昨日の雨が嘘のよう
@shima09
第1話 白河の関越え
白河の関越えとは、「 全国高等学校野球選手権大会 」そう甲子園において優勝旗が東北地方に来たことが無いことを言う。
高校2年生の春、勇太と真治は、いつも通りの学校からの帰宅途中の電車の中にいた。この二人、特にやりたいことも無く、2年生の春まで部活に入らず、だらだらと夕暮れの電車の中をいつも通り遅く、帰宅するのであった。
「今日も、駄菓子屋で話してばかりいて終わったな」と勇太が、だるそうに真治に声をかけ ている。
勇太の通っている高校から駅までの帰り道には駄菓子や一軒しかないのだ
「いい加減、あの駄菓子屋によって帰るって流れはあきたな」と真治が答える
二人とも毎日の日常に飽きているようだ。
「そういえば、今日も野球部、あの坂ダッシュしてたよ。よくやるよな見てるだけで気持ち悪 くなるよ」と顔をしかめながら勇太が言っている
「毎日登って通うだけで嫌になるのにダッシュか・・・」真治は、嫌そうに勇太を見つめてい る
二人の通う学校には、角度が二十度はある急な二百メートルはある坂道があり、駅から通 うみんなは、その坂を登り、帰りは下り帰らなければいけないのだ。
「そうだ、真治」 まだ嫌そうな顔をしている真治に語りかける勇太
「うちの野球部は、弱いから甲子園にも行ったことないけど、東北の県で甲子園優勝して いるとこってあったけ」
「 ないんじゃない 」少し考え答える真治
「そっか無いのか、だったら俺らが、がんばれば甲子園で優勝までは行かなくても、この県で優勝することぐらいできるんじゃない」と笑顔で勇太が言っている
電車が橋を差しかかかり右側に日本海がきらきらと夕日が反射しその光が電車に差し込む、その差し込んだ夕日が、勇太の顔にあたりますます勇太の笑顔を照らす
なにも、根拠のない一言に真治はいつもの冗談かと思い返事を返した
「 できるんじゃない。 」
勇太と真治の通う海山高等学校は、駅から少し離れた高台にある。
これといって特別なことの無い、県でも偏差値の低い高校だ。海山高校の野球部も偏差値と同じくらい低く、試合があればいつも負けている弱小野球部である。
それらの事を分かっている真治は勇太のいつもの冗談だと思っているのだ。しかし、真治は勇太のそういうところが気に入っている。
「二葉、二葉 降り口は右側です」 車内アナウンスが車内に響く
勇太と真治の降りる駅だ。海山高校へは二葉駅から乗り、大野駅で降りる。
二葉駅から大野駅までは、三十分ほどだ。この二葉駅は、勇太と真治の地元である。
小中高とずっと一緒の腐れ縁である。
夕日は、もう沈みかけているころ、二人は二葉駅から降り自宅へと帰宅する。
勇太は、小学校の時以来、野球とは無縁の生活をしていたが、何気なく言った一言がいつまでも頭の中から離れないでいた。
「 真治と一緒ならできるかも知れないな 」心の中でそうつぶやいている勇太であった。
帰宅する頃には、外はもう真っ暗である。勇太は部屋に入りすぐにベットに横になり何度も 心の中でつぶやいているのであった。
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