研ぎ澄まされた情景描写と余情の美しさ

この小説を読んでまず感じたのは、五感を最大限に研ぎ澄まして、景色、音、体の感覚を存分に描いていることだ。読み進めていくにつれて、その場の情景が思い起こされ、作品の世界に引き込まれていく。

物語は二人の少年と少女の、友情とも恋愛ともつかない淡い交情によって進んでいく。平凡な少年時代の思い出だが、素直で等身大の若者の姿が描かれており、微笑ましい。そんな二人の結末も余情に満ちており美しい。

著者は釣りなども好む趣味人でもあり、その辺の蘊蓄も読んでいて面白い。

まだまだ若く、才能と可能性に溢れた著者の今後の活躍にも期待したい。

このレビューの作品

川面、ゆらゆら。