思考するアドゥレセンス少女

黒巻雷鳴

思考するアドゥレセンス少女

 わたしが通う中学校は、お世辞にも良い中学校とは言えない。

 校舎が古いとか、いじめが多いとか、教師のセクハラ・盗撮が横行しているとかじゃなくって、ただ純粋に、なんとなく残念な感じがするからだ。


 休み時間中のクラスは、小学生の頃とたいして変わらないし、みんなそれぞれ、無駄に馬鹿騒ぎをしてダラダラと過ごしているようにしか、わたしには見えてしかたがなかった。



 ──ガキどもが。



 ほかの中学校ではどんな休み時間の過ごし方をしているのか、もちろんわからないし知らない。多分、どこの学校も同じ光景かもしれない。それでも、わたしには我慢がならなかった。

 わたしたちは子供じゃない。

 なかにはたしかに〝生物学的に未成熟な個体〟も大勢いるだろう。けれども、それでも、わたしたちはもう、子供じゃないんだ。


 そんなことを今日も考えながら、廊下や教室で騒ぐ同級生たちを自分の席からさげすんで見つめる。

 こいつらの行動でストレスを感じるなんてバカげているし、もったいないと自分でも思う。

 だけど気になる。気になってしまう。

 ひとりやふたり、五人とか十人じゃない。全員が、このクラス全体が、先生たちも、この学校全部の存在との共生が、現在いまこの時の人生においてマイナスにしか思えない冷徹な自分と、そう考えてしまう思考パターンが不愉快で嫌いな自分とが、頭のなかでお互いの顔を見つめ合って、ただ、無言のままじっと立っている。

 不安にも似ているけど、なにか違う。さびしくもあり、そうじゃない。上手うまく表現ができないどちらも混ざった負の感情が、青白く痩せ細った爪の伸びた手が、わたしの胸の鼓動を押し殺して渦を巻く。

 

「ねえねえ、あのさあ──」


 だれかがわたしに話しかけてきた。

 それに反応して笑顔で振り返る。

 相手が違っても、話す内容に毎回中身はない。

 大体いつも、こんなふうにして休み時間が過ぎていた。






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思考するアドゥレセンス少女 黒巻雷鳴 @Raimei_lalala

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