少年時代の奇妙な夢
スター☆にゅう・いっち
第1話
見知らぬ場所、見知らぬ人々、そこにいる自分――そんな夢を見たことはありませんか。
そのときはただの幻にすぎないと思っていたのに、後になって同じ場面に立ち会い、あれは未来を映した夢だったのだと気づく。
そんな不思議な経験をしたことありませんか。
少年はときおり、奇妙な夢を見た。
見たこともない建物、聞いたこともない言葉。長い石垣、異様な服装と髪型の人々。炎に包まれる木造の楼閣、怒号が飛び戦う人々、炎の中で舞う人物、そして槍に囲まれて立ちすくむ自分。目覚めるたび、胸がざわめいた。
父に話しても「子供は妙な夢を見るものだ」と一笑に付されるだけだった。
やがて時は流れ、少年は二十歳になった。名はヤスフェ。アフリカの小さな村で、誰よりも強く勇敢と評判だった。ある日ポルトガル商人に誘われ、兵士としてインドへ渡り、さらに宣教師とともに遠い日本へと赴く。
その地で彼は「弥助」と呼ばれ、織田信長に仕えることになる。
だが突然の本能寺の変。燃えさかる建物、怒号が飛び戦う人々、炎の中で最後の舞を舞う信長、槍に囲まれて立ちすくむ自分―それらはすべて、少年の日の夢と同じ光景だった。
信長の死後、弥助は失意の中、堺の港から船で故郷へ帰ろうとした。陸地が小さく遠ざかっていくとき、少年の日の夢がよみがえる。
「すべては運命だったのか…」
ヤスフェは静かに悟り、潮風に濡れた瞳から涙がこぼれた。
少年時代の奇妙な夢 スター☆にゅう・いっち @star_new_icchi
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