印塚、逮捕
「俺がお前の事務所に?待て待て、俺は犯罪者だぞ。そんなもん事務所に置いてたらお前もどうなるのかわからないのに」
「ふむ・・・私は事務所を持っているのか」
「だめだこりゃ」
「ところでお前はマコモ湯知ってる?」
「知ってるけど今する話じゃないだろ」
「・・・・・・・」
「いや急に黙るなよ」
「黙るということはつまり言葉を発していないということだ」
「解説は頼んでないんだよなあ・・・」
二人が(主に片方のせいで)不毛な会話を繰り広げていると、凡間の携帯が鳴った。
「すまない、電話だ」
「ああ、どうぞ」
「おい、探偵君!」
凡間の携帯から大音量でおじさんの声が聞こえてきた。多分禿山だろうと思いながら、印塚は耳を澄ませた。
「何だ」
「年上に対して『何だ』はないだろう、探偵君。それよりも、君が事務所からいなくなったと言って捜索願が出されたんだが、今君はどこにいるんだ」
印塚は体を2つに折って笑っている。
「地球だ」
「ふざけてる場合じゃない。今いる場所を教えろ」
「間違えた。地球ではなくEarthだった」
「探偵君!本当にふざけるんじゃない」
「私は真面目だ」
「はあ・・・君には捜索願が出ていると言っただろう。早く戻ってこい」
「捜索願って何だ?」
「えーーー。そんなことも分からないのに君は探偵をやっているのか」
「なるほど、私は探偵なのか。それはそうと、印塚。私の荷物を纏めておいてくれ」
印塚は目を丸くした。
「い、印塚!?探偵君、今、印塚と言ったのか!?」
「印塚と言った、ということはつまり言葉を発したということだ」
「おおおおおい!凡間ああああ!!何喋ってんねえええええん!」
印塚は完全に発狂している。そりゃそーだ。
「探偵君、今君はどこにいる!?」
禿山が慌てて探偵に尋ねる。凡間は落ち着き払って、こう言った。
「〇〇市◇◇町3丁目14−8」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「了解!今行く」
「探偵お前何してんねえええええええええええええええええええええええええんん」
「?住所を言っただけだが」
「なんでこんな時だけ真面目に話すんだよおおおおおお」
「印塚。人生とは、人がこの世に生きていること、その期間、そして経験する出来事そのものなのだよ」
「『人生』の単語の解説は求めてねえ!俺は逃げさせてもらう!」
そう言って印塚は走り去った。しかし、逃げた先には、なぜか凡間がいた。
「『逃げる』ということは、『危険を避けて、相手の力の及ばない所へ去る、また身を隠す』ということだ」
「なんでお前がここにいるんだよ!」
そこには、探偵だけではなく、禿山や留美、天才もいた。
「探偵君、お手柄だ。さて、大怪盗・印塚虎之介。大人しく縄にかかれ」
「嫌だ……オレは……負けたくないィィィィ!!」
「負けるということは、つまり敗北するということだ」
「兄貴らしくない解決の仕方……あと印塚ってこんなうるさかったっけ???」
「凡さんのくせに今回はやるじゃない。今日はパーリナイかしら」
「何がパーリナイだ!俺は逃げさせてもらう!」
「あっ印塚が逃げた」
「追えー!」
警察官たちが一斉に走り出した。怪盗のくせに足が遅い印塚は、成すすべもなく直ぐに捕まった。
「11時43分。印塚虎之介を確保」
「お前、ちょ、離せって!おい!」
「はいはい静かにしましょうね」
「……。」
警察官に宥められた印塚は、当然のごとくふてくされている。
「あーあ。せっかく逃げられたと思ったのになあ。なんであの探偵は俺の居場所がわかったんだろう」
「さあな。あいつのことだから、きっと俺達が思いつかないような方法で特定したんだよ、きっと」
「はーー……。」
〜〜〜
「ところで凡さん、なんで印塚の居場所がわかったの?」
「アパートに潜伏していた印塚はアパートに潜伏していたのだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「この世に解けない謎はないのだよ、留美」
「しれっと名言こぼしてくるの腹立つ!」
「まあ、とりあえず印塚が捕まってよかったな、兄貴」
「ん?印塚とは誰だ?」
「はあ・・・・」
印塚の居場所を突き止める快挙を成し遂げても、やっぱり凡間は凡間のようだ。
うちの探偵がゴミすぎる! 御弟子美波留 @miharuodeshi
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