瓶の中の人魚

作者 阿瀬みち

79

31人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

童話というのはハッピーエンドが多いですね。でも、この物語はハッピーエンディングなのかとふと考えてしまいます。

それは何を持って幸せと言うのかにもよりますよねぇ。幸せって難しい。だって最初よりも物事がうまくいっているかと問われたらまあそうかも、と思うし、もっと幸せを望むことができたかと問われたら、やっぱりまあそうかも、と思ってしまうから。

そんな局面、生きてきた中でありませんか?
この選択、この生き方、この対応。本当にベストだった?
選んだものはベターなだけじゃないか?

これを隣の芝生は青いって言うんでしょうね。

ハッピーエンドの先があるとしたら、主人公はきっとそんなものを考えて生きているんじゃないかなと思いました。

★★★ Excellent!!!

心の暗がりをそっと照らしてくれる、お月様のようなあたたかい光りを感じる物語でした。

幻想的で儚げな雰囲気の中心に、ひどく現実的な息苦しさがあります。その苦しさに覚えがある私は、どうか主人公が救われますようにと、祈りをこめて読み進めました。

淡々と綴られる主人公の心の内は、共感できる部分が多くて胸がチリチリするものの、不思議と暗い気分や嫌な気持ちにはなりませんでした。この切なくも穏やかな世界観が、優しくてとても素敵なのです。

私はこれまで“カタルシス”というものをはっきりと感じたことがなかったのですが、この物語を読み終えて、あぁカタルシスとはこのことだったのか……!としみじみ体感することができました。

『人生に疲れた大人のためのおとぎ話』というキャッチコピー、まさにその通りの物語だと思います。お心当たりの方は、ぜひっ!!

★★★ Excellent!!!

心の病気を患った青年。彼は海の近くにある実家に戻ることになった。ある日、浜辺で不思議な瓶を拾ったことから物語が始まる……
良い意味での日本映画を鑑賞するような印象をを受けました。決して派手ではなく、大きなどんでん返しや仕掛けもなく、海辺の街を背景として淡々と語られるのです。でもどこか魅力的な展開なのです。
それは登場する人物たちが、まこちゃんをはじめ、立ち位置をわきまえながらしっかりと役どころを押さえていた、と表現したらご理解いただけるでしょうか。無論小説である以上、作者の並々ならぬ筆力がそう感じさせているのですが。
読んで、良かった。
読了後に素直にそう思いました。
大人向けの童話。まさしくその通りで、この世界にしばし浸ってみるのはいかがでしょう。
吉澤さん、素敵です。

★★★ Excellent!!!

※このレビューは、ネタバレを含みます。
※このレビューは、ネタバレを含みます。
※このレビューは、ネタバレを含みます。

 桜も散りかけた、4月後半の季節。
 Twitterを眺めると、新生活にキラキラと心を躍らせる、フレッシュな新社会人たちを垣間見ることができます。

・同期の半分が辞めました……
・就職した会社がブラック企業だったよ……
・疲れた涙止まらない会社行きたくない辞めたい辞めたい死にたい

 本作は↑のような人にオススメ。
 疲れた心に染み渡って、少し温かい気持ちになれます。


 本作品の主人公は、冒頭では分かりませんが無職の兄ちゃんです。
 学校卒業後に就職したブラック企業で心をやられて挫折、実家に舞い戻ったニート青年です。
 心身ともにボロボロの青年は、海岸で『瓶詰めの人魚』を拾います。

 それが、本作の冒頭になります。

 瓶詰めの人魚を海に逃がした青年は、ニートミーツガール。
 謎の美少女と出会い、実家で生活を共にして、不思議で温かな日々が始まります。

 実家に戻ってきたということで、主人公は同級生たちと再会します。
 かつての仲間はそれぞれの人生を歩んでいて、一方で主人公は人生を歩くのを止めて停止したまま。
 主人公は止まった人生を、周囲の人達に助けられながら歩もうとします。

 そんな物語の結末を知りたいですか?
 謎の美少女の正体が気になりますか?

 それなら!
 心温まる人生応援ストーリー『瓶の中の人魚』を読みましょう。
 本作を読み終えたら、少し前向きな気持ちになれるかもしれません。

★★★ Excellent!!!

苦悩しながら生きている日常生活が透明感のある文章で描かれていて、不思議に安らいだ気持ちにしてくれます。
非日常を体現した女性と幼馴染みとの三角関係が、静かに緩やかに変化していく。

アンデルセンの人魚姫は悲劇に終わるけれど、この先どうなっていくのか。待っているのはhappyendか、それともやっぱり悲劇なのか。

★★★ Excellent!!!

 不思議な童話とヒューマンドラマ。行方も分からぬ三角関係。
 重厚なのに優しい。優しいのに切ない。切ないのにこっそりと見え隠れする恐怖感が正気に引き戻す。目が離せません。
 ぜひともご一読をお薦めしたい、深みがあるのに大変読みやすい作品です。

★★★ Excellent!!!

ありえないことだけれど、この世界のどこかにはもしかしたらあるのかもしれないと思える話。

飾らない文章、時々胸を刺す痛みも美しいと思えました。素敵です!

収束もまた、美しかったです。始まりから終わりまで、胸の中心がシュワシュワとさせられるこの感覚の虜でした。

正直ネット小説でここまでのものが読めるとは思っていませんでした。ありがとうございました。

「人生に疲れた大人のためのおとぎ話」キャッチコピーに偽りなし!ですね!

★★★ Excellent!!!

文体や雰囲気がとてもよくて読んでいて心地がいいです。
会社の件のつらい描写もありましたが、次の泣いているシーンで私自身もいっしょに泣けたようにつらいのがふっと消えていきました。

人魚姫は悲しい物語ですが、この彼女はどうなるでしょうか。続きを楽しみにしています。

★★★ Excellent!!!

(完結されたので、レビューを修正しました。)

人魚って、なんてかなしい生き物なのだろうと思う。
海のなかでしか呼吸できない。水のなかでしか自由になれない。
それは人間が空気がなければ生きてはいけないのとおなじことなのだけど。
それでもなぜだろう。「人魚」と聞くと、わたしはかなしくなる。
子どものころに読んだ『人魚姫』のためだろうか。
恋した男のために、人間になった人魚。
慣れない靴は彼女の足を傷つけ、踊ることもできない。
美しい声は奪われて、もう好きなように歌も唄えない。
この世界の「掟」も「言葉」も、なにも知らない。
この地上は、彼女には孤独で窮屈なのだ。まるで瓶のなかに入れられているみたいに。
それでも彼女は自分から硝子のなかに戻ってきた。
なぜか。理由なんて、わかりきっている。

これは『人魚姫』を王子さまの視点から編みなおした物語だ。
あの王子さまにも、苦悩と葛藤と愛があったのかもしれない。
そんなことを考えながら、あるべき結末を読み終えた。