最終話 春のつぼみは大輪と咲く

◇◇◇◇◇◇◆


 数日後。

 遥人はるひとくんに呼び出されて待ち合わせ場所の公園へと向かう。


「つぼみさん」


 遠くで手を振る男性の姿。

 待っていたのは、私服姿の遥人はるひとくんだった。


「お待たせ、遥人はるひとくん。待たせちゃった?」

「今来たところだよ」


 彼はそう言って偽りのほほえみを浮かべた。


 が、私は見ていた。

 待ち合わせの数十分前からここに立っていた彼の姿を。


 それを知っている私も、身なりを気にするあまり今の今まで彼の前に出て来られなかったのだけれど。


「さておき。合格おめでとう、つぼみさん」

遥人はるひとくんも、おめでとう」


 どちらからともなく手を差し出して、固い握手を交わす。


 大学受験の結果。

 ふたりの努力が実り、晴れて同じ大学に行けることになった。


 いろんなことが一段落したので、今日は二人でお祝いである。


「予定通りで良いかな」

「うん」


 ——バレンタインのお返しも兼ねて、おすすめのカフェに行こう


 今日のこのお祝い。

 誘ってくれたのは彼だった。


 二人でちゃんと会うのは卒業式以来。

 つまり、告白のあの日以来ということになる。


「じゃあ、行こうか」


 私の目の前に、再び手が差し出される。

 先ほどの握手とは違う意味合いの。


「うん」


 私はそっと優しくその手をとり、ぎゅうっと握った。


 風が吹いて桜の花びらが舞い踊る。


 舞い踊る桜吹雪の中、満開の桜並木の中を二人で手をつないで歩いた。


 私は春野つぼみ。

 18歳、花の高校生。


 もう少しで花の大学生だ。



<了>




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春のつぼみは、四季をめぐりて大輪と咲く。 星乃かなた @anima369

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