オレは人生をウィンドウ操作で切り開く

apop

第1話 ウィンドウ画面だ

オレはうんざりしていた。

さっきからもうずっと高野課長の自慢話を聞かされている。何べんも聞いてる話だし。この後はきまってお小言とイヤミに発展するんだ。

ああ、この話、もう終りにしたい。


その時、視界の、というよりは思考のはしにぼんやりと何か……『ワープロソフトのウィンドウのようなもの』が存在しているのを、感じた。

ウィンドウの上部に表示されてる濃い青色の部分はアレか? タイトルバーなのか? 右端にはうっすらとボタンまで見える。というか、そんな感じがする。


『へえ……ウィンドウがる。このボタンを押したら課長の話、終了したりして……』


何とは無しに本当に何とは無しに、その閉じるボタンを押そうと意識してみる。

延々とつまらない話を聞かされて頭がぼうっとしていたからかもしれない。後から考えると、なんで閉じるボタンなんてものを押そうと思ったのか、自分でもわからない。


ところが、である。

その瞬間、高野課長はピタリと話を終えてしまった。本人も不思議そうな顔をしている。


『え? なんだ今の? アンタが不思議そうな顔するなよ。不思議なのはこっちなんだからな?

ええっと? なんだ? 閉じるボタン? なんで閉じるボタン? って閉じるボタンってなんだっけ? アレレ?』

頭の中でハテナマークがぐるぐる回る。全くもって理解不能。



それから……意識してみると、結構いろんな所にウィンドウが存在していた。本当にしっかりと集中して意識しないとその存在は感じられないのだけれど。

目に見えるというのではなく存在を感じる必要がある、つまりは集中力が要求されるのだ。

わけがわからない。


例えばさっき終わったコンペ。

気の張るプレゼンだった。自分はあがり症なのか、本番になるといつも思うように声が出せなくなる。頭のてっぺんから細くて高い変な声が出てしまうんだよ。そう、いつもなら。

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