【短編 】ずっといっしょ

@mobukenn

第1話


わたし、頑張ったよ。

レッスン嫌いも無くしたし、他のスタッフさんにも挨拶出来る様になったよ。


最初は他人に笑顔で接するなんてキモチワルイ事だったけど、今なら全然へーきだよ。


キモチワルイのは変わらないけど、貴方が望んでいる事だって…私にしてくれているって考えると、むしろキモチイ気がするの。


……うん違うね。気がするんじゃなくて本当にそうなの!


前は辛かった汗臭いレッスンも触りたくなもないファンって奴らも、貴方がわたしに与えているモノだって気付いたらぜーんぶキモチイイに変わるの!凄いよね!まるで魔法みたい!!



……なんでそんな事を言うのかって?


本当に貴方は鈍いのね。

でも好き。

そうやってわざとらしく恍けるのだって愛しく感じちゃう。

そう、愛してる。ぞっこんloveなの。

だから告白するね。



私は、貴方に縛られたいの。


貴方の声に、仕草に、感情に、想いのままに。

翻弄されて、苛められて、罵倒されて壊されて。

ゴミクズみたいになったら最期に貴方の手で捨てられたいの。

貴方から最期を貰いたいの。




でも、貴方を捕まえていたい。


わたししか知らない場所に監禁して、身じろぎ1つとれないように拘束して。わたしが食べる料理を食べて、わたしが話す言葉だけを聞いて、わたしだけを見つめて 、わたしだけに喉を震わせて欲しい。



そして、


わたしで一杯になったまま死んで欲しい。



矛盾してるって?

してないよ。

だって貴方はもうわたしの心をズタズタにして壊しちゃったんだもん。

だから今度はわたしの番でしょ?



なにを言っているか分からないって?


ふーん……。


わからないんだ。本当にわからないの?




ねぇ。


アイツとの1夜は楽しかった?


楽しかったよね……。

気持ちよかったよねぇ……!


アイツとホテルに入ってアイツと同じ部屋で、アイツと同じ布団で寝たんだってね!!


しかも、わざわざアイツの担当を辞めないって耳元で囁いたんだってね!



知らないと思ってた?

自分達だけの秘密だとでも思ってた?


残念でした!

ぜーんぶアイツが話してくれました!


一週間前にさ、アイツ顔真っ赤にして、貴方が自分の担当を辞めないって事をわざわざわたしに報告しにてきてくれたの。


でねでね。すっごい幸せそう顔で

「良かったァ……」


って言いやがったの。



その時のわたしの気持ち わかる?



今まで貴方に導かれて、貴方に為にステージにあがって貴方の為に喉を震わせて貴方の為に体を使ったの。

全部貴方、貴方、貴方の為に!それなのに!



……アイツは、貴方にわたしを捨てさせた。



さっき言ったよね。貴方にならゴミになるまで使い潰されて捨てられてもかまわないって。


でもコレは違うよね?


アイツが貴方に捨てさせたんだ……!

貴方の意思じゃない。

アイツが自分の為に捨てさせたのよ!


わたし、こうも言ったよね。わたしだけを見て欲しいって。


でも、貴方が見ているのはアイツ!

後から図々しく入り込んだアイツッ!


許せるはずないじゃない。

許せる訳もないじゃない。



ねぇ。


なんで謝っているの?

わたし、許さないって言ったよね?

許せないって言ったよね?



大丈夫。罰なんて無いわ。

罰を与えたら許してしまう事になっちゃうからね。


じゃぁどうすればいいかって?

簡単よ。罪を無かった事にすればいいんだわ。


アイツの担当を……関係を今後一切持たなければいいの。

アイツとの出会いを無かった事にすればいいの。

ね、簡単でしょ?出来るでしょ?いえ、やりなさい。やって頂戴。


やれ。


何で泣いているの?何を悲しんでいるの?


あのね。


もう泣いても遅いの。

もう選択肢なんて無いの。

もう後戻りなんて出来ないの。


だから……さ。

ぜーんぶ諦めよう。


煌めくステージも

熱狂的なファンも

輝く筈だった未来も


わたしには、もう要らないから。


代わりに貴方を頂戴。


頭から爪先まで、内蔵血液脳頭蓋、記憶感情魂に至る全ての貴方を、わたしに下さい。


そうすれば幸せにしてあげる。


そうすれば楽にしてあげる。


そして、



2人で深い深い愉楽の海へと堕ちていきましょう。




さぁ……わたしに誓って。


私とあなたが、その命尽きようとも、愛という下心を捧げると誓いなさい。


そう、それで良いの。



これで私たちは永久にいっしょだね!

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