伝えたい言葉を相手に渡すまでには、その道筋を作るために多くの言葉が費やされます。
前置き、理由、気遣い、戸惑い、挙げきれないほどの種類の言葉たちが手に手を取って協力するのです。
声に出した言葉。口に出せなかった言葉。
どれも無駄ではないのです。
みんな、人と人の心を繋ぐ架け橋となるのですから。
本作は、伝えたい言葉の生まれるまでの様子を描きながら、恋愛の始まりから成就までの過程を表してもいます。
誰もが思い至るのに、言葉にできない思いを鮮やかに描き出しています。
心情が言葉となる。
言葉が言葉を導くとき、心に広がる無数の言葉たちを思うと、どこか微笑ましくもあります。
言葉のもどかしさに思い至る方には、きっと胸に残る作品となるはずです。
お勧めいたします。