老いた二人
白川津 中々
◾️
安普請の一部屋に、みすぼらしい老夫婦が住んでいた。
二人はよれたボロを着ては散歩や買い物へ出かける。地域住民は二人を「貧乏老人」と嘲笑しながら、将来自分達はあぁなるまいと仕事や家事に勤しみ、子供に親の偉大さと慈愛を語っては将来の養い口を育てるのであった。
そんな他人の目や口に気が付かないのか、あるいはどうでもいいのか、老夫婦は素知らぬ顔をして市中を歩くのだった。晴れた日は公園のベンチに腰掛け、雨の日は図書館で本や新聞を読み、時にはカフェでコーヒーの香りに顔を綻ばせ、夜に酒場へ寄って、互いに一杯ずつビールや、たまにウィスキーを飲んだりして過ごすのだ。貧しいながらも穏やかな老後、余生である。だが、二人にも燃えるような情熱を過ごしていた時代があった。しっかりした足腰で飛び回り、激しい享楽の中で若さを燃やしていた時間が、確かにあったのだ。
それを知る者は、二人以外に誰もいない。彼と彼女がどう生きて、何故この安普請に流れ着いたのかを語る事ができない。二人は二人のままでこのまま朽ちてゆくのだろう。互いの思い出と、人生と共に。
老いた二人 白川津 中々 @taka1212384
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