Social Figures

2or3

第0話

いつもと変わらない空。

いや、微妙には変わってるんだろうけど、そんな違いは僕にわからない。

何気なく歩いている道も、僕達の知らないところで日々その姿を変えている。。。らしい。


草木の呼吸とか、微風のメロディとか正直全然分からない。

子供の頃からそうなのだ。

両親や友達の話していることには理解できないことが沢山あったんだ。

小さい頃は意味がわからなくてもニコニコしていれば、両親も心配することはなかったし、友達とも仲良く過ごすことができたから、ほとんど問題がなかったけど。


大体、感覚とか感情なんていう曖昧なものを理解しろって方が無茶じゃないかな?

だって、僕の感覚や感情は僕のものでしかないし、他の人のそれは他の人のそれでしかないのだから、理解するためのきっかけがないじゃないか。

自分と他の人の感覚とか感情が同じものから出来ているってのなら、べつだけど、、、

少なくとも僕にはそうは思えない。

だって、もしもそれらが同じものから出来てるのなら、もっと規則性があってもいいはずだよ。

それが僕には全然わからないんだ。


まあ、こんな言葉を並べたところで、誰も理解してくれないし、同情もしてくれない。

当たり前だと思う。

だって、僕にだって理解できないし。。。


たった一つの出来事だった。

その出来事をきっかけに僕は周りの人々から敬遠されるようになっていた。


しようと思えばフォローすることもできたのだろうけど、当時はそういう状況がおかしいとは思わなかったし、何よりも両親も僕を気味悪がっていた影響が大きかった。

「しようと思えば」という事が最も難しかったんだ。


父親と母親の話もしておいたほうが良いかもしれない。

少し本題からは外れてしまうが、許してくれるだろうか?


どこにでも普通にいる両親、ということになるのだろう。

「普通」のがもっと適している。

両親は僕を「普通」に育てていた。

それから「普通」に僕の正体に気づいて。

「普通」に僕のことを理解することができず。

僕のことを「普通」に捨てたのだった。

「普通」ということが最も残酷だったのだ。


ひどい両親だ!と思う方もいるかもしれない。

でも、それは「普通」の子供に対して、僕の両親がしたことに対してなのだとしたら、成り立つのかもしれないが、残念ながら僕は「普通」の子供ではなかった。

僕の両親は僕のことを「普通」に見捨てるしかなかった。

だって、どんな親だって僕を見捨てる以外に方法は無いのだから。


つまり僕は「異常」なのだ。


如何にして「異常」となったのか。

如何にして「異常」と認識されるようになったのか。


そうそう、それについての話をするつもりだったんだ。


僕は一人で席に座っていた。

周りのみんなは立ち上がって友達と話をしていたり、床に座っていたりと、ちゃんと椅子に座っているのは僕だけだった。


この頃から既に僕は他のみんなから浮いていた。

ただそれはみんなが僕に興味が無いだけのことで、疎まれているとか、嫌われているとかそうことではなかった。


ドサッっと、その物の大きさからは意外なほど重々しい音が教室に響き渡った。

まず、何人かがその音に気がついて振り向く。

その内のほとんどは直ぐに、元通り友だちの輪の方に意識を翻したが、その物体の異様さに気づいた残りの生徒たちがざわつき始める。


その時点で僕の頭がもう少し働いていれば良かったんだけど、朝道端から運んできた猫の死体の事をすっかりと忘れてしまっていた。


その物体の正体に気づき悲鳴を挙げる女の子。

教室の外へ逃げ出る生徒たち。

先生を呼びに職員室へ走る生徒。


恐怖による騒乱の中、僕はもうどうしようもないなと思って、心の中でため息を一つついた。


だってしょうがないじゃない?

そう言って僕は笑顔で一人教室を出ていった。

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