第4話 No Exist


 お


 ま


 え


 を


 み


 て


 い


 る


 ゜


 *


 どうせ文章なんてものは、板の上に置かれた文字列でしかない。


 俺は殺人鬼だ。


 突然だが、お前たちを殺したくなった。


 お前たちに現実を突きつけたくなった。


 こんな小説を読んでないで、とっとと現実に戻れ。

 そんなくだらない時間の使い方をするな。


 私の小説よりも面白い作品は沢山ある。

 そっちを読んだ方がいい。




 ドウセオマエラゴトキニハワカラナイノダカラ。




 ……お前が死んだかどうかはどうでもいい。


 お前が僕の文章を面白いと思ったかどうかはどうでもいい。


 お前たちを私は絶対に信じない。


 お前たちを私は絶対に逃がさない。


 お前たちを私はいつか殺す。


 それは、ただそういうものなだけなんだ。


 もちろん俺だって、殺人鬼じゃなかったら、お前たちを虐めるようなこんな話は書かなかった。


 でもダメだ。


 私は殺人鬼の上田あかりだ。


 お前たちを殺す方法が、今こうしている間にも思いついている。


 誰か、助けて。


 誰か、私を止めて……。



 *


「あかりちゃん?」

「……はっ、……は……はぁっ、あ、」


「大丈夫……?」

「ごめん、しらかば。……しっぽ、かして」


「いいよー。はい、ぎゅ」


「……ぎゅー、うん、落ち着くな」

「……あかりちゃん」


「そんな目をしないでくれ、大丈夫。こういうものなんだ。発作みたいなものだ。別に読者にムカついたとか、いいねされて腹たったとか、そういうことじゃない。僕はちょっと……おかしいだけなんだ。読んでくれてありがとうって思ってるし、ありがたいことだって、わかってるよ。でも、」

「……うん」


「あぁ、うん……薬、取ってくる。頭痛い」

「行ってらっしゃい。僕もお手洗行ってくるね」

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魔王も勇者も、殺しちゃってごめん……。 No Exist @sayonara3

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