これは、遠いどこかで旅をする人の物語だ。
現代の地球ではなく、別の星か別の世界か、
とにかくどこか遠い場所で、機械はなくて、
魔法もなくて、ただそこに存在する異世界。
かつて地球に住む人々がそうだったように、
その世界に住む人々の多くは旅などしない。
髪や目の色、風習の違う人と出会うことも、
普通に暮らしていれば、滅多にないものだ。
だが、この物語の主人公たちは旅を通じて、
異境の自然に出会い、異郷の人々に出会う。
湿度とぬくもりを感じさせる端正な文体が、
それらの出会いのもたらす情景を描き出す。
Azuriteさんのレビューにもあるとおり、
「いつまでも読んでいたい」作品でした。
朝陽さんの書かれる幻想異郷が好きです。
満たされました(でももっとほしいです)
ゆっくり読ませていただきました。
導入部の独白がとっても雰囲気があります。勝手にスタジオジブリの映画なんかに出てきそうな村のセットで脳内変換しました。おっさん、オバハンが酒かなんか飲んで「ありゃ〜な〜」的な昔語りなんかしながら、グダをまく。前後関係わかんなくなってもOK。セリフの息遣いを楽しみましょう。
本文はピーター・オトゥール主演映画「アラビアのロレンス」のセットにフランク・ハーバート著「砂の惑星」の部族民の村の感じ。ただし暴力シーンと特殊能力要素はゼロで。この物語は静かで透明で切ないのです。
全体を通してでてくるのはヨブという名の多分20代後半から30過ぎぐらいの砂漠の男なんですが、ただひたすらカッコいいです。ただカッコいいとしか言えない自分の貧弱な語彙力が恨めしくなるくらいカッコいい。
無口なくせに、他の男の胸のうちの痛みややり切れなさだってシッカリ共感できちゃうような男に 胸キュンしない女の子がいないハズがない。
そしてどうなるか・・・・・
うううううっなんか違う。本編はそういう下衆な話ではないのです。
静かで透明で切なくて少し苦いお話なのです。
読んでください。