嘘を暴くゲームをしよう

飛竜

嘘を暴くゲームをしよう

僕は生きている。生きていると誰かと話す。そうすると、隠したいこととか避けて欲しいことがある時に、嘘をついてしまう。ヒトってそういうものだろ?

でもこのゲームでは、僕はなるべく真実を述べる。君はこの話の中で、僕がついた嘘を当てくれればいいんだ。ちなみにもう始まってるよ。僕が「終了」って言ったら、どれが嘘だったかを答えてくれ。回答権は1回のみ。嘘を全部暴かれたら僕の負け、暴けなかったら君の負けだよ。ルールはわかったね?じゃあ早速話を始めようか。


僕は東京に住んでいる。前はもっと田舎の方に住んでいたんだけど、大学とか就職とかそういうので上京したんだ。やっぱり都会はすごいね。まず人が多い。昔からだったけど、今も溢れてる。僕なんて細菌みたいなものだよ、ほんとに。東京という体の中で、僕という細菌なんて誰も目に止めちゃくれないのさ。別に不満だなんて言わない。むしろ、誰も僕を見ていないと思うと自由でいいよ。細かいことなんてどうでも良くなっちゃうんだ。それから、建物が高い。のっぽですらっとしていて、いつも僕ら人間を見下している。常に太陽に照らされて光っているくせに、僕には少しの光しか分けてくれないんだ。おかげで僕らは影のように暮らしているよ。そういえば、僕の上京してからのことを話していなかったね。僕は立派に名の知れた大学を出て、大手企業に就職した。自慢じゃないけど、僕の学歴はとてもいいんだ。でも、僕は会社をすぐやめちゃった。会社の皆が僕を妬んだからだ。僕は努力してその地位に就いたのに、大して努力していない彼らは、僕の地位だけを欲しがった。もっと違うものを欲しがれば良かったのにね。例えば、僕の努力家なところとか。それで僕は嫌になっちゃったんだよ。嫌がらせとかが原因じゃなくて、ただそういうくだらない世の中が嫌になっちゃったんだよ。辞めた日に僕はたくさんお酒を飲んだ。全財産を使い切るんじゃないかってくらいのお酒を、ビルの最上階のオープンテラスバーで。そのあと意識は途切れちゃってなんにも覚えてないんだけど、下から吹き付ける風がやけに冷たくて強かったなぁ。夏だったのにね。そうそう、その後頭がすごく痛い中で、大きな地震があったっていうニュースが聞こえたよ。僕は酔っていたから揺れていたのか覚えていないな。ふわふわした、でも不思議とすっきりした気持ちで、すごく楽だったなぁ。上京した頃みたいに「自由だ!」って感じでね。


少し長くなっちゃったね。終了しよう。どう?分かった?嘘つきな僕だけど、頑張って二つの嘘だけに留めたよ。最初の嘘はずるいって言われるかもしれないけど、ちゃんと考えれば分かるはずなんだ。東京に住んでいるってところが違うって?いや、僕は今も東京にいるよ。ルール説明で嘘をつくような僕じゃないって。しょうがないな。特別に二つとも教えてあげるよ。













答えはね、「僕が生きている」ことと、「東京は今も人が多い」ってこと。

僕はビルから落ちて死んだし、東京は首都直下型地震で壊滅的状況。結局は、みんな僕と同じように幽霊になって、ビルの見下ろす東京をふらふらしているのさ。ふふふ。分からなかったでしょ?だって僕がいるのは、君のいる世界より少し先の未来だからね。そんなのわかるわけないって?何とでも言えばいいさ。僕の勝ちに変わりは無いからね。譲るつもりはないよ!

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