Epilogue この手が君に届くなら

 『人工知能』と呼ばれる彼らは、人間とは違うかもしれない。

 でも、違っていいのだ。


 この広い世界のどこかで、かつて誰かが言った。

 違っているのは悪いことではなく、むしろ幸せなことなのだ、と。

 違うからこそ、わかり合いたいと思う。自分と違う相手を認めて、愛したいと思う。

 だって、もし初めから全く同じなら、お互いを理解しようとする必要なんてないから。


 君は、俺と違うから。

 君と出会えたことに、こんなにも価値がある。


 ぐりゅるるる。

 またしても、リアンの思考は腹の虫にかき消された。

「腹が減っては、ってね」

 春隣の高空に、左手を掲げる。

 今ならば。この広い世界でさえも、この手に掴める気がして。

 近くの木から林檎を二つもいできて、片方をダッフルコートのポケットに押し込む。

 左手の林檎にがりりとかじりついて、頬を緩めた。

「うん、美味い」

 口に広がる優しい甘みに、込み上げてくるものがあって。

 彼は、人知れず涙を流した。

 


 青年は、今日も空を見上げ続ける。

 いつの日にかまた、白い流星が目の前に降ってくるから。

 そのときまで、あの星の輝きを見失わないように。


 ――君がこの手にくれた温もりを、決して放さないように。

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この手は君に届かない 月弓 太陽 @Sun-Tsukiyumi717

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