第1話

僕は人間だった。でも壊れた。壊された。僕は怪物と称していいくらいの生物になってしまった。だからってツノが生えてるわけでも尻尾があるわけでも人間ではないような顔立ちでもない。僕の外見はただの一般人だ。殺人鬼予備軍、それは僕のようにあることをきっかけに細胞全体に変革がおこり自分の全てを書き換えられるような病気にかかった人のことを指す。その病気の名前は「穢血えけつ変異病」という。またの名を「セルルシア症」。この病気になったものはもう二度目と人間になることはできない。そんな病気だった。この病気は社会的には存在せず裏のものとして扱われている。普通の人間の中でどのくらいの人がこの病気について知っているだろうか。とりあえずあの機関の連中は知っているのだろう。職員は人間なのか僕と同じ殺人鬼予備軍なのか。考えてもしょうがないことだ。そんなのはどうでもいい。

それよりもだ。今日は大学の食堂であれが出る。そううなぎ!それも高級な。値段はちゃんと学生仕様で払える代金。安くてうまい高級なうなぎが食える機会なんてそうそうない。1ヶ月に1回のこれを逃すほど僕も馬鹿ではない。一応僕らは人間と怪物の間の生き物だが主食は人間の食べ物だ。それを言うと少し嘘になるかもしれないが。僕は人の血肉なんかよりもずっとずっと人間の食べ物の方が美味しいと思う。というかそうじゃなきゃ僕は世界を許せなくなる。いまだに僕は殺人鬼予備軍として人の血肉を食べたことがない。でもきっとまずいに決まってる。と言うかうなぎが不味くなるような話はやめておこう。僕は少し重くなった足で食堂へと向かった。やはり今日は決戦だと言うことは間違いなかった。食堂には人がたくさんいた。が、券を買わなきゃ頼むもんも頼めない。券が販売されるまであと2分。ここからが勝負だ。




「や、やったぁ…」

僕はお盆の上に乗ってるうなぎを眺めなら微笑み空いてる席に適当に座った。僕は箸を取りそれに手をつけた。ん〜!美味しい!やっぱ安物とは全然違う。あぁ…。ものすごく美味しい。そう美味しいだらけの頭の僕の隣から椅子を引く音が聞こえた。けれど今はそんなことどうでもいい。目の前のものに集中するだけだ!そう箸に力を入れた途端…

「あれ、君もゲットしたんだ。それ」

と横から声がした。僕の美味しいを邪魔するのは誰だよと思いながら相手の顔を見るとあの人がいた。顔しか知らずに恋をしてしまった。そんな相手が。僕は驚き椅子から落ちてしまった。どうしよう。心臓がバクバク言ってる。とにかくやばい。なんでこんな近距離に?!あぁでもそっか。同じ大学内なら会わない可能性なんてないんだ。けどさたまたま隣に座ってくるとかそんな運命的なことがありますか??今はもううなぎもほっといて逃げたい。けど何故か足は動いてくれない。やっぱ僕、恋してる感じ?これ。


「えっと、大丈夫?ごめん驚かせた?」

あぁ、綺麗な顔を近づけないで。鼻血が出そうになるかぁ…。取りえずなんか返答しなきゃ。なんて言えばいいの。大丈夫とか?でも大丈夫じゃないから椅子から落ちたんだしな。とりあえずそれっぽいことを言っとけばなんとかなるはず!

「ご、めん。少し驚いただけだから。」

何が少しだよ。多分これは間違えた。とりあえず椅子に座ろ。でも待って隣に座るっておこがましくないか。でも、床に座りっぱなしじゃ変に思われるだろうし。そうして僕は再び椅子へと座った。

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恋をした相手は"普通"の人でした とわ @Towa-H

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