姉と私


食卓に響く家族の楽しげな声。幸せそうに溢れる笑顔。



そこに私は参加してない。



楽しげな声の主は今日小学校で起こった一日の出来事を話す私の姉、恵美と母。


母は恵美の話を満面の笑みで聞き、何度も高い声で笑う。それで最後は「恵美ちゃんは本当に良い子で凄いわ。」

これがお決まりのセリフだ。


そんな母の言葉に恵美は満足そうに笑った。


その2人のやり取りを静かに聞き、温かい目で幸せそうに見守るのが父。


そしてそこで空気のように存在を消して、俯いているのが私。



母と父は姉の恵美のことをとてつもなく愛している。溺愛という言葉がぴったりだろう。



恵美は綺麗な顔立ちに、何でも器用にこなしてしまう才能まで持ち合わせていた。

それに比べ、私はぱっとしない見た目で人より何倍も何十倍も努力しなければいけないタイプだった。



そんな私に愛想を尽かしたのか、生まれた時からもう既に愛情は偏っていたのか。


私が物心ついた時からこうだった。



両親の1番の姉が羨ましく、憎かった。


私だって褒められたかった。


注目されたかった。




「愛してるよ。」そう言ってほしかった。

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可惜夜を求めて @_naginoibasho

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