ツンデレヤ

ツンデレヤ

　今日は家族そろってのアニメ鑑賞の日だ。今日はNetPixで限定配信されている新作アニメのシンデレラを見る予定だ。

　俺の家ではディズニー最新作の視聴は禁止している。最近のお目覚め系のディズニー映画にウンザリしているからだ。ただ、昔の名作は別だが。よかった、この新作がディズニー制作でなくて。今回の新作シンデレラは日本のアニメだから安心して家族と共に見れる。

　俺は妻と娘と一緒に居間のソファーに座り、再生ボタンをポチッと押して本編の鑑賞を始めた。

　あれ～、ちょっとタイトルが違うのでは？　間違えたのかな。いやいや、これはきっと気の所為に違いない。それとも、制作側が意図的にボケをかましたのかな～。或いは……　俺はメガネを外すと、丁寧にメガネ拭きでメガネの汚れを取った。これで見間違いはもう起こらないだろう。

　本編が後半に差し掛かると、俺は物語の進行が少しおかしい事にふと気づいた。何か、主役のシンデレラの人生はどんどん悪い方へ向かっている。一向に改善する気配がない。もうすぐ物語の終焉になるというのに。旧作の前半では、シンデレラの人生は不幸そのものだが、後半に入るにつれて徐々に改善し、最後には王子様と結婚して幸せになるというのにだ。

　俺は妻にその事について意見を求めたが、妻からは、これは完全に新作であってリメイクではない、と言われて、あやされた。まぁ、妻からは最後まで見てみましょうと、言われてちょっと納得がいかなかったが、そうすることにした。娘はというと、面白がってシンデレラを見ている。

　まぁ、皆は気に入ってるみたいだし。俺も面白ければいいかな～と思い、そのまま最後まで見続ける事にした。

　アニメの主人公はメッチャ不幸だが、いつもニコニコしていてまんざらでもないって感じだ。主人公はニコニコと言うよりはなんとなくデレてる感じかな。この先、どうようなどんでん返しが待っているのだろうか。楽しみだ。だが、物語では俺の期待に反してそのままエンドロールが流れ、終わった。

はぁ～。

あれで終わりかよ。マジで。　完全にバッドエンドじゃないか！俺の４５分、今すぐ返してくれ、コノヤロー！

「アレ、一体、何なんだよー！　完全にクソアニメじゃないか。てか、これ、シンデレラだろうが。ハッピーエンドじゃないのかよー」

俺は妻に同意を求めるか如く、なじった。

「あなた、ちょっと落ち着いて。あれは完全にオリジナル作品だから。それにあの主人公はツンデレヤであってシンデレラではないですよ。全くの別物ですよ」

はぁ～。　

何だよ、ソレ。

　俺はアニメのタイトルを確認した。よく見ると何とタイトルがツンデレヤではないか。あの時、見間違えと勘違いしていたが、そうではなかったのだ。

「ねぇ、パパ、何であの人、あんなに不幸なのにあんなにニコニコしているの？」

「それはね、　……大人の事情と言うものだよ。大人っていうもんはね～、……どんなに苦しい時でも我慢してニコニコして色々な事に対処しなければならない時がよくあるのだよ」

「えぇ～そうなんだ～、大人って不便だね 。そんな嘘、付かなくてはならないんだ～」

てか、俺、何を言っているんだ！　そんな訳、ないだろう。あ～言う時の笑いやデレは苦笑いと言うんだよ。あ～、もうやってられないよー。折角、現実世界から逃避するためにアニメを見たのに、現実世界へ引き戻された。

　てか、ツンデレヤって何なんだよー。　この主人公、人生詰んでるけど、デレデレしているからツンデレ屋かよー？　アホかー！

　あれ～、ツンデレってそんな意味だったけ？