからさまに高齢者を馬鹿にする態度に腹が立ったが、感情を抑えて、


「いや然し、福井市議選で当選した嶋田勝次郎という人は、初当選の時79歳だったんですよ。長期当選者の世代交代を促すのは必要と思いますが、60歳を超えて選挙に初めて挑戦する候補もいる訳ですから、現状議員が1人もいない公進党なら、厳密な年齢制限は設けなくても良いのでは…」


と提案する。議論の結果、「60歳以上の党員の選挙出馬は認めない。出馬したとしても党の公認は出さない。但し、現職議員でない新人候補については公認を認める」という改定で落ち着いた。未だ議員が1人もいない癖に、此んな偉そうな態度の規約を作る意味があるんか…?


 大会が終わった後、党員達は近所の喫茶店に食事に行ってしまった。自分も是非とも同行したかったのだが、残念乍ら自分は誘われなかった。同行出来たら、もっと党の内情を掘り下げられたのになぁ~…。orz


 其の後、唯一の党友である新藤洋一(元「みどりといのちの市民・農民連合」)が推薦候補として群馬県吉井町議選に出馬し、当選を果たしたが、1期で引退した。党首の小笠原は岡山市議選、幹事長の中野壽人は岸和田市議選、幹事の近藤勇次郎は岩国市議選に出馬したが、全員下位で落選した。中野と近藤は選挙には1回しか出馬しなかったが、小笠原は維新の党に移籍して市議選に再チャレンジしたり、一水会や日本会議等の右派団体の集会に参加したり、高井崇志(当時維新の党代議士、現れいわ新選組幹事長)の第二公設秘書になる等して政治活動を継続していた。秘書として活動していた時、SNSのアカウントに「公進党ってどうなりました?」とメッセージを送ったら、即ブロックされてしまった。彼にとって、最早公進党は汚点になってたのか…。其んな小笠原だったが、秘書在任中に癌で死去。37歳の若さだった。


 公進党について、日本テレビの「先端研」という関東ローカルの深夜ドキュメンタリー番組で取り上げられた事がある。「政治家を志す若者」というテーマで、早稲田大学雄弁会や松下政経塾等と並んで公進党が取り上げられた。然し、公進党の稚拙な部分を突いたやや批判的な内容だった為、公進党側は名誉棄損だとして日本テレビに抗議。然し、日本テレビ側は謝罪・訂正はしないと表明した為、放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てをした。然し、BPOは「日本テレビ側の対応は問題無い」と、公進党側の訴えを退けている。


◎ネットワーク「地球村」


 筆者の知人から、ネットワーク「地球村」という団体の会員である事を告げられた。環境保護等に取り組む団体らしい。其の時は、「あ、そういう団体があるんだ」と思うだけで、特に興味関心は抱かなかった。


 数年後の2005年頃、別の知人から「地球村」会員である事を告げられた。結構会員が増えてる団体なのか?と気になり始め、地域支部の会合の日程を調べ、参加してみる事にした。


 会合では、自前の箸を持ち歩く、体や髪を洗う時に石鹸やシャンプー等は使わずに湯だけで流す等、環境保護の為にしている独特な行動が各自報告された。話者が交代する為のバトンタッチの方法が又独特で、話者が両手で次の話者の右手をポンと挟むという、何か宗教的儀式めいた物だった。


 「地球村」は1991年、高木善之により設立。会員数は一時期10万人を誇り、国連NGOにも認定されていたが、現在は8千人程である。又、嘗ては全国各地に地域支部があったが、現在は殆ど残っていない。本部の活動は代表である高木の講演活動が中心だったが、コロナ禍以降はオンラインセミナーが中心である。


 高木は元々松下電器の研究者で、社内の合唱団の指揮者でもあった。34歳の時にバイク事故に遭い、臨死体験を経験。其の経験で「全宇宙、全世界の全てを知った」と主張している。又、斎藤貴男(ジャーナリスト)の著書「カルト資本主義」によると、一時期ヤマギシ会にも入っていたという。然し、途中で「ヤマギシはカルト」と批判する様になり、脱退したという。船井幸雄(経営コンサルタント、船井総合研究所創業者)とも関わりを深め、スピリチュアルな路線に傾倒している。


 地域支部の会合に何度か参加しているうち、筆者の居住地でも高木の講演会が開催されると聞いた。会員の言動が独特な雰囲気がした事から、何か面白い事になるのではないかと思い、潜入してみる事にした。


 高木の講演では、


「『地球村』の根本原理は『非対立』。どんな意見とも絶対対立しない。対立すると必ず争いを生み、争いは戦争に繋がる」


「石鹸やシャンプーは水質汚染に繋がるだけでなく、人体にも有害。自分は此の事実を知ってから、体は勿論髪も御湯で流すしかしてない」


「燃料電池は有害無益。其んな物の研究開発より、電気を使わない生活をする方が余程環境保護に繋がる」


等、独特の理論が展開された。


 講演の後、車椅子に試乗している高木に、


「貴方はもう『地球村』の会員ですか?グリーンコンシューマーですか?」


と聞かれたので、


「いやぁ、実は未だ…」


と答えると、


「そうですか。貴方は環境破壊推進の立場なんですね」


と決めつけられてしまった。はぁっ!?!?!?何で「地球村」の会員でない=環境破壊推進なんだよ!論理の飛躍も甚だしいぞ!!!高木の傲慢で人を見下す様な態度に腹が立ってしまった。


 別の日。「講演よりもっと濃密な体験が出来る」という、セミナーに参加してみる事にした。参加費は5千円。高ぇ~っ!!


 セミナーは真っ暗な部屋で宇宙の写真のスライドを見せられながら、


「私はバイク事故で生死の淵を彷徨い、世界の全て、宇宙の全て、生命の全てを知りました。1991年にソ連が崩壊し、2001年には9・11事件でアメリカが崩壊しました。2011年には日本が崩壊し、2021年には世界が崩壊します。21年に起きるのは核戦争です。其を避ける方法がたった1つだけあります。『地球村』の会員、グリーンコンシューマーを増やす事です」


と語られた。結局会員勧誘が目的かぁ…。


 又別の日。とある参院議員がプロデュースする喫茶店の展示スペースで、「地球村」の展示をする事になったので、手伝いに行く事にした。


 自前の箸を持ち歩こう、石鹸を使うのをやめよう等、独特の主張の展示が次々貼られていく。準備の最中、とある会員が手伝いに来た学生をセミナーに勧誘していた。学生はバイトがある事を理由に必死に断っていたが、会員はしつこく勧誘していた。余りに見苦しかったので、


「まあまあ、其の日は偶々空かなかっただけで、又別の機会に来てもらえば良いじゃないですか…」


と諫めた。すると会員は物凄い剣幕でブチ切れ、


「何故止めるのよ!『地球村』の運動を進めないと、環境破壊は進んでしまうの!其を止めるなんて、貴方のせいで環境破壊は進んでしまうのよ!其んな事も分からないの!」


と怒鳴ってきた。余りに理不尽な理由で怒鳴られた事で筆者も腹が立ち、


「たった1人がセミナー1つ休んだ位で、環境破壊が進むのかよ!『地球村』の運動は其んな影響力の無いヘボい運動なのかよ!其にあんた、少しでも環境破壊が進んだら、挫けて『地球村』の運動をやめてしまうのかよ!其んな生半可な気持ちで運動やってるのかよ!」


と𠮟り飛ばした。会員はタジタジしながらも、


「私はねぇ…、『地球村』の運動、もう3年もやってるんだよ!素人の貴方に何が分かるっていうのよ!」


と怒鳴り返してきた。筆者も負けず、


「こっちは障害者ヴォランティアの活動に4年以上関わっとるわい!たった3年ぽっちの素人はあんただろーが!!偉そーにしてんじゃねぇ!!!」


と怒鳴り、手伝いを放り出して会場を出て行った。


 其の後、マルチ手法的な強引な勧誘活動や、前時代的な活動内容が問題視され、『地球村』の勢力は退潮傾向にあるという。当時会員だった連中は、今頃何をしてるんだろう…。


◎てんつくマンと「豪快な号外」


 2007年、「TEAM GOGO!2007」というプロジェクトが、てんつくマンという人物により立ち上げられた。「豪快な号外」と呼ばれる、環境保護啓発を目的とするフリーペーパーを2007年の夏至・6月20日に全戸配布し、「フリーペーパー配布世界一記録」としてギネスブックに載せようというプロジェクトである。筆者は記録には興味が無かったが、環境保護啓発の活動は良い事だと思い、協力する事にした。


 てんつくマン(本名:軌保博光)は、元御笑い芸人。山崎邦正(現:月亭方正)とコンビ「GSX(ガスペケ)」「TEAM-0(チーム・ゼロ)」を組むも、「やりたい事が見つかった」と芸人を引退。Vシネマ「OLの性」監督や、「校内写生」(原作:遊人)出演等、映画監督・俳優としての活動を始める。其の後、路上詩人に転向し、映画「光の雨」で山本太郎(俳優、後にれいわ新選組代表、参院議員)演じる俳優(連合赤軍の森恒夫役を演じていた)の路上パフォーマンスの筆文字を担当する。2002年頃から環境保護活動を始め、2003年に映画「107+1~天国はつくるもの」の監督を務める。其して、2007年に「TEAM GOGO!」を立ち上げた。


 「TEAM GOGO!」の呼び掛け人は、池松耕次(Pleasure Group CEO)、大嶋啓介(居酒屋てっぺん代表、渋谷区倫理法人会会員)、加藤登紀子(歌手、環境政党「希望」代表藤本敏夫の妻)、川田龍平(薬害エイズ訴訟原告、後に参院議員)、古今亭菊千代(落語家)、坂本龍一(音楽家)、関本秀一(三田市議会議員、環境カウンセラー)、高樹沙耶(俳優、後に新党改革候補者)、高木善之(ネットワーク「地球村」代表)、田中優(環境活動家)、辻信一(文化人類学者、明治学院大学教授、元革マル派活動家)、森一敏(金沢市議会議員)、Yae(歌手、加藤登紀子の娘)、山田玲司(漫画家)等、ある意味錚々たるメンバーだった。今見てみると、アヤシい人も混じってるなぁ~…。orz


 「豪快な号外」、別名「30秒で世界を変えちゃう新聞」は、山田玲司の環境保護啓発漫画を織り交ぜ乍ら、風力発電に取り組む自治体、打ち水やキャンドルナイト、レジ袋拒否、ゴミ拾い、アースデイ等の活動、割り箸をやめた飲食店の紹介、地産地消やフェアトレード、自前の箸や水筒の常備、マニフェスト選挙、バナナ紙の使用等の呼び掛け等を行なうという内容だった。此のフリーペーパーをポスティングや街頭等で3千万部配布し、ギネスブックに登録するという計画だった。呼び掛けには「肉食、テレビ、車の使用を控えよう」等、かなり極端な内容も含まれており、又、環境保護推進企業の1つにブラック企業として名高いワタミが紹介されている等、疑問に思う事も含まれていたが、読者のリテラシーを信じて配布を決意した。今考えると何とも…。orz


 配布担当のリーダーは「虹の天使」と呼ばれ、「nijiten.net」という独自ドメインのSNS(様式は昔懐かしいmixiに近い)で意見交換が行われていた。筆者も当時住んでた自治体の「虹の天使」となり、本部から50部程送付してもらった。田舎で移動が大変な地域だったので、戸別配布は自宅近所数件に留め、残りは鉄道駅や道の駅に置かせてもらった。筆者の居住地以外の自治体では、賛同者でチームが組まれて街頭配布が行なわれたり、小学校等に頼んで児童生徒に配布する等、かなり大規模に活動していた地域もある様だった。


 然し、活動終了後に「豪快な号外」の紙やインクの材質を問題視する参加者が相次ぐ。紙やインクが、環境負荷の高い材質だった事が明らかになった為である。「環境保護を訴えながら、フリーペーパーの材質が環境負荷が高い物なら自己矛盾ではないか?活動は寧ろ環境破壊の片棒を担ぐ物ではなかったのか?」という意見が噴出した。更に、フリーペーパー配布と同時に呼び掛けた募金についても、「使途が不明確」という意見が相次ぎ、参加者と本部の間に深い溝が出来た。本部は「今回はスピードを重視する為、材質については敢えて目を瞑った。募金の収支報告は追々行なう」と説明したが、参加者の不信感を払拭するには至らなかった。加えて、ペーパーの配布部数の計測も不十分で、ギネスブックへの登録申請も出来なかった為、「TEAM GOGO!」の活動は一気に終息した。


 其の後調べて分かった事だが、てんつくマンと池松耕次は、「ナチュラリープラス」というマルチ商法の会社に非常に深く関わっていた。そういえば、アムウェイ等のマルチ商法会社の商品には、「環境保護」を謳ってる物も多数ある。という事は、此の活動はマルチ商法の会員候補を集める活動だったのではないかという見方も出来るのではなかろうか。


 更に、「虹の天使」はネットワーク「地球村」が好んで多用してる言葉だという事も分った。そういえば、「豪快な号外」で強調されていた環境保護活動は、「地球村」の主張と酷似している。


 マルチ+スピリチュアル。其んな活動の片棒を担いでしまったとは…。トホホである。orz


◎ラディカルフェミニストに吊し上げられた!


 ふと思い立って、1泊2日の大阪旅行をする事になった。目的は各種政治運動の観察。其処で、恐ろしい目に遭う事になる…。


 昼食後、「ふぇみん婦人民主クラブ」という団体の集会に行ってみた。婦人民主クラブは1946年、羽仁説子(教育評論家)、加藤シヅエ(政治家)、宮本百合子(作家)、佐多稲子(作家)、山室民子(牧師)、櫛田ふき(女性運動家)、関鑑子(声楽家)等を中心に結成された女性団体。1970年に新左翼の受け入れや共産党の方針を支持するか等を巡って主流派と反主流派(共産党系)が対立。反主流派は除名され、主流派は佐多を会長として「ふぇみん」を名乗る様になった。一方、反主流派は「ふぇみん」の付かない「婦人民主クラブ」と名乗って、活動を続けている。


 講師は大学教授の女性。文化や美術、歴史等における性差別について語るという物だった。感想を求められたので、


「まあ、差別解消の為に女性も男性も頑張っていけばよいのではないかと…」


と言うと、講師の女性はクワッと筆者を睨みつけ、


「違う!頑張る必要があるのは男性だけだ!女性は何も悪くない!」


しまった!怒らせてしまった!!


「いや、女性と男性が協力して、という意味で…」


と弁解したが、


「何故女性が男性に合わせなくちゃならないの!抑圧者であり、加害者である貴方が女性に合わせるのが当然でしょ!」


と、烈火の如く怒鳴られる。ヒエェ…。


「例えば、皇太子妃の雅子様は、男女の抑圧関係が理由で適応障害になってしまわれたのよ!男の子を産む事を強制させられて、御可哀そうに…」


「いや、皇太子妃の問題は男女の問題もあるでしょうけど、天皇制という封建的支配制度に1番の問題があるんじゃないでしょうか?」


「私達は別に、天皇制を問題とは思ってないから!」

ええええええ!?!?!?天皇制なんて、差別問題の一丁目一番地という位、問題のある制度じゃね!?天皇制の解消無しに性差別問題が解消出来るなんて本気で思ってるなら、随分御目出度いなぁ…。


 居た堪れなくなり、集会終了後は直ぐ会場を去った。主催者や講師達は「男に勝った!」とか思ったのかなぁ…。orz


 帰宅から数日後、メンズリブ(男性解放運動)の集会に参加した時、上記体験を報告したら、参加者から、


「あぁ、其の先生はフェミニズムの中でもラディカルフェミニズムと言って、化石の人。誰からも相手にされてない人だから、全然気にする事は無いよ」


と言われ、少しホッとした。又、「ふぇみん」の主張自体は決してラディカルフェミニズムが多数を占めてる訳でもないという事も、後で分った。


 尚、大阪を訪れた際、此の集会以外も様々な集会に参加した。其等の体験については次項にて書く。


◎大阪社会運動探訪


 前項で書いた女性団体の集会以外にも、様々な集会に参加した。其の時の体験について書く。


 先ず大阪駅に降り立ち、遭遇したのは全学連の街頭集会。白いヘルメットに赤い線、其して「Z」の文字。革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)系である。隊列の後ろに付いて行っていたら、ヘルメット姿の学生に、


「おい!あんた何者だ!」


と言われ、複数の活動家に取り囲まれてしまった。対立するのは本当に命が危ないので、


「済みません。自分は単なる一市民の参加者です。貴方方と対立するつもりは全くありません。何なら、免許証を見せます。写真に撮って頂いても結構です」


と言い、免許証を渡した。活動家は携帯電話で免許証の写真を撮り、


「怪しい行動はしない様に!」


と言い、筆者は解放された。集会参加も気を付けんとな…。


其して、前項で書いた女性団体の集会に行き、其の後前田哲男(東京国際大学教授、ジャーナリスト、軍事評論家)の講演会。演題は憲法9条や日米安保条約についての物だった。講演の後、懇親会もあるというので付いて行った。すると、会場には代議士を辞職し、更に参院選を落選したばかりの辻元清美(後に立憲民主党参院議員)が来ていた。突然大物が来場した事にビビる筆者。


「あれ?私と会うの、初めてやんなぁ?何処から来たん?」


と話しかけられたので、


「あ、岡山です」


と答えると、


「岡山かぁ。政治家でいうと、誰がおるん?」


「そうですねぇ、逢沢一郎氏とか、平沼赳夫氏とか…」

「逢沢に平沼かぁ~。保守的な県やなぁ~」


と言われた。如何にも「大阪のおばちゃん」という感じの口調だった。


 翌日はチャールズ・オーヴァービー(オハイオ大学名誉教授、第9条の会代表)の講演会。主催は9条連…って、又革マル派系かい!今度は怪しまれない様に、警戒しながら参加する。


 オーヴァービーはアンクル・サム(星柄のシルクハットを被った、アメリカ政府を擬人化した白人男性)の姿で、


「9条連を改憲阻止運動から排除した九条の会は、非常にけしからん!市民運動で、特定の団体を排除する様な事はあってはならない!」


と、九条の会を批判していた。九条の会側は、「暴力主義的なセクトと関わりのある団体とは共闘しない」という方針を掲げていた。其の方針に9条連は激怒し、オーヴァービーを通じて「排除の論理だ」として批判させていたという事である。そりゃ、革マル派との関係を断ち切らないと、他の団体は嫌がるじゃろ…。


 1泊2日だが、濃い大阪の旅を過ごした。


◎マルクス主義同志会


 マルクス主義同志会という団体が、マルクスの「資本論」についての勉強会を開催すると団体のホームページで告知をしていた。丁度東京での用事と被る日程だったので、参加してみる事にした。


 マルクス主義同志会は、源流を辿ると共産主義者同盟共産主義の旗派に迄遡る。共産主義の旗派が全国社会科学研究会(全国社研)を経て、マルクス主義労働者同盟(マル労同)、社会主義労働者党(社労党)と名称変更。衆院選や参院選に出るも落選し、2002年に「党としての実態を欠く」として、サークルに改組した物が同志会である。同志会はソ連や中国を国家資本主義(国営の特殊な資本主義)と規定する等、独自の理論を掲げていた。


 学習会の参加者は数人。環境経済学を専攻してるという大学院生も参加していた。若い参加者もいるんだな…。講師は同志会代表である林紘義。共産主義の旗派創立以来、長らく組織の頂点に立ち続けている人物である。先ず最初に林に、


「あんた、何に興味関心があるんだ?」


と聞かれたので、


「自分が1番興味関心を持ってるのは、憲法ですかねぇ…」


と答えると、


「下らん!社会の土台は経済だ!経済が分らない癖に、上部構造である法律なんか学んだって何の意味も無いんだ!」


と一蹴されてしまった。何だかなぁ…。


 資本論や経済について、難しい講義が続く…。時々時事的なトピックについて話をしようとしても、


「其の話題に一体何の意味があるんだ!」


と一喝され、筆者は黙らざるを得なくなってしまった。キツい…。orz


 講義内容が非常に難しく、言いたい事も言わせてもらえなかった為、学習会は何となく消化不良に感じてしまった。


 後に、同志会は「政党を再建する」と宣言して解散。新たに「労働の解放をめざす労働者党」を結党し、2017年衆院選と2019年参院選に候補者を立てたが、全員落選している。


◎ローターアクトクラブ


 ローターアクトクラブとは何ぞや?ロータリークラブなら聞いた事がある人もいるだろう。そう、ライオンズクラブやキワニスクラブ、ワイズメンズクラブ等と並ぶ、資産家の親睦団体である。其の青年部的存在がローターアクトクラブである。


 ローターアクトクラブは、18歳~30歳迄入れる親睦と社会奉仕を目的とした団体で、決まった地域のロータリークラブの指導・援助を受けて活動している。大学を拠点として活動している事もある。


 筆者もどんな物かと思い、入会してみる事にした。会員はローターアクターとも呼ばれる。因みに、ロータリークラブの会員はロータリアンと呼ばれる。


 会員は定例会の時、持ち回りで自身の社会経験や得意分野等について講話をする事になっている。自分も何かのテーマで喋ってくれという事になったので、日本国憲法について語る事にした。


 杉原泰雄(一橋大学名誉教授)の「憲法読本」(岩波ジュニア新書)を参考に拙いレジュメを作り、拙い講話をした。何とか講話が終わり、「勉強になった」等の感想を貰ったが、1人だけ憮然とした表情を浮かべてる人がいた。クラブを指導する立場にあるロータリアンで、弁護士の人である。


「今日の君の講話は感心せんなぁ!内容に随分偏りがあるじゃないか!」


え!?そりゃあ講話の経験なんかゼロだから、決して上手くはなかったとしても、内容的には基本を押さえて、更に中高生向けに書かれてるジュニア新書を使って、なるべく分かりやすくする努力はしたつもりなんだけどなぁ…。キツい御叱りを受けて、少し凹んでしまった。


「参考文献に出てきた杉原っていう人物は、反日左翼じゃないか!其に、岩波書店も朝日新聞と並ぶ反日左翼の出版社じゃないか!此んな物を読んでたらイカンぞ!八木秀次先生(麗沢大学教授)とか百地章先生(日本大学教授)とか、憲法学ならもっと客観的見地を持ってて有能な先生の本を読まなきゃダメじゃないか!」


八木先生、百地先生、かぁ…。此又随分個性的というか、ネトウヨ的な学者を挙げてくるなぁ…。彼等も又随分偏ってる様に思えてならんのだが…。


「特に酷かったのは、天皇陛下について君が語った事だ!天皇制という言葉は左翼用語だ!陛下や皇室は制度じゃないし、他国の王族とは根本的に違う!陛下は世界で唯一、天より下り、万世一系!男系でY遺伝子を代々受け継いでいるんだ!君が主張する様に、陛下の地位が只の制度だとしたら、女性でも女系でも誰でもなれるという事になってしまうじゃないか!決してそういう物じゃないんだ!」


性染色体のXX遺伝子とXY遺伝子って、性別を決めるだけの物であって、血統には何ら影響を及ぼしてないというのが生物学の通説なんだけどなぁ…。弁護士先生は法律学の専門家ではあるかもしれんけど、生物学の専門家ではないんだから、専門外の領域には口出しをしない方が…。ましてや俗説を振りかざすなんて言語道断。


 とはいえ、論争して波風を立てるのもどうかと思い、自分は「分かりました。勉強させて頂きます」と繰り返し、弁護士先生の怒りが収まるのを待ち続けた。


 講話では痛い目に遭ったが、講話の後は食事会があったり、休日にはスポーツ大会もあったりと、其なりに会員生活を楽しんだのであった。


◎日本青年奉仕協会(JYVA)


 日本青年奉仕協会(JYVA、ジヴァ)という団体が、「青年長期ボランティア計画」(ボランティア365)経験者で政治家を目指す若者による講演会を開催するという告知を出した。政治家志望者の話とあらば是非聞いてみたいと思い、潜入する事とした。


 JYVAは1967年、末次一郎等を中心として設立。末次は日本健青会、青少年育成国民会議、新樹会、修養団、核兵器禁止平和建設国民会議(核禁会議)等の右派社会運動・官製運動に関わる団体に多数関わってきており、更にJICAの青年海外協力隊発足にも強く関わってきた人物である。青少年育成国民会議は有害コミック規制運動、修養団は合宿形式の水垢離(水行)等で知られ、核禁会議は旧民社党(現・国民民主党)系の反核団体として知られる。国民精神総動員運動の戦後版を作り上げる為に大きく動いた人物と見て良いだろう。


 JYVAの大きな事業の1つである「ボランティア365」は、30歳迄の若者を日本全国のヴォランティア団体に1年間派遣し、有償でヴォランティアに従事させるという事業である。OBOG組織として、「風人の会」がある。実は筆者もフルタイムでヴォランティアに従事したいと思い出願した事があるが、敢え無く不採用となったという苦い経験を持つ。


 会場に着くと、筆者を面接したスタッフが現れ、「何故御前が此処にいる!」という怪訝そうな表情で筆者を見た。然し怯まず、


「講演のテーマに非常に強い興味関心があったので、是非参加したいと思って参りました」


と丁寧に伝えた。すると、


「そうか、まあ、じゃあ…」


と、渋々会場に入れてくれた。


 講師は2人。何方も男性で、民主党から出馬予定という。2人は口を揃えて、


「今の日本に必要なのは、強力な保守2大政党制。自民党と民主党が数年単位で、互いに政権交代し合う状況を作らねばならない」


「経済政策、労働政策、福祉政策を一気に解決する方法がある。其は、斜陽産業である土木建築事業を介護福祉事業に業態替えさせる事。淘汰すべき事業の法人税を高くして、増やすべき事業の法人税を安くすれば、直ぐ実現出来る」


等と主張。随分強引で乱暴な主張だなぁ…。何か余り彼等には議員になってもらいたくないと思ってしまった。


 其の後、JYVAは財政難の為2009年に自己破産し、解散した。


◎外山恒一&思想運動


 筆者の地元で、外山恒一が飲み会を開催するという情報を聞きつけた。外山といえば、アナキストからファシストに転向し、2007年都知事選で中指を立てて絶叫する独特な政見放送で一世を風靡した人物である。参加しない訳にはいかないと思い、参加を即時申し込んだ。


 参加は数名。参加者には、文芸評論家の鎌田哲哉という人物もいた。予備校講師をしながら各種雑誌に評論を寄稿したり、映画祭を開催したりしているという。鎌田に挨拶をすると、「思想運動」という新聞をくれた。此は!新左翼団体「活動家集団思想運動」の機関紙ではないか!早速関係を問うと、


「まあ、『思想運動』に全面的に賛同してるわけじゃないけど、本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)という所の講師をやってる縁でね…」


と言われた。後々知るが、HOWSは文芸系同人誌即売会「文学フリマ」で広告を配布していた団体である。あの団体、「思想運動」と関りがあったんだ…。


 会場は民主党所属の市議が経営しているバー。政治や選挙、社会運動等、様々な話で花が咲いた。


「今主に取り組んでるのは、右からの脱原発運動。此を足掛かりに、あらゆる社会運動を右翼勢力から展開する」


「選挙はあくまでも自分の仲間を増やす為の手段。当選は最初から考えてない。ま、当選したらしたで、議員として議会を引っ搔き回してぶち壊してやろうと思うけどね」


「選挙では他の候補者とすれ違った時に『健闘を祈ります!』というのが通例だけど、スターリン主義者の共産党は全員落選させねばならんから『健闘を祈りません!』と怒鳴りつけてやった!」


「オウム真理教にも褒めるべき所はある!其は共産党の弁護士・坂本堤を殺した事!特に乳児の子供も殺害したのが非常に素晴らしい!」


色々とエグい…。容赦無ぇなぁ……。orz


 2次会は駅前の居酒屋に移動して。筆者がホルモン炒めを頼もうとしたら、外山は、


「俺、内臓系の料理嫌いなんだよ。別の物頼んで」


とストップを掛けられた。武闘派のファシストなのに、何かカワイいな!其処でも引き続き語らう。


 更に3次会は、駅前の24時間営業の饂飩屋で。アルコールを一切飲まない筆者以外はベロベロの状態だったが、楽しい時間を過ごす事が出来た。


 3次会も御開きになり、解散となった時、外山と鎌田には筆者の同人誌を寄贈した。外山は彼が編集する冊子「人民の敵」をくれた。外山は自身が運転する軽ワゴンの街宣車に移動し、車中泊をしていた。


 後日、外山と鎌田に筆者の同人誌の感想を聞こうと電話を掛けてみたが、外山とは連絡が付かず、鎌田からは、


「下らん!もう2度と連絡してくるな!」


と怒鳴られて電話を切られた。其んなに怒らんでも…。orz


◎民主主義的社会主義運動(MDS)


 筆者の居住地の雑貨カフェで、月1回「政治を語る会」を催していた人がいた。面白そうだと思い参加してみると、


「私、『民主主義的社会主義活動』という団体で活動してるんです!」


と名乗る若い女性がいた。なぬ!?「民主主義的社会主義活動」って、若しや民主主義的社会主義運動(MDS)の事か!?然し、自分の所属党派の名前位間違えずに言えよ…。


 MDSは2000年に結成された政治団体。源流は1960年代に活動していた親ソ連派「日本共産党(日本のこえ)」(こえ派)と共闘関係にあった構造改革派系学生団体、民主主義学生同盟(民学同)・民主主義の旗派に迄遡る。民主主義の旗派が現代政治研究会(現政研)を経て、MDSとなった。MDSは新左翼党派の中では珍しく、民主集中制(民主主義的中央集権制)を排除し、組織に留まりながら反対意見を表明し、活動を留保する権利を保障している。又、戦争や紛争において年に軍事力が存在してない事を宣言し、軍事作戦時の損害を避ける事を試みる無防備都市宣言運動等、ユニークな活動も展開している。無防備都市宣言運動の最盛期である2000年代半ば頃には、同時代社から漫画「無防備マンが行く!」(秋元裕美子)も発売されていた。


 カフェの参加者はガチ左翼の彼女を除いて、概ねリベラルな感じの人達だった。其して、カフェの後、彼女がMDS主催の学習会のビラを配ってきた。此は是非とも潜入せねば!


 学習会は、沖縄の基地問題に関する物だった。講師の報告や意見交換等が行なわれ、更に偶然古い知人と出会う機会もあり、充実した物だった。


 然し…、自分の所属団体位はちゃんと正式名称を言える様にしとこうなっ!


◎参政党県大会


 参政党の県大会が行われるとの事で、筆者も潜入してみる事にした。参加費は2千円。高ぇっ!党員は党費の額に応じて割引になるらしい。独特なシステムだな…。金集めが上手そうだ。


 会場はほぼ満席。講師は吉野敏明。通称「よしりん」。漫画家の小林よしのりと一緒かい!本職は歯科医師で、党運営の中枢を担う「ボードメンバー」の1人だという。講演が始まる…。


「ワクチンは病原菌を材料にしてます!病原菌を体内に入れたらどうなります!?病気になるに決まってるでしょう!此の様に、ワクチンは100%毒物です!医療の専門家である私が言うんだから間違い無い!」


ひえぇ~!歯科医師免許を悪用したトンデモ理論だ!コッホやパスツール等、免疫学の成果を勝手に全否定されてたまるか!吉野は更に饒舌に語る…。


「小麦粉、砂糖、植物油、乳製品は4つの毒です!日本は古来米食文化の国でした!小麦を食べ始めたのは戦後の事です!だから戦後に癌が蔓延し始めたのです!」


「第2次世界大戦時の、大日本帝国時代の栄光の日本を、大和魂で取り戻しましょう!」


出鱈目の陰謀論+復古主義かよ!もう最悪だなぁ…。


 講演の終わりに、


「今から、参政党マーチという曲を流します!私の作詞作曲です!聴いて下さい!」


吉野は作詞作曲も出来るのか。其ゃ又随分器用だな…。参政党マーチが流れる。


「1!2!参政党!1!2!参政党!1!2!参政党!参政党!DIY!」


余りにベタな歌詞にズッコケてしまった。


 講演の後は車座集会。参加者が其々4~5人のグループに分かれ、対話をする。


「私は70歳になりますが、今迄はずっと自民党で活動してきました!然し、騙されました!もう私は、残りの人生の全てを参政党に捧げます!」


あ~、随分イタい人だなぁ…。


「私は教師ですが、古事記や日本書紀は反日文書です!ですから、此等の本には正しい内容の文章に書き換えて、子供に読み聞かせをしてます!」


ひえぇ~っ!捏造か!!其んな人物が教員をやってるとは、頭痛い…。色々とイタい人ばかりに囲まれて、頭がクラクラしてしまった。


 其の後、参政党は2022年参院選、2024年衆院選、2025年参院選に出馬。デマや誹謗中傷を含み、差別排外主義や歴史修正主義を煽る極めて右翼的な政策と、SNSを駆使したネット戦略等により大幅に躍進する事となった。


 一方、吉野は参政党を離党し、同じく反ワクチン陰謀論者の弁護士、木原功仁哉等と共に新たな反ワクチン陰謀論団体・日本誠真会を結党。2025年参院選に出馬しているが、落選している。


◎新党くにもり街頭演説


 2022年参院選。此の選挙は維新政党新風、幸福実現党、参政党、ごぼうの党、日本第一党等、様々な右翼政党が出馬する選挙だった。其んな右翼政党の1つに、新党くにもりという所があった。


 くにもりは水島総率いる右翼系TVチャンネル「日本文化チャンネル桜」や、自民党や田母神俊雄等を支援する右翼系政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」等を母体とする。初代代表の本間奈々は元総務省官僚で、自民党推薦で札幌市長選に出馬するも落選した経験がある。市長選落選後は、和歌山県を拠点に政治活動をしている。


 筆者が偶々駅前を通ると、本間が絶叫調で演説をしていた。


「私は自民党を捨てました!税は財源ではありません!国債の大量発行で、大規模な財政出動、積極財政を実現しましょう!」


 政策はれいわ新選組や参政党等に似てるな。


 本間に続いてマイクを握ったのは、党幹事長の三輪和雄。右翼学生運動から民社党を経て、現在は産経新聞及び系列雑誌「正論」の読者会的組織である「日本世論の会」「正論の会」代表である。


 三輪の演説を聞いていると、運動員の老人が話しかけてきた。


「君君、若し良かったら、連絡先を教えてくれんかね?」


いきなりだなぁ。然し、情報収集にはある程度個人情報を晒す事も必要。名前と電話番号を伝えた。暫く其の老人と雑談をする。


「今回の選挙はくにもりだけじゃなくて、新風、幸福、参政、ごぼう、第一党と、右派政党が多いですね。ライヴァルが多いと色々大変だと思いますが…」


「参政党ねぇ。我々と違って、あいつらは政策が皆無だからねぇ」


いやいや、似た様なもんじゃろ。違うのは人員と名前位だっつーの。


 翌日、見知らぬ番号から電話が掛かってきた。出てみると、


「あー、君君。昨日街頭演説で会った者だがね。今日、○○市(筆者の居住地の隣の県)で街頭演説があるから、今から手伝いに来てくれ」

と言われた。今からって、新幹線じゃねぇと間に合わん時間じゃろ!然も言い方もメチャクチャ偉そうで失礼だし!何なんだ!!勿論断った。


 後に本間は、代表だったにも拘らずくにもりを除名され、NHK党に移籍して選挙に出馬するも再び落選。其の儘和歌山での政治活動を終了したという噂である。くにもり自体は大阪等で、核武装等を公約として細々と選挙活動を続けている。


◎れいわ・八幡愛おしゃべり会


 岡山県に住んでいた頃、れいわ新選組の八幡愛のおしゃべり会が開催された。代表の山本太郎以外の党員が、どんな主張をするのが興味が湧き、潜入する事とした。


 八幡は1987年生まれ。「ハチ・ハチ北ガールズ」メンバーとしてアイドルデビュー。2012年に脱原発デモのレポーターを務めた事から政治に興味を持ち始め、竹内義和(作家、ラジオ「誠のサイキック青年団」パーソナリティ)のネットラジオ番組でパーソナリティとなる。2020年にれいわ新選組の衆院候補となった。


 会は初っ端から、幹事長・高井崇志への批判で相次いだ。大半の参加者から、


「高井は議員時代に不祥事を起こした挙句、岡山からも立憲民主党からも逃亡した。れいわの政策は大いに支持出来るが、高井の存在だけは何とかしてほしい。高井を役職から外さないと、とても投票する気が起こらない」


と、厳しい意見が続出した。八幡は、


「山本代表は高井幹事長の政策立案能力を非常に高く買っています。私も山本代表を信じて付いていきたいです」


と答えた。然し、多くの参加者は釈然としない様子だった。


 筆者は、


「選挙制度について御意見を伺いたいです。小選挙区制は死票が多く、民主的な制度ではないと考えます。是非とも廃止してほしいと思いますが、如何でしょうか?」


と質問した。八幡は、


「小選挙区制は確かに無くしたいですね。私は中選挙区制がベストだと思います。只、全員が私と同じ主張とは限りません。各議員・党員で政策が違うのがれいわの強みです」


と答えた。


 おしゃべり会の後は、八幡との写真撮影会があった。筆者も八幡の写真を撮って帰った。

 尚、八幡と高井は共に2024年衆院選で当選を果たしている。


◎れいわ・大島九州男おしゃべり会


 筆者の居住地で、れいわ新選組の参院議員、大島九州男のおしゃべり会が開催されるとの事で、潜入する事とした。


 大島は其の名の通り、九州は福岡県直方市出身。塾経営、直方市議を経て2007年参院選で参院議員となる。其の間、民主党、民進党、国民民主党を経て、2020年にれいわ新選組所属となる。又、2019年参院選、2021年衆院選、2022年参院選で落選するも、2022年参院選で当選していた水道橋博士(芸人、浅草キッド)の議員辞職により、繰上当選となった。処が、山本太郎代表は議員を1年で辞職させ、名簿登載候補者全員を議員の職に就ける「れいわローテーション」を発表、事実上大島を1年で議員辞職させる事を示唆した。然し、大島は辞職を固辞し、「ローテーション」とはならなかった。


 講演は主に、議員の品格とは何かという物を強く訴える物だった。


「大石(晃子)君達には、普段から『君達は議員なんだから、活動家みたいなみっともない事はするな!』と強く呼びかけている。議員と活動家では役割が根本的に違う。議員は特別な品位や所作が求められている」


何と、名指しで自党の同僚議員を批判とは。此は内輪揉めと見るべきか、将又「批判の自由があり、党内民主主義がある」というアピールと見るべきか…。然し、其の事以外は全体的に柔和な語り口で、穏やかな印象を持たせる物だった。又、議員経験が長い事もあってか、講演活動も慣れている感じがした。


 只、個人的には活動家っぽさや泥臭さを感じて、永田町臭さを感じさせない議員で固められてるのがれいわの持ち味だと思うんだよなぁ…。大島みたいに上品な議員ばかりだと、他党との差別化が難しくなってしまう様に思われる。とはいえ、大島には他党にいた経験や、永田町の常識を弁えている議員として、れいわと他党とのパイプ役になり得る人材であるとも言えよう。


◎参政党支持者の「謎の飲み会」


 岡山県在住時の話。知人から、「謎の飲み会」なる物に誘われた。筆者はアルコールを全く飲めないが、ノンアル飲料で摘みを食う事は大好きなので、誘いに乗る事にした。


 会場は駅前の御洒落な居酒屋。貸し切りで、30人位は入っていた。主催の女性が開口一番、


「私達は反ワクチンで繋がった仲間です!よしりんに連なる同志です!!」


と絶叫した。反ワクチン!?よしりん!?!?あ~っ!参政党支持者の集まりかぁ~~!!!此処で言う「よしりん」とは、漫画家の小林よしのりではなく、参政党幹部で歯科医師の吉野敏明の事である。


 其々自己紹介に入る。筆者は、


「初参加なので未だ何が何だかよく分りませんが、勉強させて頂こうと思います。宜しく御願い致します」


と挨拶した。筆者の次に挨拶したのは浦上雅彦。何と、岡山市長選に出馬表明してる元岡山市議会議長で、自民党岡山県連の重鎮でもある人物じゃねぇか!浦上は、


「此処にいる皆さんの意見をしっかり受け止め、市政にチャレンジしていきたい!」


と強く訴えた。オイオイ!岡山市を反ワクチン自治体にする気か!?其して、他の参加者も筆者を除いて反ワクチン陰謀論者ばかりであった。


 帰りは自宅迄車で送ってくれるという人がいたので、御言葉に甘える事とした。車の中で、


「どうして謎の飲み会に参加しようと思ったの?」


と聞かれたので、


「いや、知り合いの誘いで…」


と答えると、


「でも、やっぱり参政党やよしりんの事を正しいと思ってるから、参加しようと思ったんでしょ?」


と言われたので、


「はぁ、まぁ…」


と言葉を濁した。いやいやいや!参政党もよしりんも無理無理無理!orz


 其の後、浦上は岡山市長選に2回出馬するも、どちらも落選している。


◎フェア党・大西恒樹おしゃべり会


 筆者の居住地で、大西恒樹のおしゃべり会が開催されるという事で、潜入する事とした。


 大西は長野県出身。上智大学外国語学部卒業後、JPモルガン銀行為替トレーダーを経て、総理大臣を目指して政治団体・日本一丸を設立し、政治活動を開始。2015年に、党名をフェア党に改名。其の後、れいわ新選組に加入した。然し、「命の選別をしなければならない。其の選択をするのが政治の仕事」と発言し、優生思想や障害者・高齢者差別である等と批判され、れいわを除籍された。


 大西の主な政策は、経済はれいわと同じく赤字国債大量発行による積極財政、外交は「丸腰宣言」発表により非武装中立の実現が2枚看板である。金融資本主義を批判し、公正な社会の実現を目指すというのがフェア党の理念との事である。資本主義の乗り越えという主張ならば、社会主義への接近という考えがあるのかといえばそうでもなく、特に共産党に対しては、


「彼等は野党の得票を削ぎ、自民党政治を延命させるのを目的に存在している団体。1番に潰さねばならない勢力」


と猛批判していた。又も其の反共構文か…。其を言っちまったら、此の人も含めて全ての泡沫候補は自民党延命の為に活動してる存在という事になっちまうじゃねぇか。orz


 其の後、大西は反ワクチンを掲げる医師、内海聡の政党・無所属連合の共同代表に就任。2025年参院選に出馬するも、落選している。


◎市民がつくる政治の会・内海聡


 市民がつくる政治の会という団体が、政治資金パーティの一環で内海聡のオンライン会議を開催するという事で、潜入する事とした。


 市民がつくる政治の会は、内海率いる反ワクチンを掲げる政治団体。旧称は日本母親連盟であり、市民をつなぐ党という政党も立ち上げている。れいわ新選組代表の山本太郎からは「カルトである」と猛烈に批判されている。関連団体として、市民をつなぐ党がある。


 主催者は市民がつくる政治の会の県支部代表。 パーティの料金は1500円だったが、市民がつくる政治の会に入会(会費無料)すると500円に割引されるというので、迷わず入った。


 オンライン会議はzoomを使い、全国の支部と繋いで開催。ワクチンや緊急事態条項に反対し、資本主義でも社会主義でもない新経済体制の確立等が訴えられた。「ディープステート」等、陰謀論めいた言葉も多用されていた。


 集会の後、会場の近くのカレー屋で懇親会が行なわれた。県支部代表は「有機無農薬の食材を使い、化学調味料を使わない店」とカレー屋の紹介をした。懇親会参加者は主婦や整体師等、様々な人々が参加した。整体師はカレーを食べる時に携帯電話を取り出し、独特のアプリでカレーを撮影していた。筆者が、


「何ですか?其」


と聞くと、整体師は、


「ああ、此は電磁波を除去するアプリ。此のアプリで食べ物を撮影すると、食べ物の電磁波をゼロにする事が出来るんだよ。貴方のも除去してあげよう」


と、筆者のカレーも撮影した。怪し過ぎる…!!!


 其の後、内海は政党・無所属連合を設立。フェア党代表で元れいわ新選組の大西恒樹や元参政党の藤村晃子等を取り込み、2025年参院選に出馬。然し、全員落選している。一方、県支部代表は無所属で市議選に当選。市議をしながら県支部代表を続けている。


◎桃色ゲリラ・増山麗奈


 広島では、毎年長崎と共に原水爆禁止世界大会という催しが行なわれている。筆者が原水爆禁止日本協議会(原水協)が主催する大会に参加した時、ピンクのビキニを着たアーティストが大きな模造紙にイラストを描くパフォーマンスをしていた。


 彼女の名は増山麗奈。画家、映画監督、ジャーナリスト、作家等、様々な肩書を持つパフォーマーである。東京芸術大学美術学部中退後、2000年代前半頃から「桃色ゲリラ」と称し、ピンクのビキニを着たり、キャンバスに母乳を飛ばしたりする等の過激なパフォーマンスで有名となっていた。祖父は日本社会党富山県本部書記長等を務めた増山直太郎。


「今日は娘も連れてきてます!」


 増山のいた方向に目をやると、母親と御揃いのピンクのビキニを着た幼い女児が絵を描いて遊んでいた。何か娘さん、晒し者にされてるみたいで痛々しいなぁ…。見ていて辛かった。orz


 其の後、増山は2016年参院選に社民党から出馬したが、落選した。落選後は参政党等に賛同し、排外主義的主張を強めている。


◎民主社会主義的表現の自由戦士・西形公一


 皆さんは、西形公一(にしがた・きみかず)という人物を御存じだろうか?1990年代から2000年代に掛けて、漫画の表現の自由を巡る社会運動で名を成した人物である。


 西形は東京出身。「『有害コミック』問題を考える会・マンガ部会」メンバーとして、主に漫画における性表現について情報発信をしていた。筆者が西形を知ったのは、1995年のオールジャンル同人誌即売会「スーパーコミックシティ」において、「マンガ防衛同盟」名義でサークル参加していた西形の本を筆者が購入した事が切っ掛けである。西形の本は全サークルの中でも一際政治色が強く、極めて異彩を放っており、非常に興味深い内容だった。当時筆者は「同人誌=2次創作漫画」というイメージを強く抱いていた為、「こんな内容の同人誌もあるんだ!」と強い衝撃を受けた。


 「『有害コミック』問題を考える会・マンガ部会」は、1999年に西形のサークル名と同名の「マンガ防衛同盟」に名称変更。児童買春・児童ポルノ禁止法の審議において「架空のキャラクターの性表現」を規制する動きに反対し、法案修正の為に動いた。其の後、西形は「有害社会環境を問いただす青年会議」メンバーとして青少年有害社会環境対策基本法案(青環法)反対運動や、表現規制反対団体「連絡網AMI」結成等に関わった。


 此の間、1999年に青梅市議選に民主党から出馬したが、落選している。又、民社党青年部を母体とする「民社ユース」の事務局長を務めたり、「民社ユース」の後継団体である「社会主義青年フォーラム」の結成等に関わったりしており、民主社会主義に関する論文も執筆している。


 2015年、西形が筆者の居住地で勉強会を開くとの事で、是非話を聞きたいと思い、参加する事とした。


 当時の西形はインドに深く傾倒しており、特にチャンドラ・ボース(インドの独立運動家、インド国民会議派議長)やインパール作戦等を非常に高く評価しており、民族主義的発言が目立った。又、主催団体の「うぐいすリボン」は自民党と関係が深く、主催者は「表現規制に1番反対してるのは自民党」と発言する等、全体的に保守色が強い内容の集会だった。尚、筆者が西形の本を買っていた事を告げると、非常に喜んでくれた。


 2022年、コミックマーケット(夏コミ)への参加の序でに西形と会う機会を設けた。西形はインド憲法を土台とした日本国憲法改正草案を見せてくれた。内容は保守色の強い物だった。


 其の後も筆者と西形はSNSで交流を続けていたが、ある日筆者は西形から「似非クリスチャンめ!」と罵倒され、SNSをブロックされてしまった。今は動向が分らない状況にある。現在、西形はどうしているのだろう…。


◎藤原ひろのぶとNPO「グッドアース」


 ある日、知人から、


「藤原ひろのぶって知ってる?創価学会系のインフルエンサーで、ママ活っぽい事やってる怪しい奴なんだけど…。ウォッチしてみると面白いかもよ?」


と言われた。藤原ひろのぶ?誰だ其??と思い、調べてみる。


 藤原は大阪出身。創価大学卒業後、一般企業勤務を経て、米屋を立ち上げるが赤字を出して廃業。其の後、ギニアで製氷業を立ち上げる。ギニアで圧倒的な経済格差を目の当たりにし、貧困問題に取り組もうと決意。NPO「グッドアース」を立ち上げ、全国で講演活動をしつつ、バングラディシュでスラム街の子供の食糧支援や、寄宿舎付き学校の建設等を行なっている。著書に「買い物は投票なんだ」「アースおじさん46億歳」(三五館シンシャ)等。ふむ、創価系という点が引っ掛かる以外は、概ね真面目そうな感じだが…。丁度居住地で藤原の講演会があるとの事で、潜入する事とした。


 会場には数十名の人が来ていて、筆者を除けばほぼ女性。参加者層は若い主婦が中心という感じで、子連れの参加者も結構いる。女性参加者の多さが「ママ活」と言われる所以か…。講演開始時間に少し遅れて、藤原が会場に入ってくる。スライド等がセットされ、講演が始まる…。


 講演内容はギニアやバングラディシュ等での活動について、環境保護について、ワクチンやマスクについて(藤原は反ワクチンの立場である)、選挙について、物の考え方について等、多岐に渡った。参加者の子供も巻き込む等、話の仕方は上手いと思った。「二項対立や思考停止をやめよう」等、参考になる話もあったが、「投票に行こう、選挙に行こう」と繰り返し強調する姿から、「此って若しや、彼は将来選挙に出馬するんじゃないかしら…」と筆者は思った。


 其の後、藤原は2025年参院選に、日本維新の会から出馬表明。此のニュースを聞いた時、筆者は「矢張り選挙に出るか!然し維新からとは意外だな…。公明党か参政党からだと思ったのに…」と思った。選挙は次点で落選した。藤原は現在、SNSで繰上当選や次期衆院選出馬を狙う発言をしている。


◎自称「全人類・全宇宙最高最上、全ての神仏を超えた存在」

 ・己様(アーサマ)!


 ある日、岡山市内を歩いていると、黄色い服と黄色い靴の、全身黄色い姿の老人を見かけた。此はっ!若しや1979年都知事選に出馬して落選した、安井けんではなかろうか!思わず筆者は声を掛ける。


「あの、若しかして安井けんさんですか?」


老人は答える。


「よく知っとるなぁ!然し、今の儂は『アーサマ』!『己様(おのれさま)』と書いて『アーサマ』じゃ!」


何と、ドンピシャだった。然し、当時の選挙公報も意味不明だったが、実際の言動も意味不明だなぁ…。


「己様って何すか?」


「全人類・全宇宙で最高最上、全ての神仏を超えた存在。其が儂、己様じゃ!」


電波臭ぇ~っ!想像以上にぶっ飛んでる爺だな!安井は続けて、


「儂を知ってるとは中々見込みのある奴じゃな!此の縁に感謝して、儂に御布施をせい!千円でも2千円でも良いぞ!」


御布施??何を言ってるんだ、此奴???


「あの、御布施ってどういう事ですか?」


「だから、儂に御布施を払うんじゃ!儂に出会えた事に御前は感謝せにゃならんじゃろ!さあ払え!」


ヲイヲイ!要は強請りタカりか!!何で此んな爺に金を払わねばならんのだ!とはいえ、此処で金を払わねば、安井との縁は切れてしまう。泡沫候補ウォッチャーとしては其は非常に拙い。此処はグッと堪えて、千円を払う事とする。


「では千円で…」


「千円か!まあ、此で御前が儂と縁を結びたいという意思があるという事が分ったわい!」


やれやれ、大変な人物に遭遇してしまったなぁ…。


 安井は岡山県出身、岡山市在住。中学校卒業後16歳で上京し、職を転々とした事以外、プロフィールは謎に包まれている。1979年、アイデア黄中党から都知事選に出馬し、5位で落選している。選挙公報は他の著名な泡沫候補の名前を多数列挙した意味不明な物で、政見放送は黄色い燕尾服と黄色いシルクハット姿で現れ、「東京を黄色にする」という意味不明な主張を展開したという。当時からシンボルカラーは黄色だったという事か。


「さあ、今からカラオケに行くぞ!付いて来い!」


「え!?今からですか!?!?…、分りました。行きます!」


現在時刻は20時。そろそろ家に帰るべき時間である。然し、付いて行かねば縁が切れてしまう。此処は行く処迄行くしかない。嗚呼、泡沫候補ウォッチャーの悲しい性…。


 筆者と安井は繁華街のカラオケスナックに到着した。1500円で歌い放題、飲み放題という手頃で良心的な店だ。


「さあ、水野。御前は先ず何を歌う?」


「じゃあ、佐藤健と関俊彦の『ダブルアクション』を…」


と、筆者は「仮面ライダー電王」挿入歌、「ダブルアクション」を歌った。安井は、


「訳の分らん歌じゃのう!儂にも歌わせえ!」


と、同じく「ダブルアクション」を下手糞に歌った。


「御前が好き勝手に歌うなら、今度は儂の好きな歌も歌え!香西かおりの『恋みれん』じゃ!」


知らねぇ曲だ!安井が歌った後に歌わされるが、知らない曲なので右往左往してしまう。安井からは、


「下手糞ーっ!」


と怒鳴られてしまう。知るかーっ!!!其の後、2人で2時間程歌う。全然楽しくない…。


 カラオケが終わりると、


「さあ、儂と2時間カラオケが出来た事への感謝を示せ!御布施じゃ!」


と、又金をせびってくる。筆者は渋々千円払う。


「おい水野、明日は暇か?ならば儂の家に来い!有難い物を見せてやる!カラオケにも付き合わせてやるぞ~!」


ひえ~っ!!!又金をせびられるのか!然し、有難い物というのが何かも気になった。丁度翌日は時間があるし、家に行く事にした。


 翌日。バスで安井の自宅の最寄りの場所に着き、電話で一報入れる。


「着いたか!目印に従って来てくれ!」


と言われる。ランドマークを確認しながら、安井の家に辿り着いた。ハート形の窓が入ったボロ屋である。


「おう、来たか!此の窓を見ろ!儂が発明したハート窓じゃ!有難いじゃろ!」


奇抜だ…。更に「ラーメン大好き博士」等の意味不明な看板や、全ページがラミネート加工された「著書」等、様々な物を見せられた。何もかも呆気に取られるしかなかった。


 2階に上がると、老齢の女性が2人いた。安井と御揃いの黄色い服を着ている。安井に無償で奉仕しているヴォランティアなのだという。


「何故けんさんのヴォランティアをしてるんですか?」


と聞くと、


「いやぁ~、安井さんってやっぱり最高の存在なのよ~。色々考え方をしっかり持っておられるし~」


此の人達も大丈夫か?騙されてるのが分らんか?大変だな…。2人のうち1人は、世界救世教の信者でもあるらしい。お!カルトウォッチャーとしては、世界救世教も潜入体験してみたいと思ってた処だ。早速道場に案内してもらう約束を取り付けた。


「おい水野!大事な物を忘れとるぞ!御布施はどうした!」


又か!いい加減嫌になってきたが、其でもグッと堪えて千円を払う。序でに、筆者が此迄書いてきた同人誌を渡す。


「けんさん。自分は政治に関する同人誌も書いてまして、特に自分の1番の興味関心は泡沫候補です。けんさんも都知事選の泡沫候補でしたよね」


「おう!よく知ってるな!あの時儂は5番目だった!つまり、あの時の段階で既に東京で5番目に偉い存在だったんじゃ!其が今は全宇宙で最高最上の存在じゃ!」

ひえぇ~っ!!!此のポジティヴ志向、自己肯定感の塊って、どうやったら此んなトンデモなモンスターになれるんだ!


「折角本を書いてるなら、儂を褒め称える本を書け。其を各種テレビ局や新聞社、書店等に送って、素晴らしい儂の存在を各方面でアピールしろ。勿論、本のページは水に濡れても大丈夫な様に、全部ラミネート加工するんじゃぞ」


やってられっか!此んな褒める所が1つも無い爺を褒め称える提灯本なんて、死んでも書けるか!安井の話は聞けば聞く程呆れてしまう。


「儂は16歳で上京後、様々なビジネスの現場にいた。其の間、離婚や家族親族との絶縁等、色々あった。若い頃は80代の老女とセックスをして、イカせた事もあったな。まあ、儂は武勇伝には事欠かん男じゃ」


おい!今、サラッと気持ち悪い事言ったな!


「よし、此から野菜を取りに行く。序でに午後からはカラオケじゃ。付いて来い!」


と、内壁の剥がれたボロボロの軽ワゴンに乗せられる。何か鍵が壊れてるんだが!ホントに車検通してるのか!?!?!?安井は勢いよく車を運転していく。物凄いスピードだ!其して赤信号に差し掛かると、直進と右折なら車が通ってなければ無視して進んでしまい、左折なら横の駐車場等を通り抜けて進んでしまう等、傍若無人な運転だった。


「けんさん!信号無視は危ないですよ!」


「儂は此の世で1番偉い存在なんじゃから、信号なんて守らんでええんじゃ!」


ヲイ!其であんたが事故死するのは勝手だが、筆者達を巻き込むんじゃねぇっ!

 キャベツ畑に着く。安井が所有している畑ではない様で、畑仕事をしている人がいた。


「お~い、此のキャベツ貰うぞ。5、6玉程くれや」


「おう、いいよ」


え!農家さん、安井に無料でキャベツあげてしまうの!?!?不思議にも、農家の男性は安井の物乞いを全く不快に思ってない様子だった。キャベツを貰った後、別の農家の蜜柑畑に着く。其処でも安井は、


「此の蜜柑、美味そうだな。少しくれや」


と言うと、農家の人は、

「いいよ。持って行きな」


と安井の物乞いを快諾していた。謎だ…。


「けんさん、何で農家の人はけんさんに物をくれるんですか?」


と聞くと、


「そりゃぁ、儂が最高最上の存在だからじゃ!」


と自信満々に答えた。う~む、何か怖い…。


 昼の12時頃、カラオケ会場に着く。昔懐かしいカラオケ喫茶だ。御客は筆者と安井以外にもいる。ほぼ満席で、盛況だ。


 他の客は、主に演歌を気持ちよく歌っていた。安井も女性歌手の演歌を歌っていた。筆者は演歌を殆ど知らないので、好き勝手に歌わせてもらった。只、客層に合わせて懐メロを中心に選曲する様配慮した。食事も会場で出来たので、海鮮ちゃんぽん等を食べた。


 長丁場のカラオケは20時迄続いた。8時間も歌うと、もう声を出すのも大変な状態になっており、体力もかなり消耗した。カラオケの代金は5千円。高ぇ…。此はカラオケ喫茶では相場なのだろうか、其ともやっぱ安井への御布施も含んでいたのだろうか…。


 バスも無い時間になっていたので、安井に駅迄送ってもらい、21時に解放された。心身共に擦り減ってクタクタだった。


 今後直接会っても御布施を強奪されるだけで、筆者が得る物は何も無いと思い、直接会うのはやめた。暫く電話やショートメッセージで連絡を取り合ってたが、其も今ではやらなくなった。


 安井は今でも道行く人に声を掛け、御布施を強要して生活しているという。うっかり払ってしまわない様、要注意だ!!!


◎日本熊森協会


 筆者の居住地の公共施設で、日本熊森協会なる団体の講演会のチラシを見つけた。知人に見せると、「参政党に近い反社会的団体。こんな団体が地元で講演をするなんて由々しき事態」と酷評した。参政党に近いと聞いて俄然興味が湧き、潜入することに決めた。


 会場には100人前後の参加者がいた。講師は初代会長で、現・名誉会長の森山まり子。物理学を専攻する、元中学校理科教師との事である。講演が始まる…。


「熊は本来草食性に近い雑食動物です!人が手を出さない限りは、絶対に襲い掛かってきません!」


「日本は神道国家です!江戸時代迄は、其の伝統文化がキッチリ守られていました!処が、明治時代に其が壊されました!何が壊したか!西洋文明、キリスト教、其して、科学技術です!」


ひえぇ~っ!バリバリの復古主義と排外主義!其して反科学論!いきなりトンデモ論の展開に面食らってしまう。熊は肉食性が強い動物だから、人を襲わないなんてのも全く根拠が無いし…。更に、


「太陽光発電、風力発電等、再生エネルギーは百害あって一利無し!電力不足をどうするかなんて話が出てきますが、もう電気を使うのはやめましょう!贅沢はやめましょう!」


今度は極端な禁欲と自然回帰かぁ…。ホントに此の人、理科教師だったのかしら。orz


 講演には、地元の市議も数人来ていた。単なる人脈作りの為なのか、其とも本気で此の団体の活動方針に賛同してしまった人なのか…。


 講演の終了後、参政党支持者の知人が参加しており、筆者の姿を発見するなりダッシュで駆け寄ってきて話しかけてきた。


「今日は!水野さんって、生長の家の人だったんですか!?」


何っ!?!?何故に唐突に生長の家!?!?!?筆者は困惑しながら、


「いえ、自分は勿論、知人にも生長の家の関係者なんていませんけど…」


と答える。すると知人は、


「そうなんですか!水野さんの隣の人、生長の家の人ですよ!てっきり貴方も信者なのかと思った!」


いやいやいや!自分はキリスト教だから(注:筆者はプロテスタントのクリスチャンである)!ましてや日本会議に通ずるカルトの生長の家なんて信仰する訳無ぇだろっつーの!


 更に知人は、


「いやぁ~、中国ってホントに酷いですよねぇ~。日本が侵略されちゃいますよねぇ~」


と、只管陰謀論を語っていた。


 其して、知人からLINEのID交換と、知人が入っているグループチャットへの入会を迫られた。半分渋々、半分「アヤシい情報がバンバン収集出来るぞ!」というワクワク感を持ちながら交換した。早速、グループチャットにはレイキ(霊気)ヒーリング等を開催するマルシェの告知が貼られていた。


 「人工的な森林の伐採と広葉樹の植林で、循環型の山林を取り戻す」という一見まともそうな活動も展開しているが、其でも矢張り狩猟を行なう団体や、狩猟が行なわれた自治体の関係者に圧力を掛ける様な活動は頂けない。今後の動向を注視していきたい。


◎米子市長選でマンツーマン演説会!


 2025年、鳥取県西部の中心都市にして山陰随一の商都である米子市において、市長選が行なわれた。当初は現職市長と米子市選挙区選出の保守系県議の一騎打ちと思われたが、告示直前に出馬表明した人がいた。彼の名は門脇由。元漫画家で、現在は自動車教習所職員だという。此はしょむ系候補の御出ましだ!と思い、彼の事を詳しく調べる事とした。


 門脇は鳥取県大山町出身。青山学院大学文学部日本文学科卒業後、漫画家としてビッグコミックオリジナル増刊号に「雪と花」(小学館第64回新人コミック大賞青年部入選作)を連載。漫画家休業後は、米子市で自動車教習所職員を務めている。石丸伸二(元安芸高田市長)の影響を受け、市長選への出馬を決意し、ネットを駆使した選挙活動を展開するという。主な公約は、米子駅前の開発の中止、市民税減税、義務教育と保育料の無償化、出産育児支援金として百万円の支給等である。今回の市長選での主な争点である市庁舎の移転については、現状維持(借地である市庁舎土地の買い上げを含む)と移転の何方が安いかを試算して検討するという事である。因みに現職市長は借地買い上げによる現状維持、県議は市有地に立っているショッピングモール内に移転するという公約を掲げている。


 漫画「雪と花」は、幼くして亡くなった妹の遺志を受け継ぎ、プロ棋士になるべく奨励会に入った少年を描いた成長物語で、ネットでのレヴューでは「独特の絵柄」「昭和の匂いがする」「貸本漫画の味がする。久し振りに感動した」等、作風の古さが指摘されつつも、其が寧ろ好意的、肯定的に評価されていた。中には作中の将棋の盤面を再現し、チェックしているサイトもあった。


 選挙戦が始まり、選挙公報が公開された。門脇の公報には、街頭演説と個人演説会の日程が明記されている。此は潜入せねば!日程調整し、潜入する事とした。


 街頭演説&個人演説会は木・金・土の3日間。筆者は投票日前日の土曜日に訪れる事とした。先ずは米子駅前で街頭演説。演説が始まるが、人通りが無い訳ではないものの、立ち止まって聞いてる人は筆者1人だけ。「誰か自分以外の聴衆は現れないかな…」と思いながら聞く。後は、地元紙の日本海新聞の記者が取材に来ていた。演説が終わり、門脇本人から、


「御聞き下さいまして、有難う御座いました」


と声を掛けられ、恐縮してしまった。又、日本海新聞の記者からも取材を受けた。


 個人演説会の時間が近付いてきたので、会場の貸会議室へ移動。筆者が着き、門脇達が着き、日本海新聞と山陰中央新報(鳥取県の隣、島根県の地方紙)の記者が着く。然し、演説会の開始時間になるも、又も聴衆は筆者1人だけ…。又マンツーマン演説会かぁ!?何か寂しい…。


 演説会では、主に財政の無駄削減、特に米子駅周辺の歩道整備や公共交通機関充実を伴う開発の阻止を強く訴えていた。其して、「今はもう車社会。歩道やバスの整備より、車社会を受け入れるのが自然な流れ」とも主張した。演説の模様は動画サイトでライヴ配信された。


 質疑応答の時間となる。筆者は、


「財政のムダ削減を強く訴えてましたが、例えば宮城県の様に水道等のインフラ民営化等も御考えですか?」


と質問した。門脇は、


「有効な手段となるならば当然検討に値しますが、生活にも関わる事なので、先ずは慎重に検討したいですね」


と答えた。


 演説会が終わり、暫く談笑する。島根県から来た事を告げると、


「島根からですか!態々有難う御座います!」


と御礼を言われた。


「島根は良い場所ですねぇ。松江城や出雲大社等、観光資源が沢山あって。米子はそういう売りになる物が何も無いですから」


と門脇は言うが、筆者は、


「いやいや、米子は御店や買い物スポットが沢山あって、島根の人は羨ましがってますよ。山陰で1番の商都なのですから、どうか自信を持って下さい」


と答えた。又、筆者は門脇の漫画家としての活動についてもどうしても聞きたくなった。


「ネットで調べたんですが、『雪と花』という将棋漫画を連載されてましたよね。ネットでは結構評判が良かったですよ」


「有難う御座います」


「絵柄を見ると、抒情的、文学的な作品の様に見えますね」


「そうですね。自分は日本文学が専攻だったので、文学に通ずる作品を描きたかったというのは何処かであったと思います」


「肩書を『元漫画家』とされてますが、活動再開の予定は無いですか?プロとしてもそうですが、例えば同人誌とかでも…」


「今は中々漫画として描きたい物が無いので、再開の予定は今の処無いですね。御期待に応えられず済みません」


そっか、残念だな…。然し、いつか「雪と花」は読んでみたいと思った。


 門脇は5455票で落選(当選は現職市長で、30327票)。得票率は10.1%で、供託金返還を果たしている。勤め先だった自動車学校を退職し、運動員は友人知人の手弁当状態での供託金返還は大健闘だったと言えよう。門脇の今後の活動に注目したい。


◎史上最低最悪の政教一致カルト集団・冨士大石寺顕正会!


 2022年夏のコミックマーケット(コミケ、夏コミ)に一般参加すべく、東京ビッグサイト前を訪れた。すると、痩せ型で眼鏡を掛けた、背の高い天然パーマの男性に声を掛けられた。


「コミケの参加者ですか?」


「はい、そうです」


「どんな本が狙いですか?」


「評論・情報系ですね。貴方は?」


「僕はアイドル系ですね」


等、暫く雑談をする。


其の後、


「何かSNSやってます?」


と聞かれたので、ツイッターのアカウントを教え、相互フォローした。其して、


「機会があれば又会いましょう」


と、其の場は別れた。


 夏コミ終了後、ツイッターにダイレクトメール(DM)が送られてきた。


「好きなアイドルは何ですか?」


「Perfumeですかねぇ」


「Perfume!僕も大好きですよ~!」


等、Perfumeについて何度かやり取りした後、


「次はいつ会えます?」


と送られてきたので、次の冬コミで会う約束をした。

 同じ年の冬コミに一般参加し、終了後にツイッターのDMで連絡する。


「ビッグサイトの周辺で、飯でもどうです?」


「俺、今池袋にいるので、池袋迄来て下さい。店選びは任せます」


え!彼、今回コミケには来てないのか!今から池袋に行って、店も筆者が選ぶのか?面倒臭ぇ~…。とはいえ、貴重なヲタ友と、ヲタ話で盛り上がりたいのも事実。年越し蕎麦でも食おうと思い、池袋駅内の蕎麦屋兼居酒屋を予約。


 待ち合わせの場所に来て暫くしていると、男は大きなリュックサックを背負って登場。戦利品でも持ってきたのかしら?と思ったが、兎に角今は腹が減ってるので、早々に店内に入る事に。山掛け蕎麦の大盛と御摘みを数品頼み、会話を始めようとすると、男はいきなり、


「僕、顕正会なんだよ」


と告白してきた。ケンショウカイ?一瞬何の事かと思ったが、直ぐに分かった。冨士大石寺顕正会…!何と、折伏(勧誘)だ~!


「あ、な~るほど。布教活動が目的で、自分に近付いてきたという事ですか…」


「そう!そうなんだよ!君にも是非顕正会の信者になってもらいたいという事さ!」


何だか面白くなってきたぞ…。カルト観察家としてワクワクしてきた。一丁相手になってやるか!


「そもそも顕正会って何すか?」


「顕正会というのはだねぇ、日蓮大聖人を信仰する、世界で唯一正しい仏教の団体なんだよ」


「ああ、南無阿弥陀仏とかいう奴ですか?」


「其は念仏!日蓮大聖人は、念仏を否定しておられるんだ。我々は南無妙法蓮華経だよ」


「創価学会みたいな感じですか?」


「創価学会は偽物!あいつらは日蓮大聖人の教えを歪めた連中だよ」


「となると、立正大学や身延山大学の仏教学部で勉強したという感じですか?」


「あれは身延派!あいつらも日蓮大聖人の教えを歪めた連中で、最早仏教と呼ぶに値しない連中だよ」


「作家の宮沢賢治って、日蓮を信奉してましたよね。顕正会では賢治も尊敬の対象なんですか?」


「あれは国柱会だよ。身延派を割って出た連中だけど、今は身延派と大して変わらないね」


「然し、念仏と題目って似てますよね。どちらも唱えるだけで救われる。兄弟みたいなもんじゃないすか?」


「念仏は確かに一時的、部分的には役割を果たした一面もある。然し、日蓮大聖人が完全な御経は題目だけであると宣言した日から、念仏は効力を失ったんだ」


う~む、結構丁々発止で回答してくるなぁ…。此は中々手強いぞ。


「で、水野君も顕正会に入る気になったよね?」


「いや、自分クリスチャンなんで」


「分る!分るよ!僕はA学院大学出身だから!キリスト教については学校で専門的に勉強させられてきたから!」


うっ!ミッションスクール出身か!此は相当手強いぞ!では、話題をキリスト教に逸らすか…。


「A学院ですか。メソジスト系ですね」


「そうそう、イギリスのジョン・ウェスレーの系列だよ」


「救世軍とか、ホーリネス派とか、ナザレン教会とかも、メソジストに近いですよね」


「そうだね。あれ等も元を辿ればメソジストだね」


暫くキリスト教関係の会話が続いた後、


「どうだい、君もキリスト教が如何に間違ってるかが分ったろう。顕正会に入るよね」


「いやぁ、キリスト教以外は興味無いっすねぇ…」


「では、顕正会会長の浅井先生が書かれた有難い本を君に貸してあげよう。読んでみてくれ。返すのは次に会う時で構わないから」


巨大なリュックサックから分厚い本が取り出され、筆者に渡された。又会うの!?とは思いつつも、こうなったら相手がへたばる迄とことん付き合ってみたいと思い、3月のサンシャインクリエイション(サンクリ、池袋サンシャインシティで行われる、オールジャンルの同人誌即売会)で会う約束をした。


 家に帰り、借りた浅井昭衛の本「日蓮大聖人の仏法」を読みつつ、顕正会について色々調べる。


 顕正会は、1957年に「妙信講」の名で結成。更に源流を辿ると、1924年に浅井甚兵衛(昭衛の父)が結成した「東京妙信講」に迄遡る。其して、1982年の「日蓮正宗顕正会」を経て、1996年に「冨士大石寺顕正会」に名称変更している。他の宗教を全て邪教だと主張しており、特に創価学会とは極めて深い対立関係にある。教義としては、極端な政教一致主義であり、「国立戒壇」という国家による宗教施設建立を目的としており、其の前提として顕正会を日本の国教とし、天皇や皇族を含む全ての日本国在住者、日本国籍保持者(在日外国人、在外日本人含む)を顕正会信者とし、憲法20条の信教の自由を廃棄し、顕正会以外の全ての宗教を禁止するという物である。


 其の過激な政教一致主義に加え、一時期は武装蜂起も想定し、自衛官の信者を多数獲得してきた事もあり、極右過激派として公安に目を付けられていた事もあるという。更に、折伏は暴力や脅迫を伴う物もあり、事件として信者が逮捕された事例もあるという。かなり激しいなぁ…。


 3月のサンシャインクリエイションが終わった後、サンシャインシティで食事をしながら話すという事になった。折角なら美味い物を食いたいと思い、サンシャインシティの飲食店街にあるタイ料理店を提案する。すると、「タリーズコーヒーに来てくれ!」と速攻で返信が来た。やれやれ、折角の飯をチェーン店でかよ…。そういえば前回の蕎麦屋もチェーン店だったな。安っぽい店が好きなのか、其とも「御前なんかチェーン店で十分」と目下に見られてるのか…。いずれにせよ、イライラしてしまった。然し、此処で行かなければカルト観察が終わってしまう。グッと堪えて…。


 待ち合わせ場所のタリーズに来て、軽食と飲み物を頼み、顕正会の男が座ってる席に着く。不気味な笑顔がムカつく~…。今回も男1人だけ。筆者を折伏するには1人で十分ってか?舐められてたまるか。筆者は男に本を返し、

「本、一応読みました。要は顕正会は憲法20条を改定して信教の自由を禁止し、顕正会を国教とする政教一致国家を作るという事ですか?」


「其の通り!よく分ってるねぇ!」


「然し、信教の自由を禁止するって、近代民主国家では許されないでしょう?」


「だから、我々は毎日広宣流布に励んで、会員を獲得してるんだよ。ゆくゆくは日本に住んでる全ての人を顕正会員にして、天皇陛下にも会員になってもらう。其処で現憲法を廃棄し、顕正会を唯一の宗教とする国家を樹立するんだ」


ひえぇ~っ!民主主義の否定かよ!頭がクラクラする。然し筆者も負けじと、筆者のカルトに関する旧著「信じる人々」「信じた物に巣食われる!?」の浄土真宗親鸞会や創価学会等の記述を見せつつ、


「親鸞会という団体は『念仏以外は御経ではない。題目は仏典に書かれてない嘘の御経』と主張してますが、其の主張についてはどう考えます?」


「題目の歴史は念仏よりも古いよ。以前も言ったけど、念仏は部分的、一時的には効果がある時期もあった。然し、題目の正しさが証明されてからは念仏は無意味になったのさ」


「顕正会は各地で暴力事件を起こして、信者が逮捕されてるという話がありますが…」


「あれは創価学会と警察が結託して起こした、顕正会への弾圧事件だよ。警察には学会の信者が多数入り込んでるからね」


ああ言えばこう言うの繰り返しだなぁ…。非常に手強い。更に…、


「近々中国は台湾を侵略する。つまり日本有事だから、日本は台湾に出兵し、中国と全面戦争になる。日本の政治も安倍晋三や岸田文雄等の親米派と、二階俊博や野党等の媚中派に分れて内戦状態になる。其を唯一回避する方法は、日本の全国民が顕正会員になるしかないんだ」


政治についてもトンデモ陰謀論が展開される…。


「で、どうだい。顕正会の正しさと素晴らしさが、改めて証明されただろう。もう会員になるしかないよ」


「いやいや、繰り返しますが、自分はクリスチャンなので…。教会の皆さんを裏切る事は出来ません」


「其の教会の皆さんが君を裏切ったら、顕正会においでよ。必ず其の時は来るよ」


か~っ!滅茶滅茶ムカつく!!此奴は人を怒らせる事に関しては天才的だな!!!心も腹も満たされない儘、店を出た。


 其の後、ツイッターのDMで何度かやり取りするが、筆者が、


「折伏なんて下らない事やめて、自分の同人誌を買いに来ません?」


と送ってからは、ピタリと返信が来なくなった。筆者への折伏を諦めたという事か…。


 近年の顕正会は秋葉原や池袋等のヲタク街、其して同人イヴェント等に出没し、押しに弱いヲタクを狙って折伏を繰り返しているという。ヲタクに対する最大最低最悪の敵だな!絶対に許すまじ!!

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タダの政治家には興味ありませんッ!~水野松太朗の驚愕~ 水野松太朗@しょむ系政治勢力研究会 @shomuken

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