『もったり』

鳩鳥九

『もったり』



もったりとしたカッコよさが響く。

ジャケットを脱いだ彼の背中は軽そうに

飲みかけのカルピスソーダをおいて背伸びをしている。


この世界はそんなにも早くはなくて

だって加速なんかせずに、スピードなんぞはからきしに

ツンツンとせっつく時間も時計もなければ


おしりを蹴り飛ばしてくる第三者もいない。だぁれもない。

道具があって、休憩室があって、埃臭さがあって、

私はそんな彼の、もったりと君臨したカッコよさを眺めては


嗚呼好きなんだなと三回も確認するのだから

ゾッコンなのだろうと、素っ頓狂に、思い返す。

いいなって、この人の後ろに急かされずについていくの。


気取らずに、背伸びせずに、急がずに、もったりと

黒い用具入れの鞄を肩にかけて立ち上がる彼に

シャッターチャンスを逃したような指をめがけて



「んー」

「お仕事終わった? 」



目指してみようかな。私も

そのもったりとしたカッコよさを。

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『もったり』 鳩鳥九 @hattotorikku

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