心の暗がりをそっと照らしてくれる、お月様のようなあたたかい光りを感じる物語でした。
幻想的で儚げな雰囲気の中心に、ひどく現実的な息苦しさがあります。その苦しさに覚えがある私は、どうか主人公が救われますようにと、祈りをこめて読み進めました。
淡々と綴られる主人公の心の内は、共感できる部分が多くて胸がチリチリするものの、不思議と暗い気分や嫌な気持ちにはなりませんでした。この切なくも穏やかな世界観が、優しくてとても素敵なのです。
私はこれまで“カタルシス”というものをはっきりと感じたことがなかったのですが、この物語を読み終えて、あぁカタルシスとはこのことだったのか……!としみじみ体感することができました。
『人生に疲れた大人のためのおとぎ話』というキャッチコピー、まさにその通りの物語だと思います。お心当たりの方は、ぜひっ!!
心の病気を患った青年。彼は海の近くにある実家に戻ることになった。ある日、浜辺で不思議な瓶を拾ったことから物語が始まる……
良い意味での日本映画を鑑賞するような印象をを受けました。決して派手ではなく、大きなどんでん返しや仕掛けもなく、海辺の街を背景として淡々と語られるのです。でもどこか魅力的な展開なのです。
それは登場する人物たちが、まこちゃんをはじめ、立ち位置をわきまえながらしっかりと役どころを押さえていた、と表現したらご理解いただけるでしょうか。無論小説である以上、作者の並々ならぬ筆力がそう感じさせているのですが。
読んで、良かった。
読了後に素直にそう思いました。
大人向けの童話。まさしくその通りで、この世界にしばし浸ってみるのはいかがでしょう。
吉澤さん、素敵です。
※このレビューは、ネタバレを含みます。
※このレビューは、ネタバレを含みます。
※このレビューは、ネタバレを含みます。
桜も散りかけた、4月後半の季節。
Twitterを眺めると、新生活にキラキラと心を躍らせる、フレッシュな新社会人たちを垣間見ることができます。
・同期の半分が辞めました……
・就職した会社がブラック企業だったよ……
・疲れた涙止まらない会社行きたくない辞めたい辞めたい死にたい
本作は↑のような人にオススメ。
疲れた心に染み渡って、少し温かい気持ちになれます。
本作品の主人公は、冒頭では分かりませんが無職の兄ちゃんです。
学校卒業後に就職したブラック企業で心をやられて挫折、実家に舞い戻ったニート青年です。
心身ともにボロボロの青年は、海岸で『瓶詰めの人魚』を拾います。
それが、本作の冒頭になります。
瓶詰めの人魚を海に逃がした青年は、ニートミーツガール。
謎の美少女と出会い、実家で生活を共にして、不思議で温かな日々が始まります。
実家に戻ってきたということで、主人公は同級生たちと再会します。
かつての仲間はそれぞれの人生を歩んでいて、一方で主人公は人生を歩くのを止めて停止したまま。
主人公は止まった人生を、周囲の人達に助けられながら歩もうとします。
そんな物語の結末を知りたいですか?
謎の美少女の正体が気になりますか?
それなら!
心温まる人生応援ストーリー『瓶の中の人魚』を読みましょう。
本作を読み終えたら、少し前向きな気持ちになれるかもしれません。