ep18.賄賂は渡す奴を選べ
「...分かった、じゃあこちらから報酬を出ス。それでオレと協力してくれないカ?」
俺に取り押さえられているドレッド男が提示した条件は、シンプルイズベスト、『報酬』であった。
コイツはこの俺を報酬なんかで釣ろうとしているのか。いい度胸だ。
「......ふんッ。俺を金で釣れると思ってんのか?甘い、甘すぎるね!調子乗った男子高校生がつけてる香水より甘ったるいよ!!......因みに金額は?」
当然、俺はこんな誘惑に引っかかることもなく、正義の執行官としての職務を全うする。...一応参考までに、向こうが提示する報酬金の額は聞いておくが。
取り押さえられているドレッド男は、俺の質問を受け、再び不敵な笑みを浮かべた。
「報酬は金じゃあナイ。もっとお前が、心から欲しているものダ...」
「俺が心から欲しているモノ、だと...!?」
「あぁ、そうサ...。男なら誰しもが欲しがる、『アレ』だヨ...!!」
予想外のその答えに、俺の覚悟が揺らいでしまった。
『男なら誰しも欲しがるもの』と聞いて、気にならない男は、漢じゃない!一体、一体何なんだ!?
「!!...ま、まさかとは思うが、その『アレ』って...!!」
「くくく...分かったようだナ...」
「まさか、『俺を養ってくれるJK』か...!?」
「...それは求めすぎじゃないカナ。」
「チィッ....!!」
なんだ、『俺を全肯定して面倒見てくれる御曹司の美少女JK』じゃないのか。ならいいや。
っていうか、じゃあ何なんだよコイツの言う報酬ってのは。
「おい、勿体ぶってないで早く報酬言えよゴラ。まぁ美少女の線が消えた今、俺はもう乗らねぇだろうけどな!」
「...そうだな、いい加減言ってやろウ。報酬は___」
「ゴクリ....」
期待していなかったハズなのに、思わず息を飲んでしまう。
い、いや、揺らぐな俺...!!ここで一億円とか言われても揺らいじゃダメだ...!!
「...報酬は、『エッチな本』......ダ!!」
「....は?」
その男が自信満々に言ったその報酬は、あまりにも陳腐なものであった。
コイツは、俺がそんなモノで釣れると思っていたのか?
俺は怒りを通り越し、呆れた表情になってしまった。
「はぁ...、あのさぁ、確かに俺は今まで、可愛い子とかエロいものに目がないキャラでやってきたよ?...でもさぁ、いくら何でもこの状況で、エロ本なんかに釣られると思う?流石に俺のことを舐めすぎだよね。」
俺が呆れた表情でドレッド男に説教をかますが、この男はまだまだ余裕そうにニヤついている。
本当に俺も舐められたものだな。
「なぁ、警察。お前、過去から来たって言ってたよナ?」
「あ?...まぁ、そうだけど。」
「じゃあ、未来のエロ本は、知らないわけダナ?」
「ピクゥッ!!」
『未来の』。俺はこの三文字に、脳をビンタされたような衝撃を受ける。
『未来の車』、『未来の建物』。今まで目撃してきた未来の産物は、いずれも度肝を抜くようなモノばかりであった。
では一体、『未来のエロ本』は、どうなってしまうのか...!?
「ゴ、ゴクリ...」
(こ、コイツ、できる...!!)
俺はたったの三文字で、完全にこの男に心を握られてしまった。
今の俺の脳内には、『警察としての職務』なんて大層な考えは一切無く、ただただ『未来のエロ本』がどういったモノなのかを想像するだけのピンク色のお花畑になってしまっている。
「ち、因みに、未来のエロ本は、3Dだったりするのか...?」
「3D?ハッ!!3Dなんて時代は50年前に終わってるヨ!!今のエロ本は、『4D』ダッ!!」
「ふぉ、4D...だと...!?」
俺の想像を軽々と越えてくる未来のテクノロジーに、エクスタシーが止まらない。
(おいおいおい!4Dのエロ本ってどうなっちゃうんだよ!!ま、まさか、目の前に女優さんが!?...うっそだろオイ!そんなんさぁ、見たいに決まってんじゃん!!)
俺はかろうじて残っている、ほんの少しの理性を振り絞り、何とかドレッド男に最終確認を取る。
そしてこの確認は最終にして、最も大切な確認である...!!
「ち、ちなみに、その本の
そう、夢の4Dエロ本とは言え、俺の趣味嗜好に合ってなければ、それはただのゴミ。価値はゼロに等しくなるのだ。
俺は職務としてナノハというロリッ娘を連れ歩いているが、決して幼女趣味はない。それをこの男が理解しているかどうかに、この最終判断の結果はかかっている。
「...本の
「ゴクリ...」
その場を、一瞬の静寂が包み込んだ。
間違いなくこの空間は、俺達男二人だけの聖域になっている。
(さぁ、何が来る...!!)
そして男はゆっくりと口を開いた。
「系統は、『人妻』だッ...!!!!」
「...!!」
(......なるほど、な。)
俺は無言のままゆっくりと立ち上がり、ドレッド男への拘束を解いた。
そしてキョトンとしているドレッド男に手を差し伸べ、彼が立ち上がるのを手伝う。
俺はドレッド男の方に拳を伸ばし、微笑を浮かべながら小粋にウィンクする。ここでドレッド男も、俺の意向を完全に理解したようだ。
そう、つまり俺は、
人妻に乗ったのであった!!
続くッ!
...まぁ正確には、人妻に乗られたいんだけどなッ!!
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笑え!進め!我ら特課なり!! 人面菟葵 @ZINNMEN
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