バケツに六月を詰め込んで

小学生くらいの頃、確かに釣りをしたことはあるはずなのですが、もうほとんど記憶に残っていないので、小説を読む前に他の方が『釣りの話』とレビューしているのを見た時にうーむ、感情移入出来るんだろうか、やめとこうかなぁ……と思いました。

やめなくてよかった!!

まず女の子が出てくる前の描写で、自転車の走る道やら草っぱらやら空気のおいしさやら、どんどん世界が広がっていくのを感じました。小説にありがちな真っ白な世界に登場人物だけが浮かんでいるような読み味ではなく、世界がちゃんとに、そこにあるんです。素晴らしい力量!

そして女の子がかわいい。これまた、女の子はそこにいるし、呼吸して、汗かいて、魚を釣っている。「あほ」という口癖と異常な魚好きで他にはいない、その子だけがここにいる。たまりません。

最後の別れのところでは、実際にそんなことあったはずないんですが、何か懐かしい心の動きのようなものを感じてしまい、自分に戸惑ってしまいました。うーん、なんだったのだろう、あのムズムズ感は……。

とにかく素晴らしい短編小説!
自分ももっと励まねばいけないなと思いました。
作者の次作にも期待!

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