こくさんの、ぎしんあんき

サカモト

こくさんの、ぎしんあんき

 さいきん、やたらと国産のゾンビ映画、ドラマ、マンガ、ゲームをつくっているなあ、しかも、たくさん予算もかけてあるし、才能ある人がいっぱいよってたかってやってって、どれも面白いし、みんな、見事にとびついているし、これはもう大ゾンビブームだなあ、と思って、じぶんも、うひゃあ、と飛び付いてたら、ほんとは、本物のゾンビが発生した、あの日にそなえて、ゾンビへの対応方法、やっつけ方とか、逃げ方とか、壮絶パニックにならないようとか、みんなに、こっそり、無意識のうちに、つまり、意図していない無意識インスール的な、とにかく、そっと、みんなに教えとく、しみこませておく、ねじこんでおく、そんな国の計画だったことがわかった

 国内に、大量のゾンビが現れることは事前に確実にわかっていたみたい。ゾンビは急に町に出た。山にも出た。海辺にも出た。学校には出た。コンビニにも出た。夕暮れの駅のホームにも出た。

 でも、かなりの数の人たちが、事前にゾンビもの創作物をみたりしてたので、なんとなく、ゾンビとは、こんな感じの動きをして、あんな感じで、つけたりすれば、いいんじゃないかなあ、と対応方法を知っていた。もちろん、ゾンビものをみてない、興味がない、関心がない人は知るはずない。だけど、その場合は近くにいる、ゾンビ対応方法を知っている人に指導されていた。ゾンビがこう来たら、こう。そして、こう来たら、こう、と言われたりしていた。

 そうそう、そういえば、少し前から、全国展開しているホームセンターとか、あと、そう、ドラッグ以外がいっぱい売ってるようなドラッグストアで、なんとなく、ゾンビを倒すのにつかえそうな刃物系、鈍器系とか、そんな日曜大工用品が、妙に目につく場所に、しかも、なかなか、お安くセールされているのをよく目にしていた。そうかそうか、いまはゾンビブームだし、日曜大工もまた、ブームなのか、と思った記憶がある。あの品揃えも来るべき日の準備のひとつだったみたい。

 ゾンビが国中にわらわら出たあとで、なにやら国的な、つまり、公的なところが、わらわらと、こんな発表をした。

 ゾンビは生きてるものを食べに来ます。

 ゾンビに噛まれてもゾンビになりません、痛いだけです。

 ゾンビは増えません。

 ゾンビを倒しても、いまだけ、国は罰則はつけないことにしてます。ただ、可能なら倒したゾンビの身元を把握してもらえると、あとあと、なんかその、手間が減って、いいかもしれませんので、よろしくお願いします。

 この発表をきいて、なんだと。こうしてはいられない、と興奮し、このゾンビ発生を利用して、どうにか得してやろうと、さっそくゾンビたちを倒しに向かって、失敗して、やれまくる人が大量発生した。動画を撮影しながら、実況しながら、と、ながらゾンビ狩りで、やられた人が続出したせいで、どこも動く屍と、動かない屍があふれだす始末だった。

 しかも、事故処理で特注という、すごい大型車で石灰をまきまくるので、どこもかしこも白くなっていた。うちの近所も、ああ、白いったらない。

 発表された通り、ゾンビは増えなかったので、最後はぜんぶ退治された。こうして、未曾有のゾンビ騒動は鎮静化された。

 しばらくして日常も戻った。ゾンビが発生した理由は、だれもうまく説明してくれなかった。ただ、ゾンビだ、ゾンビだ、倒したい放題だ、と、ゾンビに浮かれるような、はしゃぎやすい人が減った国にはなった。

 その後、わが国では、国産の猫映画、ドラマ、マンガ、ゲームが異様につくられていた。観ると、どれも面白いけど、これが純粋なねこのブームなのかがわからない。

 たぶん、この先、他のなにがブームになっても、かんたんには、うひゃあ、と飛び付いて、純粋には楽しめない人は多いと思う。

 国産の疑心暗鬼で。

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