匂い
ヤマシタ アキヒロ
匂い
ふとした瞬間に
いろんな「匂い」を
思い出すことがある
それは言葉には表せない
私の記憶の中だけの
かすかな匂い………
子供のころ
お絵かきの時間に嗅いだ
画用紙の匂い
夏休みのプールで抱きしめた
浮輪の匂い
修学旅行で泊まった旅館の
エレベーターの匂い
東京駅に降り立ち
人ごみの中で嗅いだ
なまぬるい風の匂い………
さまざまな匂いたちが
私の鼻腔をくすぐる
甘ったるい時間
繋がれた記憶が
つぎつぎと呼び覚まされ
ストーリーをつむぎ出す
ああ この匂いは
いつかどこかで
嗅いだ匂い
うん これは知ってる
いま思い出すから
少しまってて―――
匂いという
特別切符を手に入れ
私はいま
幻の機関車の
到着を待つ人
各駅停車でもいい
各駅停車のほうがいい
なつかしい
記憶の機関車よ
今日も私を
めくるめく時空の旅へ
連れてっておくれ
(了)
匂い ヤマシタ アキヒロ @09063499480
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます