八十通の不採用通知と、私の居場所
天音おとは
私らしく、生きるために。
就職活動を始めたあの日から、私はずっと「正解」を探していた。
何がいけないのか、どこを間違えたのか。
八十社。――不採用の数を数えるたび、心が少しずつ削られていった。
面接で笑顔を作るたびに、自分じゃない誰かになっていく気がした。
「明るく元気に、積極的に」。
それが“社会人らしさ”なのだと、教えられてきた。
でも、本当の私は、静かで、おとなしくて、感情を言葉にするのが少し苦手だ。
それでも、心の奥では、誰よりも強く、自分の言葉で生きたいと思っている。
――だけど、その思いは、採用担当者には届かなかった。
もしかしたら、私は「一般企業」に向いていないのかもしれない。
マニュアル通りの会話も、作り笑いも、数字で測られる成果も、どこか息苦しかった。
働くことが怖かったわけじゃない。
ただ、「この世界で、自分が本当に輝ける場所はどこなんだろう」と、迷っていたのだ。
親は心配そうに言う。
「大学に行っても、お金がかかるよ」「専門学校で十分じゃないの?」
その言葉に、私は何も言い返せなかった。
たしかに、進学にはお金がいる。
でも、働いて稼いで、そのお金で学びたい。
自分の力で、自分の未来を切り開きたい。
たとえ時間がかかっても、回り道でも、
「自分の言葉で生きる」ための勉強を、私はもう一度やり直したいのだ。
八十通の不採用通知は、私を拒んだわけじゃない。
ただ、私に「違う道があるよ」と教えてくれたのかもしれない。
社会に合わせる生き方ではなく、
自分のペースで、自分の感性を信じて生きる道――。
だから、私は今日もまた、ノートを開く。
そこに言葉を綴る。
誰に認められなくても、私だけの物語を紡いでいくために。
八十通の不採用通知と、私の居場所 天音おとは @otonohanenoshizuku
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