異世界の女神リアに助けを求められた現代の高校生・桐山秋人。戦いが苦手な彼が提案したのは、異世界をVRMMOに偽装して現実のゲーマーたちを勇者として送り込むことだった。あの手この手でゲーマーの心を掴んで異世界を救わせる秋人の悪知恵が痛快な異世界ファンタジー。
ゲーマーの心理を理解した秋人の運営手腕が見事です。異世界をゲームと信じているゲーマーは、リアルなグラフィックにたちまち魅了されてしまう。凝ったゲームシステムやイベント報酬、美少女のマスコットキャラなど、秋人の巧妙な仕掛けの数々に思わず遊んでみたくなります。
恐ろしい魔王軍もゲーマーにとっては美味しい獲物。道化のような奇妙な仮装をしているくせに大火力の魔法やスキルを連発するえげつない戦い方で、何度死んでも復活してゾンビアタックを繰り返す。報酬次第で裏切り、奪い尽くしたらまた裏切る。悪魔よりも欲深く、狡猾なゲーマーの腹黒さに笑いを堪えられません。理解不能な勇者たちの行動に女神も異世界人も困惑、こんな狂った集団を相手せねばならない魔王軍が可哀想に思えてきます。
普段はライバルとして競い合いつつも、ときにはサーバー全体で一致団結する展開が熱いんですよ。辛い思いをしながらではなく、楽しみながら異世界を救う、こんな勇者がいたっていい。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)