落ちた
奥行
1度目の事情聴取にて
「ダルい……絶対落ちたくない……」
「頑張れ〜」
放課後、教室には2人しかいなかった。
遠くから聞こえる。
練習中であろう吹奏楽部の流れるような管楽器と、校庭で運動部がリズミカルな掛け声と共に走り込みをしている足音が、この教室まで届いていた。
「そもそも古文いる?最悪捨てていい?」
「いや点取れるに越したことはないって」
夕日が差すにはまだ少し早く、空いた窓から緩やかに吹いた風がカーテンを揺らしていた。
「勉強したくない……死んだ方がマシすぎる」
「いやいや(笑)頑張ろ」
その時の事は。
カリカリ紙を引っ掻くペン先と、
滑らかに響く管楽器と、
ふわふわ吹く風と揺れるカーテンをやけに鮮明に覚えている。
私たちはどんな顔で話していたっけ。
「ねぇちょっと手伝って」
「いや頑張ろうよ」
「お願い」
私はそれになんと答えたんだっけ?
その後の事はよく覚えていません。
校庭から悲鳴が聞こえた気がするけど、自分の幻聴かもしれません。
滑らかに響く管楽器と、
ふわふわ吹く風と揺れるカーテンを鮮明に覚えています。
刑事さん、私、手伝ってあげただけなんです。
落ちた 奥行 @okuyuki
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