言わずと知れた、第一回カクヨムWEB小説コンテストで大賞を受賞した作品。
内容は、特撮「戦軍」物を担当することになった女プロデューサーの物語。
さすがに大賞受賞するだけあって、文体は安定していて読みやすく、ドラマ部門で大賞なだけあってシナリオもしっかりしている。また登場するキャラクターもリアリティーがあり、ドラマ制作現場の細かい描写も本物っぽく、作者はそういう職場に実際にいたのだろうなと想像できる。
また、一年を通して制作される戦軍シリーズの、制作の流れや、苦労、細かい裏話が聞けて、興味のある人にも、ない人にも楽しめる作品となっている。
ただ、問題もある。
最大の問題は、途中で終わっていること。五十話ちかく作られる戦軍物の、八話を撮るとかそんなあたりで物語が終了しているのだが、これはまだ始まったばかりの場所。
番組の行方も気になるが、このあとの夏の苦労や、最終回ちかくの小噺なんかもぜひ聞きたいところだった。
あとは細かい問題かもしれないが、面接で主人公がいじわるな質問をされて、答えた言葉がなんなのか? この伏線は回収されていない。
また、表記に関してだが、──は、ふたつつなげて使う物なのだが、この作者は─で、終わらせている。
間違いである。ふたつつなげるのには理由がある。誤読を避けるためだ。
1個で使ったら、それが「罫線」なのか、「ダッシュ」なのか、「長音」なのか、「マイナス」なのか、区別がつかない。
事実ぼくは読んでいて、脚本家の名前を初見で「─能勢」、イチノセと勘違いした。
そのあと出てくる視聴率も「─3・8パーセント」。え、マイナス3・8パーセントなんて低い視聴率あるんだ!と驚いた。
「─」はふたつ続けて使いましょう。
これは小説の内容以前の問題であり、それこそ、オーディションに無精ヒゲでくるようなもの。いまからでも遅くないから直した方がいいとおもう。
ということで、続編があるので、そっちに行ってみよう!
本作は畑違いの部署に配置転換された主人公が、様々な問題に直面しながら、その部署での仕事の面白さ、真髄とは何かを掴み取っていく成長物語です。
主人公の女性は、始めは子供番組の製作に携わるという感じで、実に軽く仕事を見ていましたが、スタッフと関わる内に様々な事を肌で学び、当初侮っていた子供番組という物が、実は中々侮れない物である事を知って考えを改めていきます。そして思わぬ形で訪れたトラブルを前にして、1人のプロフェッショナルとして大きく成長していきます。その姿が実に凛々しく美しい。
キャラクターが濃密かつ、見事に活描されていて、非常に完成度が高い作品です。王道の成長ドラマを読みたい方に本当にお薦めです。
15万字の長編ですが、グイグイと引き込まれ、最後まで読み進めました。
私もサラリーマンなので仕事物語には条件反射的にのめり込む傾向は有りますが、大きな要因は登場人物の強烈な個性だと思います。
特に長門監督さん。
先週の日経新聞に載ったピアニストの中村紘子さんを悼む記事によれば、中村紘子さんの著書の1つに、有名な音楽家には変わり者が多いというクダリが有るそうです。
優秀な人材というのは得てして長門監督のようなクセのある人で、そういう人材を活かす度量の有無は、その組織の中枢の人材次第なのでしょう。読んでいて、それを感じました。
そんな感じでドンドン読み進めていたので、気付かずに14万字をクリアし、Epilogue に到着した時は、アレ?っと、つんのめりました。話の流れから、Last Episode とEpilogue の間がヤマ場だと予測していたので。
読者としては、この間を膨らまして貰いたかったなあ、という意味で星2つです。
既に、この続編season 2をフォローしているので、文字数が溜まってきたら、一挙読みさせていただきます。
最後に、タイトルの「ヒーローは眠らない」も良いですが、もう一つの「ヒーローとは◯◯」の方が私は好きです。