広い世界に、自由に開かれているはずの、SNSという媒体。
けれど日夜そこを行きかうのは、まるで蛇と蛇が互いの尾を喰いあっているような、
グロテスクな閉塞感。ツバメとカラス。色違いのつがいの鳥が、そこで出会った。
この物語だけではない。
例えば、赤ずきんを狙う狼はそこら中にいるし、
そもそもその赤ずきんが無垢だとは、初めから誰も言っていない。
現代に根付く闇。不信。抵抗。希望。信頼。その果てに。
結末に一輪の花を添えたくなるけれど、これははたして、
希望なのか、絶望なのか。
餌なしに生きられるものは、いない。
見えない食物連鎖の真ん中で、私たちは生き、もがいているのかもしれません。
SNSをテーマにしたイヤミスです。
第1回GAウェブ小説コンテスト応募作品とのことですが、締め切りから既に一か月経ち、もっと早く読んでおけばよかったと思いました。
カラスとツバメを名乗る二人の女性の、虚構に満ちたSNSでの交流を主軸に話は進んでいきます。
カラスとツバメ。
獰猛に見えるカラスは現実に怯える弱々しさを抱え、一方、愛嬌を纏うツバメは、他人をだまし利用しようとする狡猾さをそなえています。
生の人間が表に出ないSNSという場は、カラスの内面がツバメで、ツバメの本性がカラスという、お互いのイメージが反転した仮面を被せてしまいます。
真逆の性質を持ち、本来混ざり合うはずのない彼女たちは、ある人物の言動が原因でそれぞれの思惑が絡み合うことになり、予測不能な方向へサスペンスフルにストーリーは展開していきます。
2人の心理描写は巧みで、鳥に例えて美しく詩的に描かれますが獲物を捉える嘴のごとく残忍でもあり、そのエゴや虚飾は今に生きる人間の心の奥にあるものであって実に生々しい。
イヤミスが好きな方は間違いなくハマる作品ですし、始めての方でも心をえぐられる感覚というのを味わえる傑作なのでおすすめいたします。