第2話 マクロが実行された
「こちらでしばらくお待ちください」
受付でコンペ発表者の控え室に通された。殺風景な会議室だな。あ、でもウォーターサーバーがある。ありがたい。水飲もう。
コンペの順番待ちの間はやることも無い。課長と二人で話をしてもロクなことにはならないからな。かえって緊張が高まるだけだ。
オレは冷たい水を紙コップに
どこに目と耳があるかわからんからな。待ってる間もコンペです。
『ううむ。なんだかな。またコレだな』
さっきからおかしなモノが目について仕方がない。アレだな。コレは進行表だ。台本とも言う。プレゼンの
まあ、いいか。仕方がない。コンペはどうせ順番待ちだ。その間にリハーサル気分で見てみるか。
『本日はお時間をいただきまして誠にありがとうございます。さて今回、
『信頼感を
ははは……切実だね。
ふむ。プレゼンのスライド進行に合わせて述べる予定のセリフが書き込まれているのか。
強調すべきところ、気をひくための
しかもこのジョークが書き込まれているセルには『大いに受ける』ってコメントが付いてるし。何だよこれ。恥ずかしいなぁ。
しかもなんと、最後の締めくくりの言葉には、『大成功!スタンディングオベーション付き』とコメントが! 何だこれ!何だこれ! 恥ずかしすぎる。
進行表を最後まで読んでからふと気がついた。
A1のセルに実行と書かれたマクロボタンが
ふむ……。実行ボタンか。押してみたらどうなるというのかね? コレ? うむ。『ポチッ』
その瞬間、アッと言う間に一瞬で、現実のプレゼンテーションが……実行されて、完了した。
自信に
現在、オレはコンペ用の大会議室で拍手の
スティーブ・ジョブズかっちゅーの!
んで、いったい、なんなのよ……コレ?
「いや
まあこの分野じゃウチは他社とは一線を画してるからサ。取れて当然といえば当然だけどサァ。イヤ、今日の感触ではウチで取れたりするぞコレ。いやまったくいつもハラハラさせてくれちゃってるよ。いやまあアレだホッとしたよ。やれやれ」
『褒めてるんですか? けなしてんすか? どっちなんすか?』とは思うがそんなことは言わない。
こういう時はアレだ。礼を言うんだ。
「やはり課長に
高野課長はこの時、オレ
オレは人生をウィンドウ操作で切り開く apop @apop
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