2期 プロローグ

一年が経った。


あの惨劇の夜を知る者は、もうこの学園にはいない。

旧礼拝堂は取り壊され、跡地には新しい校舎が建てられた。

けれど、そこに吹く風だけが、あの夜の“鐘の音”を覚えている。


新入生・三神 蓮(みかみ れん)


春の朝、

白百合学園の校門をくぐる男子生徒が一人。

黒い髪を風になびかせながら、手に古びたノートを握っていた。


「……これが、“白百合学園の告解記録”か。」


転入初日、彼の鞄に入っていたのは、

差出人不明の封筒。中には“血で染みた手帳”があった。


表紙には――


『Confession – A.K.』


怜の手記だった。


不穏な始まり


教室では、笑い声と新生活の喧噪。

誰も“あの事件”を知らない。

黒瀬透也、生徒会、七つの死――すべてが抹消された。


蓮は窓際の席に座り、手帳を開いた。

中の文字はほとんど滲んでいたが、

最後のページだけが鮮明に残っていた。


『——贖いは終わらない。

 次の七つ目は、“読む者”。』


蓮の背筋が凍る。


その瞬間、教室のスピーカーが“ブツッ”と鳴り、

かすかな声が流れた。


「……赦して。まだ、ここにいるの。」


クラス中が静まり返る。

教師が慌ててスイッチを切るが、

蓮の手帳のページがひとりでにめくれた。


ページの端に、赤いインクで書かれていた。


『第一告解——“開く者”』


蓮は息を飲み、机の下で手帳を閉じる。

しかし、その瞬間――

教室の鏡窓に映った自分の顔が、笑っていた。

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