ディズニーアニメで有名な白雪姫が実は原作と違う事を、10年ほど前の実写版ハリウッド映画(お妃役はエイリアンと死闘を演じたシガニーウィーバー)のCMで御存知の方も多いだろう。でも、世間の親が子供に読み聞かせるグリム童話が第7版だと知っていましたか?
作者はグリム童話を調べに調べ尽くしている。単なる蘊蓄物として読んでも面白い。まぁ、そこまで調べたからこそ、童話とリンクしたストーリー展開の妙を読者に愉しませるのだが。平たく言えば、"冷酷"や"辛辣"の一歩手前を行きます。
さて、本作品は大人向けのミステリー小説。
私(not評論家,but普通の人)が思うに、謎解きに軸足を置けばミステリー、謎解きまでのドキドキしたプロセスに軸足を置けばサスペンスだろう。そう言った観点では、サスペンス小説と言うべきか。ネタバレ注意報は発令されないと思うが、終盤に謎は波紋のように別の謎を生みます。正確じゃないなぁ。読者は作品世界の奥行に想像を巡らせ、「この点は、どう展開するの?」みたいな"?"を幾つも抱えるだろう。俗に言う、"ハマった"と言う奴です。
文章の雰囲気は、「十二国記」で有名な小野不由美先生の「死鬼」を思わせる。但し、吸血鬼は登場しません。レビューを童話云々から書き始めましたが、吸血鬼に限らず、狼男も死神も登場しません。それでも、人間の心理に伏する小悪魔が暗躍します。読み進めると分かりますが、あなたの心の奥底にも潜んでいそうな小悪魔。いや、"小"を取って悪魔と言っても差し支えないかも。
登場人物に一般人を添えてはいるが、「死鬼」並みにオドロオドロしい世界観が待ってます。ページをクリックする指が止まらなくなると思いますよ。
白雪姫の異説……というより原典をテーマに、ストーリーを展開させています。
ミステリーとも、サスペンスとも、ホラーとも言い難い。どれも合っているようで違うような、こういう本当に面白い作品はレビューする時逆に困ります。何を言ってもネタバレになってしまうので。
過去の断ち切れない因果が現在にまで侵食し、それぞれがそれぞれの『役』を、『脚本』によって演じさせられます。物語というコーヒーに、甘く白い粉が振り掛けられ……これ以上言えないっ。
間違いなく面白い名作なのですが、面白さを伝えることができない。レビュアー泣かせの、『何かとてつもないもの』を見せ付けられた気分です。
女の子って怖いですね。(搾り出した感想)